十九歳 コンテナを作り、そして結婚する
第69話 ついに第一歩を踏み出します
「最初ルミエラスから買う技術の中の一つに、あのケースの作り方を入れてほしいの。」
こんにちはみなさん、ご無沙汰しております!
19歳のアリアでございます。
あれから無事私たちはルミエラスに寄付をはじめて、ルミエラス国内の状況はずいぶん落ち着いてきたんだって聞いて少し安心した。とはいえ私は状況を聞くことしか出来なかったから、寄付したものがザックやティエルにもちゃんと分配されていますようにと、毎日願わざるを得なかった。
そしてもうすぐ、ルミエラスとは本格的な取引が始まることになっている。
今日はどの技術から最初に仕入れるかって会議をすると言うので、ウィルさんに誘ってもらって私も参加することにしたの。
「あれを?どうして?」
ウィルさんやそのほかの大臣たちは、まず街灯を作ってるものの技術とかあのキレイなレンガの技術とか、そういうものがいいのではないかって言った。確かにそれは優先順位で言うと一番になるのかもしれないけど、私はどうしても、あの技術を仕入れたかった。
「あれで、大きな箱を作るんです。」
「箱を…?」
「ええ。」
みんなどうして?という顔で私を見ていた。
おじさんたちがみんなポカンとした顔をしてこちらを見ているのが面白くて、少し笑ってしまった。
「あのケースの素材は雨風に強い上に、軽いと聞きました。あの素材で大きな箱が作れたとしたら、船で物を運ぶのにもってこいだと思うんです。」
それはいわゆる、前の世界でいう"コンテナ"だ。
船での輸送の時は、どんな荷物もコンテナの中に入れて運ばれる。コンテナで運ぶことによって雨風から商品を守ることが出来ることはもちろん、荷下ろしをする手間だって、ずいぶん省くことが出来る。
ずっと前パパの会社で船に乗ったとき、むき出しのままトマトを運んでいることがずっと引っかかっていた。もしあの素材でコンテナを作れたとしたら、破損が減って商品の値段だって下げられるかもしれない。
「なるほど。」
すると私の意見に、パパが賛同してくれた。
さすが親子!と心の中で言いながら、私はまたにっこり笑ってみせた。
「本当は船の外から、その大きな箱をそのまま取り出して港に置けるようなものが作れればいいのですが…。」
通常コンテナは船から大きな機械を使っておろされる。ルミエラスの技術を使えば、いつかそんな機械だって作れるんではないかって思ったけど、とりあえず今はコンテナを使って商品を守れるようになるだけでも充分だと思う。
「それは今後の課題として置いておくとして。大きな箱さえ作る事が出来たら、輸送がまた大きく変わると思います。」
そこまで言ったところで、ウィルさんが納得したみたいにうんうんとうなずいてくれた。
「でも…。そこまで大きな箱を作るとなると、人手がいるな。」
ウィルさんは今回の最大の問題点を、私の代わりに言ってくれた。他の大臣たちも「そうだな」と言って、頭を悩ませ始めた。
「提案があります。」
私はそこで、また堂々と言った。
ここから話す事は半分賭けでもあるから、私は気合を入れるためにも息を「フゥ」と吐き出した。
「階級外の方たちに、作ってもらうというのはいかがでしょうか。」
それは私が"魚釣りの技術"を教える、第一歩の言葉だった。大臣たちはその言葉を聞いて、小さくざわつき始めた。
「階級外に仕事を…だと?」
「そんなのが許されるわけがない。」
「それくらいなら今までの方が…。」
このくらいのざわつきは予想していた。
でも実際に聞いてしまうと心が折れそうになったけど、ここで引き下がるわけにはいかなかった。
「確かに、今までのままでもリオレッドは十分発展しています。国も潤い、今では隣国に寄付をして恩を売ることが出来るほど、成長しました。」
パパやウィルさんは、静かに私の話を聞いていた。中には私をにらみつけるように見ている大臣もいたけど、そんなことを気にしていたらここで立ち止まってしまいそうになるから、見て見ぬふりをした。
「しかしこのままでいいんでしょうか。ここで成長を止めて、もしテムライムやルミエラスが今後もっと発展し始めたとしたら、今度はリオレッドの立場が弱くなってしまうとお思いになりませんか?」
この大臣たちは生まれも育ちも由緒正しい人たちで、プライドが高い。それに今リオレッド王国は3国間をけん引する存在なんだという自負を持っている。
だからこそ、そのプライドをくすぐる言い方をすれば、賛同が得られるんではないかと、昨日一日かけてこのセリフを考えた。
「確かにそれはそうだ…。」
「しかし、国民の反論も大きいのでは…?」
「到底受け入れられないな…。」
「わかりました。」
それでもざわざわとする大臣たちの会話を割くように、私は大声で言った。その声に驚いた大臣たちは、私の方に一斉に注目した。
「王様に直接、許可をいただきましょう。」
これは私の最終手段だった。卑怯な手だってことは十分理解している。でも卑怯な手を使ってでも、これは私が成し遂げるべきことなんだと思っていた。
王様が私を気に入っていることや、私の意見を聞き入れることも多いというのを理解している大臣たちは、一気に口をつぐんだ。
「国民の王様へ対する信頼はとても厚いです。王様の指示ともあれば、国民もきっと納得するでしょう。」
その一言で、大臣たちは何も言えなくなったみたいだった。
私の代わりにウィルさんが「それでは」と、その場をまとめてくれて、この件はすべて、王様の決定にゆだねられることが決まった。
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