第11話 何事…?!?
ママには一緒に寝たいからって意味の分からない理由を付けて、部屋にきてもらった。夜になってみんなすっかり寝静まったけど、私はさっきのアルの怖い顔が気になって、眠れそうになかった。
「なんなんだよ…。」
急に怖い顔をして玄関のドアも閉めて一緒に寝ろなんて、どうしたんだろう。
それにアルはいつだってぶっきらぼうだけど、あんなに怖い顔を私に向けたことはなかった。
「まるで何か…。」
まるで何か、危険が迫っているようだと思った。
でもここは私が生まれ育ったリオレッドで、私の知る限り、この国はとても平和で治安もいいはずだ。
「もう…っ。」
あんな風に言うなら理由も教えてくれないとモヤモヤするじゃん。
目をつぶって寝ようとしてみてもなかなか寝れなくて、ベッドから体を起こしてみた。ベッドの上ではママもルナもすやすやと眠っていて、カイもケンも自分のベッドでぐっすり寝ていた。
ゴロゴロしていてもどうせ寝られない。
そう思った私はベッドから静かに立ち上がって、カイとケンのベッドの方へ近づいた。
「双子だな~。」
顔も性格も全然違うのに、寝方は全く同じだった。
この子たちが生まれてから何度だってこの光景を見てきたはずだけど、何度見たって飽きないくらい可愛くて愛おしい。
「ん…っ。」
するとその時、二人がほぼ同時に寝返りを打った。
寝返りを打っても同じような格好になったのが面白くて、私はみんなに聞こえないように声を殺して笑った。
もし私がリオレッドで結婚していたら、こんな光景が毎日続いたんだろうか。
テムライムに行かなければこの子たちにも会えなかったわけだし、エバンさんと結婚してよかったって心から思っている。でもその分、パパやママはきっと寂しい想いをしているはずだ。
「ごめんね。」
いつだっていう事を聞かないし、一人娘のくせによその国へ嫁に行ってしまった。それに累計で言ったらママより長く生きてるわけだから、赤ちゃんの頃からずっとかわいげのない娘だったとおもう。
私みたいな転生者は二人が求める可愛くて素直な娘にはなれていないんだろうなって思ったら、少し悲しくなった。
「これも…。」
こんな風に考えてしまうのも、全部アルのせいだ。そもそもアルがあんな怖い顔で忠告なんてしてこなきゃ、今頃ぐっすり寝てたはずなのに。てか、なんだったんだ、本当にあれは。いつもと変わらない穏やかな夜じゃん。
窓からはまぶしいほどの月明りが差し込んでいて、暗いはずの部屋はほんのり明るかった。
私は何度もこの窓から月を眺めて、そして考え事をした。思い返せばエバンさんと一度お別れした時だって、この窓を見て考え事を…。
コツンッ
するとその時、その窓に石がぶつかるのが見えた。
それはまるであの時、エバンさんが私を呼んだ時のようだった。
「なんだ、もしかして…。」
もしかしてエバンさんが、早めに私たちを迎えに来たのかもしれない。
それにしたって早すぎる気がするけど、会いたくて早く着ちゃったのかな。
え、まさかだけど、アルは嫉妬してんの?
それであの怖い顔?
嘘でしょ?あいつアラサーのくせにみっともないな。
いや、でもとっくにアラサーなんて乗り越えてる私も嫉妬したことがあるわけだから、人のことなんて言えないか…。
あれこれ考えながら、早く来てくれたんであろうエバンさんを出迎えるために玄関へと向かった。すると玄関の外が少し騒がしい気がして、エバンさんは一人で帰ってきたわけじゃないのかもしれないって思った。
「だったら先に…。」
だったら先に言ってくれないと、その人たちが寝る場所なんてないかもしれない。
状況を把握したらママを起こしてベッドを用意してもらわなきゃと思って玄関の方に近づいたその時。
玄関の扉に「ドンッ」と、何か大きいものがぶつかった音がした。
「え…?」
その音と同時に、誰かのうめき声が聞こえた気がした。
エバンさんかもって胸を躍らせていたはずの私の足は、扉の少し前で止まってしまった。
「何事?」
私はようやくそこで、もしかして何かただならぬ事が起こっているのかもしれないと気が付き始めた。
パリーーンッ
そしてその時、2階の方で窓が割れる音がした。
私はその音に反応して、なりふり構わず自分の部屋の方へと走って向かった。
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