第33話 たまにはお休みしないとね


王様と王妃様はその後カイトとケントの顔を見て、すぐに王城へ戻られた。そして早速来週には私と会うスケジュールを作ってくれたから、育児の合間を縫って考えていることを急いでまとめることにした。



「リア様、無理は…。」

「もう、分かってるって。だいじょぶだいじょぶ。」



エバンさんだけじゃなくて、ティーナもすっかり過保護になってしまった。

でもそれも全部自分のせいって分かってたから、本当はすぐにでも仕上げて持って行きたい案を来週まで待ってもらうように王様に言った。



「今日はお休みにするから。安心して。」



本当に大丈夫なんだけど、大丈夫と口で言ってもわかってもらえなさそうだったから、もっと仕事をしていたい気持ちを抑えてお休みを取ることにした。するとティーナは安心した顔で「はい」と言って、支度を整えてくれた。



「リア、入るよ?」

「は~い!」



するとその時、扉の向こうからエリスの声が聞こえた。エリスに会うのも久しぶりだと思って声を弾ませて答えると、返事をしたとたんに扉が勢いよく開いた。



「久しぶりだねぇ~カイトぉ、ケントぉ~。」

「あうっ!」「わぁっ!」



部屋に入ってきたと思ったら、エリスはすぐに双子たちの元に行った。

エリスを見たカイトとケントは、それぞれ楽しそうな声を出して笑っていた。最近は双子たちが笑ってくれることも増えて、起きている時間も長くなった。


たくさんの人に育ててもらっているおかげか、二人とも人見知りのしない子に育っている。でも特にイリスとエリスのことは大好きなようで、顔を見るだけで嬉しそうにしている。


やっぱり同じ双子同士、通じ合うものがあるんだろうか。

イリスやエリスが来てくれて、子どもたちが嬉しそうにしているのを見るのが、私も大好きだ。



「また大きくなったねぇ~!」

「やっぱりそう思う?なんかぷくぷくしてきちゃって。」

「赤ちゃんはその方が可愛いのよ。ね~?」

「きゃあっ。」「あうぅっ。」



まるで返事をしたかのように、二人は声にならない声をあげた。それがおかしくて笑うと、エリスも同じようにクスクス笑った。



「リア、お茶しましょうよ。いい天気よ。」



エリスは笑顔のまま言った。確かに今日は雲一つない快晴だ。お休みにするって決めていた私は、エリスのお誘いに「いいね」と言って同調した。



「暖かいから二人も外に連れて行けばいいわ。木陰もあるし、日向ぼっこにはちょうどよさそうだしね。」



エリスの言葉を聞いて、ティーナは「かしこまりました」と返事をした。そしてササッと外に行く用意を整えてくれたから、私がカイトをエリスがケントを抱いて、庭の方に向かった。



「あう~~。」

「わあっ!」

「二人とも嬉しいのね。」



庭に到着してすぐ、二人をベビーカーみたいなカゴに乗せた。エリスの言う通り二人は嬉しそうに手を伸ばしたりおしゃべりをしたりしていて、日向ぼっこを楽しんでくれているみたいだった。



「お待たせいたしました。」



ちょうどその時、ティーナがお茶を持ってきてくれた。リオレッドで飲んでいた紅茶もすごくおいしかったけど、テムライムのものも味わいが違って等しくおいしい。今日もいい香りがするお茶に心躍らせて、ティーナに「ありがとう」と言った。



「ティーナも休んでていいよ。エリスもいてくれてるし。」



ティーナはビシッとした姿で立ったまま、私の後ろで待機しようとしていた。でも私がおやすみなんだから、ティーナもおやすみしないとダメだ。そう思って言ったのに、ティーナは首が取れるんじゃないかってくらい横に振った。



「そ、そんなっ!私は…!」

「二人でお話したいんだもんね、リア。」



すると私をフォローするかのようにエリスが言ってくれた。そういうわけでもなかったけど、私はエリスの言葉に乗って「そうそう」と言った。



「ティーナが働くっていうなら、私も働くからね。」



念押しするようにして、物騒な脅し文句を言った。するとティーナは困った顔で「ふぅ」と息を吐き出した後、「それでは…」とちいさい声で言った。



「ちゃんと部屋で休んでよ!仕事してるの見つけたら怒るから!」



うるさく言う私に呆れた顔をして、ティーナは「はい」と返事をして部屋に戻っていった。私はエリスと目を合わせて「へへ」と笑って、ティーナが持ってきてくれた紅茶をゆっくりと口に含んだ。

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