第2話 大好きな地、大好きな人たち


「見えた!」

「見えた!」



それから約2日後。

まだ遠い遠い先にリオレッドの姿がやっと見え始めた。到着をまだかまだかと待ちわびていたカイとケンは、姿が見えただけで興奮して甲板を走り回った。



「ままぁ。」

「ルナ。もうすぐだよ。」



まだ状況をよく分かっていないルナは、眠そうな目で私の胸に頭をくっつけた。私はそんなルナをギュっと改めて抱きしめて、カイとケンに負けないくらい到着を待ち遠しく思った。






「お嬢様、おかえりなさいませ!」

「お待ちしておりました!」



港につくやいなや、パパの会社の人たちが船に乗ってきて、私たちの荷物を運びに来てくれた。

"お嬢様"なんて呼ばれるのが久しぶりで少し恥ずかしくなりながらも、暖かく迎えてくれたことが嬉しくなって「ただいま」とみんなに何度も言った。



「まま!降りていい?」

「うん。いいけど気を付けてね!おじさんたちのいう事聞くんだよ!」

「はぁい!」

「はぁい!」



カイとケンは待ちきれないって様子で、パパの会社の人たちに案内されるがまま船を降り始めた。私もここまで連れてきてくれたテムライムの人たちに一通りお礼を言った後、5年ぶりとなる故郷への地へと、一歩足を踏み入れた。



「リア。」



船を降りると、目の前には会いたくて会いたくてたまらなかった人たちが立っていた。私は顔を見ただけで少し泣きそうになりながらも、「パパ!ママ!」と叫んで二人に飛びついた。



「おかえり。」

「ただいま…っ!」



こうなることを予想していたのか、エバンさんは事前に私が抱いていたルナを受け取っていてくれた。私はしばらく自分が母親になったという事も忘れて、二人に抱き着いてその体温を全身で確かめた。




「ままぁ。僕もばぁばとぎゅーしたい!」

「僕もぉ~。」



しばらくすると足元にいたカイとケンが、私のドレスの裾を引っ張りながら言った。「ごめんごめん」と言って体を離すと、二人はパパとママに勢いよく飛びついた。



「ルナ、ご挨拶は?」



産まれたばかりのころに1度しかパパとママに会っていないルナは、少し警戒した様子でエバンさんに抱かれていた。私はルナをエバンさんから受け取って、「じぃじとばぁばだよ」と言って安心させた。



「本当に…小さい頃のリアを見てるみたいだ。」

「そうね。」



ルナは自分でも思うくらいに私にそっくりで、完全にエルフの見た目をしている。唯一エバンさんから遺伝したのは真っ赤な瞳で、その赤の瞳が真っ白な肌に映えてすごく美しいと、親バカながらにそう思う。



「ルナ。じぃじに抱っこしてもらったら?」

「いやぁ…っ。」



この子は元々、少し人見知りなところがある。

特に大男でムキムキ、そして相変わらず肌も真っ黒なパパはすごく怖くみえるみたいで、抱っこを拒否して私の首にギュっと手を絡めた。



「ははっ。最初リアにもこんな反応をされたな。」

「そうだったわね。あなた全然帰ってこなかったから。」



そう言えば私がルナくらいの年だったころ、パパはたまにしか帰ってこない忙しい臭い人だった。

あの頃の自分に、あれからすっかりパパっ子になってしまった話をしても、きっと信じてもらえないだろうなと思う。



「ゴードンさん、アシュリーさん。お久しぶりです。」

「エバン君、今回はありがとう。ゆっくりしていってくれ。」



一人取り残されていたエバンさんも、パパとママに挨拶をした。

今回私は、ゆっくり1か月くらいリオレッドに滞在させてもらえることになっている。エバンさんは最初の1週間だけはリオレッドで滞在するけど、その後一旦仕事のためにテムライムに帰って、帰るころにまた私たちを迎えに来てくれる。



「はい。ありがとうございます。」



でも1週間もお休みするのも、とても久しぶりなことだと思う。昔は一緒に行けなかったけど今回は一緒にワッフルを食べるんだって心の中で決めて、私はとても暖かい気持ちのままパパが用意してくれていた馬車へと乗り込んだ。

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