第31話 21歳あざとさ初解禁です!


それから私は色々と頭の中で作戦を考えた。

強引に船に乗る作戦、もしくは王様に言いつける作戦。色々とずるがしこい作戦はあったけど、一番効果的かつ誰の気持ちも傷つけない方法は一つしかなかった。



「そうですか…。」



しっかりと作戦を頭の中で組み立てた私は、しゅんとした顔を作って小さい声でそう言った。



「なら…仕方ない、か…。皆さん、エバン様のご命令なら従わないと…ですもんね…。」



目線を下げてうつむいて、今にも泣きそうな悲しい声を作って言った。しっかりと見てないから確証はないけど、前にいる二人が動揺し始めるのがわかった。



「何かお役に立てれば、と思ったんですが…。」



そして瞳をうるませて、今度は二人の目をしっかりと見た。そこで二人の頬が赤く染まったのを、私は見逃さなかった。



「ご迷惑をお掛けして、申し訳ございませんでした…。私なんかがお役に立てるかもなんて、おこがましい事でした…。」



二人は泣きそうな私を見て、ソワソワと慌てた。そして一人のおじさんが「何もしなければ…」とちいさい声で言った。



「何もさせるなと、ご命令をいただいております…。見るだけなら…。」

「おい、お前…っ。」



完全に折れたおじさんが遠慮がちに言った。一人のおじさんはそれを止めていたけど、私は心の中でガッツポーズを作りながら「あの…っ」と言って最後のアクションをかけ始めた。



「今日は育児の息抜きに来たんです。私は船が大好きですし、コンテナが実際にどう動いているのか見て見たいんです。それだけです。」



両手を胸の前で組んで、目をうるませながら一息で最後の一押しをした。おじさんたちの顔は、完全に私にいた。



「お二人にご迷惑はお掛けしません!私は一人で船に乗ります。ですのでお近くで、先ほどのように会話を…していただけませんか?」



屁理屈でしかない。そんなことはわかっているけど、私は察しの良すぎるエバンさんにここまで来て負けるわけにはいかない。どんな負けず嫌いなんだ。


念押しして言った私についにおじさんたちは折れて、何も言わずうなずいた。私は今度はにっこり笑って二人を見て、「ありがとうございます」と言った。



アリア・ディミトロフ21歳。ママになってもあざとく生きています!



「エバン様には私が無理やり入ったと伝えるのでご心配なく。」



あざとモードをそこでやめて、普通のテンションで言った。二人は少し不思議そうな顔をしながらも「ありがとうございます」と言って、船の上へと案内してくれた。


後ろでティーナが呆れて「はぁ」とため息をついたのが聞こえたけど、それは聞こえなかったフリをすることにした。



「す、すごいですね。」



船の上に乗ったティーナは、感動して言った。

そう言えばティーナにコンテナをみせるのは初めてだった。別に私が作ったわけでもないのに「すごいでしょ」と得意げに言って、改めて私もその光景をジッと眺めた。



「さ、最近は、天候が悪くて、た、大変だなぁ~。」



すると先導してくれたおじさんが、わざとらしく言った。演技が下手すぎるだろと思いながら、会話に耳を傾けた。



「そ、そうだなぁ。今回なんて、コンテナが2つも、う、海に落ちて…。」

「商品が全部だめになって、た、大変だ~。」


「なるほど。」



思わず二人の会話に返事をして言った。



海上輸送中のトラブルか。

なにか大きなトラブルが起きていたとしたら大変だと思ったけど、貿易をする上でつきものともいえる海上輸送中のトラブルに困っているという事が知れて、ひとまずよかったと思った。


だからと言って心から安心はしていられない。

何もしないままでいたら、このトラブルもいつかとても大きな問題になってしまう。



久しぶりに仕事をしないとな。



エバンさんの心配と制止もむなしく、私はぼんやりそんなことを考えた。



「リア様。無理は禁物ですよ。」



するとまだ何も言っていないのに、私の心を読んだかのようにティーナが言った。

私は苦笑いしながらいティーナの方を振り返って、「はぁい」と歯切れの悪い返事をしておいた。

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