第34話 エリスとガールズトーク
「ティーナっていくつくらいなんだっけ。」
しばらくホッとした気持ちでお茶を飲んでいると、エリスが唐突に言った。
「えっとね、私より2つ下だから…。19、かな。」
初めて出会った時、ティーナは15歳だった。
あれから4年で、本当に色々なことがあった。そのすべてについてきてくれたティーナには本当に感謝している。
「そう。そろそろお相手を見つけないとね。」
「あ、そうだ。」
エリスの言葉を聞いて、ブルース君の存在を思い出した。おせっかいおばさんな私は彼のことを何か知っているかもしれないエリスに、色々と聞いてみたくなってしまった。
「この間ね、ティーナと2人でお買い物に行ったのよ。」
「知ってる。なんか話題になってたよ。アリア様が普通に買い物してた~って。」
エバンさんと結婚できたことは本当に嬉しいことだけど、なんだかとても生きづらくなってしまった。貴族ってだけで普通に買い物をしただけで噂になってしまうものかと思ったらなんだか荷が重くて、「はあ」とため息をついた。
「それで?」
そんな私の様子なんて気にすることもなく、エリスは続きを促した。そう言えばブルース君の話を聞こうと思っていたことを思い出した私は、一旦噂のことは忘れて話を続けることにした。
「んでね、その時リンダさんのお店に行って、息子さんに会ったの。」
「ブルース君ね。」
やっぱり彼を知っているらしいエリスは、私が名前を出す前にそう言った。エリスだって貴族のくせに、街のことをよく知ってるなって思った。
「多分ね、両想いなのよ。」
「ティーナと?」
「うん。」
これまで二人がどんな話を交わしたのかはわからない。でも二人の様子を見ていれば、想い合っているってことがよく分かってしまった。
「なるほどね~。彼とても爽やかだもんね。いい子だと思う。」
「いくつか知ってる?」
「ん~とね、確か18だったか19だったか…。とにかくティーナと同じくらいよ。」
とりあえず年齢が同じくらいだってことが分かってホッとした。かと言って今後二人が放っておいて進展するのかって言ったら、そんなことはない気がした。
「なんとかしてあげたいんだけど…。どうしよう?」
「そうだなぁ…。」
私の中のおせっかいおばさんが顔を出して言うと、エリスも一緒にどうしたらいいのかを考えてくれているみたいだった。少し悩んでいるようなポーズを取ったエリスと一緒に、私も何か案が浮かばないかもう一度考えてみることにした。
「あ、お祭り!」
しばらくしてエリスは、ひらめいたって顔をして私を見た。私が勢いに驚いているうちに、エリスは興奮した様子で席を立ちあがった。
「来月お祭りがあるのは知ってるでしょ?」
「う、うん。」
テムライムは明るい国民性の国だってこともあって、お祭りの多い国だって聞いている。来月はそのお祭りの中でも規模が大きい"収穫祭"が行われるらしく、人々はその準備で忙しくしているみたいだ。
「そのお祭りの最後にね、みんなで広場に置かれたろうそくに火を灯して、来年も無事に収穫できますようにってお祈りするの。」
それも王様の本で読んだ内容だった。
街の広場にはたくさんのろうそくが置かれて、人々はそれに火を灯すんだと。きっときれいだろうから見てみたいなと、個人的にも思っている。
「そのお祈りの時に好きな人と一緒に火を灯すと、想いが伝わるってお話があるのよ!」
「なるほど。」
「なんとかして二人で参加させましょうよ!」
そういう"言い伝え"みたいなものって、どの世界でもあるもんなんだなとぼんやり考えた。そしてエリスの言う通り、それは二人にとって絶好の機会だって思った。
「いいね、乗った!」
私が悪い顔をしながら言うと、エリスもいたずらそうに笑ってこちらを見た。私たちは結束の印に固い握手をして、今後の計画を立てることにした。
「まずは私、ティーナを誘えってブルース君に話に行く。」
「いいの?」
エリスは自ら大役を買って出てくれるみたいだった。申し訳なくてそう言うと、エリスは「いいの」と言って笑ってくれた。
「私もティーナには幸せになってもらいたいし。それにリアが街に行ったら目立ってしょうがないしね。」
「確かに。」
買い物に行くだけで目立って噂になるのに、ティーナ無しで街に行くなんて想像しただけでゾッとした。エリスだって貴族なんだけど、もともとよく街に出ているらしいから、今更注目されないって考えたら適任だと思った。
「こっちのことは任せて。何とかする。」
その代わり、ティーナをその気にさせるのは私の仕事だ。決意をこめて言うと、エリスは「うん」と力強くうなずいてくれた。
「全部私たちにかかってるわね。」
「そうね。」
「なんか久しぶりに楽しくなってきた。」
エリスは本当に楽しそうな顔をして言った。私もすごく楽しみになってきて、「頑張るぞ~!」と大きな声で言ってみた。
「お~っ!」
「あぅ~!」
するとその時、おとなしくしていた二人が声をあげた。
まるで私の言葉に返事をしているように聞こえて、エリスと顔を合わせて笑ってしまった。
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