二十二歳 関税を作る

第46話 22歳になりました!


ハロ~みなさま!22歳になりました、アリア・ディミトロフです!

あれからブルース君とティーナは順調に結婚して、住居をリンダさんとブルース君の家に移した。まだ子どもはいないから実際に制度を利用したわけではないんだけど、"結婚=仕事を辞める"っていう考え方を少しでも変えられたんだとしたら、それだけでも満足だ。



「ちょっと、ケン!危ないっ!」

「まぁまっ。」



私たちの天使もすくすく成長して、ついに1歳を迎えた。生まれたてだったころは夜泣きに悩まされて大変だと思っていたけど、歩きはじめたらもっと大変になった気がする。



「ままぁ。」

「カイもおいで。」



でも最近はこうやって"ママ"と呼んでもらえるようになって、話せる言葉も増えてきた。成長を感じるとすこし寂しい気持ちにもなるけど、出来ることがだんだん増えて大きくなっていく姿をみると、私も頑張らなきゃなって気持ちになる。



「リア様、お食事の用意が整いました。」

「はぁい!今行く!」

「ナっ。」「ナァっ!」



双子たちはティーナのことを"ナ"と呼ぶ。多分二人ともティーナって呼んでるつもりなんだろうけど、今は"ナ"にしか聞こえない。見ているこちらとしては、それが可愛くて仕方がない。



「ほら、お二人もまんまのお時間ですよ~。」

「まんまっ。」

「まんまっ。」



ティーナは慣れた様子で、二人を抱きかかえて先に食堂へと向かってくれた。ティーナやこの家の給仕さんたちは、間違いなく二人の第二の母親だ。今日も支えられていることに感謝しながら、私も食堂の方へと向かった。






「おはようございます。」

「おはよう、アリアさん。」



エバンさんはまた遠征に出かけていて、今日はラルフさんとレイラさんと三人でご飯を食べることになっている。私が食堂に入るとすでに二人は着席して、先に着いたカイとケンと一緒に遊んでいていてくれた。



「ばぁっ。」

「カイ。今日はばぁばとご飯食べようね~。」



子どもたちはラルフさんにもレイラさんにもとてもよく懐いていて、二人もカイとケンをすごくかわいがってくれる。今日もそれに甘えて、カイをレイラさんに、ケンをティーナに任せて、ゆっくりと自分のご飯を楽しむことにした。



「リアさん。今日は会議に参加されるそうね。」

「はい。」



あの時提案した保険制度はしっかりと導入されて、今ではバンクではなく保険会社みたいな専門機関が出来上がるまでに成長した。保険会社を任されたエストさんは海上保険にとどまらず、生命保険なんかの運用もはじめたらしい。



確かに第一歩の案を出したのは私だけど、そこからは私が関与しなくてもどんどん制度が整っていく。提案した制度が私の手を離れて整っていくのをみるのは、すごく嬉しい事であり、そしてどこか悲しいものでもある。



この気持ちはなんとなく、子供の成長を見ている時に似ている気がする。



幸いなことにあれから目立ったトラブルも起きなくて、育児だけに専念する日々を送っていた。それもそれで充実していたんだけど、久しぶりに王様が会議に参加しないかと誘ってくれた時は思わず心を弾ませている自分がいた。



「一緒に行こうか。」



すると自分自身も大臣の一人で、今日も会議に参加する予定になっているラルフさんが、優しい笑顔で言った。

エバンさんによく似た顔をしているラルフさんを見ていると、数十年後のエバンさんはこうなるのかなって想像してしまう。エバンさんに似ているからか義父に対して緊張することも忘れてしまった私は、何のためらいもなく「はい」と言ってその提案を受け入れた。


「ではカイとケンをお願いします。」

「任せといて。後からイリスも来てくれるから大丈夫だからね。」



ご飯を食べ終わってすぐ準備を整えて、私はラルフさんと一緒に玄関の方へと向かった。


「頑張ってね。」

「まま、ばいばぁい。」


子どもたちは割とあっさりと、私をお見送りしてくれた。なんだかそんなにあっさりバイバイされてしまうと、私の方が寂しくなってしまう。



「行って参ります。」



少し名残惜しくは思ったけど、久しぶりの会議に遅刻するわけにもいかない。気持ちを切り替えながら玄関を出ると、ラルフさんが片手を折って私に腕を組むように促してくれた。

義父にエスコートされるなんて、なんとなく気恥ずかしくて変な感じがする。でもそれを嫌とも思わない私は素直に「ありがとうございます」と言って、ラルフさんの腕に自分の腕を通した。



さあ。久しぶりに仕事が出来るかもしれない。



輝くような快晴の空に照らされて、元々踊っている心がもっと踊りだすような感覚になった。会議までに気持ちを少しは引き締めないとなとは思ったけど、しばらくは今の楽しい感覚に浸っておくことにした。

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