第3話 実家特有のほっこり感ってあるよね
「リア様。お待ちしておりました。」
「メイサ!」
久しぶりの家に帰ると、メイサがにっこり笑って待っていてくれた。
「それって…。」
そしてそんなメイサが着ていたのは、どう見てもディミトロフ家モデルのドレスだった。私が続きを言う前に、メイサは「そうです」と言ってまた笑ってくれた。
「お買い上げありがとうございます。」
「ふふ、こちらこそありがとうございます。すごく快適です。」
自分がデザインしたわけでもないのに、そう言ってもらえると本当に嬉しくなる。私はメイサと目を合わせてお互い笑い合って、私の後ろに隠れているカイとケンをメイサの前に連れてきた。
「初めまして。カイト様、ケント様。」
「はじめましてっ!ケント・ディミトロフですっ!」
「カ、カイト…ディミトロフ、です。」
名は本当に体を表してしまったようで、ケントはとても活発に、そしてカイトは穏やかで少し臆病な子に育っている。初めましての挨拶でも差が出ていることが少しおもしろく感じながら、3人の初対面を暖かく見守った。
「メイサです。よろしくお願いします。」
「ほら、ルナも。」
「やぁだ…っ、ままぁ。」
ルナはカイの上を行く臆病さで、メイサに目を合わせる事もなく私に抱き着いた。メイサはそんなルナを見ながら「大丈夫ですよ」とにこやかに言って、私たちを部屋へと通してくれた。
「久しぶりだ~~~!」
久しぶりに入っても、部屋の中からは自分のにおいがした。
悪趣味すぎるほど可愛らしい天井に、壁紙。そして可愛らしいクローゼットと、お姫様みたいなベッド。
パパとママは私の部屋を、なにもかも出て行った時と同じように残していてくれていた。リオレッドに着いてパパとママに会った時も「帰ってきた」という感じがしたけど、部屋に入るとますますホッとする感覚がした。
「本当に。懐かしいよ。」
エバンさんも本当に懐かしそうな顔をして、部屋の中を見渡した。今日から私たち家族は、しばらくこの部屋で寝泊まりすることになる。
こんな大きな男の人がこんなに可愛らしいベッドで寝るなんて想像したら、似合わな過ぎて少し笑いそうになってしまった。
「ここに来るのはあの日以来だ。」
私がそんなことを考えているなんて知るはずもなく、エバンさんはにっこり笑ってそう言った。
あの日って言うと、エバンさんが私にプロポーズしてくれた日のことだ。
あの日のことはまるで昨日のことのように鮮明に思い出せるのに、同時にすごく懐かしくも感じた。あの日フラッと外に出てみたおかげで今があると思ったら、自分を本当に褒めてあげたい気持ちになった。
「わぁい!僕のベッド!」
「僕のもぉ!」
じぃじが私のために用意してくれたベッドは一人で寝る割に大きかったから、エバンさんとルナと3人で寝るには充分だと思う。でもさすがに5人では寝られないからと、パパとママが二人用のベッドを用意してくれていた。
そのベッドはどう考えても、二人の体には大きすぎた。でもカイとケンにはそれが嬉しかったのか、二人とも大げさに喜んだ後、思いっきりベッドに飛び込んだ。
「リアにそっくりだね。」
ベッドにダイブする二人を見て、エバンさんが言った。恥ずかしいけど否定も出来ない私は、「やめてよ」とせめてもの抵抗をした。
「エバン君、リア。とりあえずご飯にしようか。」
「じぃじ~~~!僕お腹すいた!」
「僕も~!!」
「よぉしっ!行くか!」
私たちの前に返事をしてくれた二人を、パパは軽々と抱き上げた。
パパの年齢はもう還暦近くなっているはずだ。それでもまだ筋肉がムキムキなのは、体を鍛えているっていうより、今でも現場の仕事をバリバリこなしているからなんだと思う。無理はしてほしくないけど、いつまでも元気でいてくれることは嬉しいなと、去っていく3人の姿を見て思った。
「リア~!早くおいで~!」
「はぁい!」
そのまま部屋でぐずぐずしていると、下から大きな声でママに呼ばれた。
こうやってママに呼ばれるのもすごく久しぶりだ。テムライムに行くまでは何度だってその声を聞いて聞き飽きていたくらいのはずなのに、久しぶりに聞くとそれだけでなんだか嬉しくなってしまう。
「いこっか。」
「うんっ。」
今回の帰省で、私は何度こんな気持ちになれるんだろう。
帰ってきて数分しかたっていないのにすでに心が満タンに満たされていく感覚を覚えながら、エバンさんとルナと食堂の方へ向かった。
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