第13話 これが本物の敵襲


私と目が合ったアルは、こちらに向かって「シーッ」というサインを出した。

私はアルの方をなるべく見ないようにしながら、男の方に近づいていくふりをした。



「さあ、大人しく来るんだ。」

「ええ。」



なるべくゆっくりと、足を前に進めた。

アルの姿が見えただけで私の腰は安心感で抜けそうになっていたけど、それでもなんとか、男の方に進んだ。



「へへへっ。」



男は気持ち悪く笑って、私の手を取ろうとした。

アルはもう男の真後ろのところまできて、持っていた棒のようなものを、大きく振りかぶって降ろそうとした。



「バレてんだよっ!!」



するとその時、男がいきなり振り返ってアルの棒を自分の木の棒で止めた。私は思わず「きゃっ」と声を上げてしまって、その声に反応したカイとケンが「まま!」と言った。



「大丈夫、大丈夫だから、早く…っ。」



部屋の中に入って鍵を閉めて!

私も二人の方に走っていきたかったのに、足がすくんで全く動かなかった。目の前で戦っているアルと男の人の光景が非現実的すぎて、まるで夢を見ているかのような気持ちになった。




「リア、逃げろ…っ!」



アルは戦いながら、私に言った。

確かにここに私がいない方が、アルは思いっきり戦える。そう思った私は動かない足を思いっきりたたいて、カイとケンの方へと体を向けた。




「まま…っ。」

「ままぁ…っ。」

「カイっ、ケンっ…!」



振り返った私の目に入ってきたのは、ドアの前に立っている二人の後ろにもう一人マントフードの男が立っている光景だった。その男は二人の首根っこを掴んだまま、ニヤリと笑った。



「大人しくしろ。そこの騎士もだ。」



二人は泣きじゃくりながら、何度も私の名前を呼んだ。家に侵入してきた人が一人じゃないと、なぜ思わなかったんだろう。私はもう混乱した頭を整理しようとすることもなく、そのマント男に「お願いっ」と叫んだ。



「お願い…っ、何でもする!何でもするから、その子たちを…っ。」

「へぇ。」


男は二人の腕を持って、引きずるみたいにしてこちらに歩み寄ってきた。可愛そうで見ていられなくて、怖いなんて感情も忘れて、その男の方へと近寄った。



「リア…っ!!!」



後ろの方ではアルが私を呼んでいた。

でもそんな声はもう、雑音くらいにしか耳に入らなかった。



「なんでもする、ねぇ。」



男はそう言ってしゃがんで、子どもたちと肩を組むみたいにな体制を取った。



「俺がその気になるようにお願いしろ。連れてってくださいって、お前がお願いするんだ。」



男はフードから片目を出して、またにやりと笑った。その笑顔で背筋が凍る感覚がしたけど、私はここで立ち止まるわけにはいかなかった。



「お願い、します…。」



にやりと笑う男の目をしっかりと見て言った。

背後の方では「ぎゃあっ」という男の悲鳴が聞こえて、何となくアルが勝ったんだろうなっていう事が音で分かった。



「私を一緒に…。」

「リア…っ!」



予想通りそいつに勝ったらしいアルは、大声で私を呼んだ。きっとそのままこちらへ近づいて来ようとしてくたんだろうけど、男がアルに向かって「止まれ!」と怖い声で言った。



「アル、お願い。やめて。」



子どもたちに何をされるか分からなかった。

震えながら泣いている二人を、早く解放してあげたかった。私はアルのことも見ないで男の方を見直した。



「お願いです。私を連れて行ってください。」

「"お願いします"って言われて素直に聞けるほど、俺も優しくないんだよなぁ。」



男はにやりと笑って、私に手招きをした。私はゆっくりと一歩ずつ、男の方へと近づいて行った。



「なんでもするって、言ったよな。」

「ええ。」



近づいてきた私に、男はさらにニヤリとした顔で笑った。そして立ち上がって、子どもたちの服の首の部分を掴んだ。



「脱げ。脱いでそのままお願いしろ。」



男は気持ち悪い笑顔のまま言った。

いつものドレスなら自分で脱げないって言い訳できたんだけど、今はパジャマを着ているからそんな言い訳は通用しない。


私は胸のところにあるリボンにゆっくりと手をかけた。



「リア、やめろ。」

「いいのかなぁ?」



アルが怖い声を出したのに反応して、男はにやりと笑って言った。私はアルの忠告も無視して、リボンを全て丁寧にほどいた。


この世界にもブラジャーみたいな下着がある。あんな風に便利に着脱できるスタイルではないけど、リボンを外した私のパジャマからは、ブラジャーと谷間があらわになっていた。



「脱ぐから。先に子供たちをこちらに渡して。」



半分脱いだみたいな状態で、男に言った。

すると男は「こっちにこい」と言って、私にもっと近づくよう促した。



「ままぁ…。」

「大丈夫だからね。」



不安がっている二人を出来るだけ安心させるために、笑顔で言った。それでも二人が安心できるはずがなくて、こんな状況にさせてしまったことが、本当にかわいそうで我慢できなかった。



「それじゃあ。」



手が届く距離に来た時、男は子供たちを突き飛ばすと同時に、私の服を思いっきり引っ張った。脱げかけていた私の服は思いっきり破れて、ついに私はパンツとブラジャーだけのようなみじめな姿にされてしまった。




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