第12話 イチャイチャタイム失礼します!
「リア、またね~!」
「また来るね。」
しばらく遊んだ後、あっという間に二人は帰って行ってしまった。
せっかく遊んでくれる人が来たっていうのに、また暇になってしまった私は、改めて書斎の方に行ってみることにした。
「すごいですね…。」
ついてきたティーナは、その光景に改めて驚いていた。私だってさっき来たばかりなのに「でしょ?!」と知ったかぶりをして言って、また本を眺めてみた。
「これで毎日の暇が解消されそうだ…!」
本音でそう言うと、ティーナは「そうですね」と言って笑った。
なぜだか少し恥ずかしくなった私は、「笑わないでよ」とティーナに言って照れ隠しをした。
「しばらくここで本読んでるから、ティーナも自分の仕事していいよ。」
私がこんな牢獄みたいなところにいるからって、ティーナもつき合わせるわけにはいかない。気を遣ってそう言うと、ティーナは「いいんですか?」と遠慮がちに言った。
「うん。むしろ一人になったほうが集中できるから。」
言い訳みたいにいったけど、それもまぎれもなく本音だった。
最初は暗くて少し怖いと思っていたけど、この雰囲気に落ち着きすら感じ始めた私は、「何かあったら呼んでください」と言って出て行くティーナを見送って、どんな本があるのかじっくり見て見ることにした。
テムライムの歴史に、推理小説。植物図鑑や生き物の図鑑…。中には"エルフの歴史"なんていう本もあった。
「なんでもあるじゃん…。」
本当にそこには、なんでもそろっていた。
テムライムではもちろん、リオレッドでもこんなにたくさんの本を見たことがなくて、眺めているだけで少しワクワクし始めた。
「どれに、しようか。」
本がありすぎて、逆にどれにすればいいのか選べそうになかった。
時間はたくさんあるんだから焦らず読めばいいんだけど、たくさんの本を目の前にして自然と心が躍っている自分を隠し切れなかった。
「じゃあとりあえず…。」
本格的に選べなくなりそうだと思った私は、とりあえず一番最初に手を取った"テムライムのなりたち"を1から読むことにした。分厚くて読むのにどのくらいかかるか想像も出来ない本を抱えて、私は部屋の隅っこの方にポツンと置かれていた椅子に腰を下ろした。
「ふ~ん…。」
王様からもらった本で概要は知っていたけど、詳しく知っていくと興味深いことも多かった。それに私は今までリオレッド側の歴史の本を読んできたけど、同じ出来事でもテムライム側から見れば、全く違った出来事のように描かれていた。
思えば今まで私は前世でも、"日本"って国側でしか歴史を学んでこなかった。
本当に何があったのか、その時何が起こっていたかはもう誰にも語れないけど、同じ出来事でも双方の視点から見てみる事って、すごく大事なんだなと思った。
「どこ行ったかと思った。」
「うわっ!」
どのくらい時間がたったか分からないくらい、本の世界に引き込まれていたらしい。その集中を割くようにして話しかけられた私は、思わず大声を出して驚いてしまった。
「ごめん、びっくりさせちゃったね。」
そこに立っていたのは、仕事帰りのエバンさんだった。
普段緩い格好をしている時だってかっこいいんだけど、やっぱりビシッとした姿をみるとドキドキしてしまう。
――――スーツ萌えってやつと同じだな。
「おかえりなさい。」
今日も無事に帰ってきてくれてありがとう。
そんな気持ちを込めて言うと、エバンさんはいつも通りの穏やかな顔で「ただいま」と言ってくれた。
「何の本、読んでるの?」
「歴史の本。すごく細かいところまで書いてあっておもしろいの。」
「読む?」とエバンさんに言ってみると、彼は「ううん」と食い気味に否定した。イリスが言った通り、エバンさんはあまり勉強が好きなタイプではないんだろう。エバンさんが苦手なことなんて今まで見つけたことがなかったから、ちょっとだけ嬉しくなって笑ってしまった。
「ねぇ、そんなことより。どうしてここを教えてくれなかったの?」
会ったら一言文句を言おうって決めていたから、膨れっ面を作ってエバンさんに言った。するとエバンさんは困った顔で「ごめんごめん」と言って、私の座っている椅子の隣に座った。
「僕も存在を忘れてたよ。」
「もう。一番に教えてほしかったくらいだわ。」
不服の顔を作ったまま文句を言うと、エバンさんはなぜか少し楽しそうに笑った。こっちは真剣に怒ってるのにと思ってさらに頬を膨らませると、エバンさんは腕を私の頭をくしゃくしゃにした後、肩を持って自分の方に抱き寄せた。
「あ~かわいい。仕事にも連れて行きたい。」
「もう…っ。」
誰かに見られたらドン引きされそうなくらいいちゃついて、最後は目を見合わせてキスをした。
みなさん、すみません。まだ新婚なのでどうか許してください。
今日もすごく、幸せです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます