第22話 光と"騎士"
トントントンッ
ちょうどその時、部屋のドアを優しくノックする音が聞こえた。
「は~い」と私が返事をすると、優しいノックとは反対に、扉は勢いよく乱暴に開いた。
「…リアっ!!」
「パパ、ママ…っ!」
そこに立っていたのは、息を切らしたパパだった。
パパの髪の毛はすごく乱れていたし、服装も今帰ってきたばかりって感じだった。パパがそんなに取り乱している姿を見るのは初めてで、出張先から急いで帰ってきてそのままここに来たんだろうなってことが、名探偵でもない私にもわかった。
「リア…っ。」
その乱れた状態のまま、パパは半泣きになりながら私に勢いよく抱き着いた。ママは力なくその場で座り込んで、声を上げて泣き出してしまった。
「ごめんね、二人とも。」
大人になったっていうのに、私は大好きな二人に昔と変わらず心配をかけてしまっている。しかも今回は、ママまで巻き込んでしまった。
「ママ、怖かったでしょ。ごめんね。」
私の言葉を聞いて、ママはゆっくりと首を横に振った。そしてゆっくりと立ち上がって、私のベッドにそっと座った。
「あなたが無事なら…それでいい。」
「ごめんね。」
それでも謝らずにはいられなくて、もう一度言った。するとママは私の髪をゆっくり撫でて、「謝らないで」と言った。
「リアのせいじゃない。絶対に違う。だからそんな…悲しい顔、しないで。」
ママの言葉を聞いていたパパも、私の頬に自分の手を添えた。私はパパの手を自分の手で包み込んで「ありがとう」と言った。仕事から帰ってきたばかりのパパは、少し汗臭かった。その懐かしい匂いすら今の私には心地よくて、もう一度パパにギュっと抱き着いた。
「ほらみんな。ママはもう少し休むから、あっちでじぃじとばぁばと遊ぼうか。」
「え~~?」
「ままがいい!」
しばらく私を抱きしめてくれた後、パパは少し悲しい顔をしながら笑って言った。カイもケンも駄々をこねたけど、パパは無理やり二人を抱き上げた。私はここにいてもいいよと言おうとしたけど、言葉に出す前にパパが私に向かって首を横に振った。
「ワッフルたくさん買ってきたぞ~!」
「食べる~!」
「食べる~!」
「にぃにっ、ルナもっ。」
パパとママはうまく子供たちを連れ出してくれた。
私は一気に静かになった部屋に一人取り残されたみたいな気持ちになって、「はぁ」と一つため息をついた。
「らしくねぇぞ。」
するとずっとそこに立っていたアルが言った。そのセリフはすごく、アルらしいセリフだった。
「だよね。」
私はそう言って、ゆっくりと体を倒そうとした。すると体のあちこちに激痛が走って、思わず顔をゆがめた。
それを見たアルは、私を支えてゆっくりと寝かせてくれた。やっぱり弱気になっている私は、「ありがとう」と小さな声で言った。
「アル?」
ベッドの横に座り直したアルを呼んでみた。するとアルはこちらを覗き込んで、「ん?」と言った。
「私は本当に、誰かのためになってきたのかな。」
私が行動を起こしたせいで、大切な家族に怖い想いをさせてしまった。これは本当に、誰かのためだって言えるのか。
今までたくさんの人が、「ありがとう」を言ってくれた。そのせいでもしかして調子に乗っていたのかもしれない。やっぱり弱気な気持ちが消えなくて、誰かに話したくなった。アルに弱音を吐くのなんて、初めてのことだった。
「お前は、誰が何と言おうと光だ。」
するとアルは私とは反対に、とても強い口調で言った。驚いてアルの方をみると、彼は口調と同じ、強い目をしていた。
「
この世界でも、騎士は時に"ナイト"と呼ばれることがある。
アルのくせにちょっと上手いこと言うなと、失礼なことを考えた。
「光がなきゃ、俺たち騎士に存在価値はなくなる。俺たちだけじゃない。エバンだってそうだ。」
アルはそう言って、椅子をそっと立ち上がった。そして私にかかっている布団を、もう一度キレイにかけなおした。
「寝ろ。そんな暗い言葉、お前には似合わない。」
言葉は乱暴だったけど、やっぱり私にはそれが心配している言葉に聞こえた。今回は本当に、アルがいなければもっと大変なことになっていた。
「ありがとう。」
何度目になるか分からない感謝をアルに伝えた。アルはやっぱりぶっきらぼうな顔をして、「わかったから」と言った。
気力の奪われた体は、まるで借り物みたいにうまく動かなかった。私はアルの言う通りもう一度目を閉じて、ゆっくり休むことにした。
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