第25話 …へ?リターンズ
本当はもう少し見ていたかったんだけど、その後すぐに二人に家に連れ戻された。
そしてコンテナを私に見せるという"名目"を果たしたパパがこれで帰ってしまうと思ったら少し寂しい気がしたけど、あまり長居させてはママに余計心配をかけてしまうから、2日後には帰ってもらうことにした。
「ママによろしくね。心配かけてごめんって、伝えておいて。」
「本当に、大丈夫?」
パパは最後まで、とても心配そうな顔をしていた。私は笑顔で「うん」とうなずいて、これ以上心配かけないようしようと心に誓った。
「今度ホームシックになったら、家出して帰ることにする。」
「それは困る。せめて伝えてから家出してほしい。」
「それって家出じゃないじゃん。」
エバンさんと2人でテンポよく会話をしていると、パパはそれを聞いていつも通り豪快に笑った。そしてエバンさんの背中をバンッと力強く叩いて「よろしくな」と言った後、あっさりと船に乗り込んでしまった。
「行っちゃったね。」
「うん。でもまたすぐに会えるよ。」
これからきっと、通関制度を整えるためにパパは頻繁に3国をうろうろすることになるんだろう。だからエバンさんの言葉は励ましなんかじゃなくて、本当のことなんだと思う。
ちいさくなっていくパパに大きく手を振って、もう一回「もう大丈夫だから」と言った。背中に置かれたエバンさんの大きな手が、すごく暖かいのをずっと感じていた。
☆
パパを見送った後、私たちはまっすぐ家に帰った。
ずいぶん調子が良くなったとは言え、私の熱はまだ微妙に下がっていなかった。それを知っているエバンさんは「早く」と私を促して、ベッドに連れて行こうとした。
「やっと落ち着いたから聞かないといけないことがあるんだ。」
「え?」
何をだろうと思ってエバンさんをみると、彼はなぜかとても真剣な顔をしていた。そんな真剣に聞かれるようなことがあったかなと頭の中を巡らせてみたけど、何も答えが降りてこなかった。
「こないだ寝言で…」
「リアっ!!」
エバンさんが何か言おうとした瞬間、玄関の方から大きな声が聞こえた。階段の途中にいた私たちが驚いて振り返ると、そこにはイリスとエリスが立っているのが見えた。
「イリス、エリス。来てくれたんだ。」
今回エバンさんが早く帰ってきてくれたのも、パパがテムライムまでやってきてくれたのも、エリスが手紙を書いてくれたからだって聞いた。ありがとうと伝えないとと思って階段を降りようとすると、二人は同時に走り出して私の方に駆け寄ってきた。
「んもぅ!心配かけて!」
「死ぬんじゃないかと思った!」
二人は同時に私の手を取って言った。双子ってこういうところまで揃っちゃうんだって面白くなって、思わず笑ってしまった。
「ごめんね、本当に。」
二人にまで心配をかけていたこと、また申し訳なくなった。でも私が謝ったのを聞いて、二人はまた同時に首を横に振った。
「元気ならいいの。」
「テムライムに来て弱っちゃったなんて言ったら、リオレッドの方たちに怒られちゃうわ。」
そう言って二人は、私を抱きしめてくれた。
なんて暖かい家族の一員になれたんだろうって嬉しくなって、私は二人を抱きしめ返した。
「少しは元気になったみたいだけど、痩せてるのには変わりないから食べないとね。」
「そうね。」
エリスの言う通り、寝不足が解消されてもまだ体力が万全に戻ったというわけではなかった。現に今だってパパの見送りをしただけなのに少しフラフラし始めていて、このままでは寝たきりになってもおかしくないと自分でも思った。
「少しずつ食べるようにする。」
「まだ食欲がないの?」
「そういうわけじゃないんだけど、最近胸やけがひどくて。」
エバンさんが帰ってきてから、少しずつ食欲が戻ってきた。
でもずっと食べずにいたせいか食事をするとすぐに気持ち悪くなってしまうから、まだ前みたいに食べられているわけではなかった。
「あの、さ。」
すると、イリスが言いにくそうな顔をして言った。
「どうしたの?」と首を傾げて聞くと、イリスは真剣な顔をして私を見た。
「一つ聞きたいんだけど。」
「う、うん。」
大丈夫って言ってんのに食べれないとか、どんだけ心配かけるんだよなんて怒られたらどうしよう。イリスの真剣な顔をしてそんなことを考えていると、イリスは私に一歩近づいて、耳元で小声で言った。
「最近、月のもの、来てる?」
「へ??????」
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