十八歳 支払い制度を整える

第44話 次男さんの、おな~り~


はいどーも。18になりました、アリア・サンチェスです。

皆様いかがお過ごしでしょうか。



え、あの後って?

ええ。あの後はただただ放心状態のまま何とか晩さん会を終えて、リオレッドに帰国しましたよ。


それで早速テムライムで買い付けてきたドレスをリオレッドでも売り出したら、それが爆発的な大ヒット。テムライムに売った高品質なドレスもどんどん受け入れられているらしく、貴族じゃなくても結婚の祝いみたいなもので渡す文化まで出来始めたらしい。


そうしてリオレッド王国は、どんどんと豊かになっていった。

ちゃんとした数字を知らないからあまり明言は出来ないけど、多分私が生まれた頃より、倍くらいは豊かになってるんじゃないかな。



その功績を認められたパパは、なんとついに大臣になった。っと同時にパパの仕事はまた忙しくなって、最初の目的を思い出せばすべてが本末転倒だ。

でもまあ、充実感いっぱいに仕事しているパパを見ていたら、「もっと帰ってきて」なんて言えないし、パパが幸せならそれでいいかと思うことにしている。



私、すごくない?ものすごいアゲマンじゃない?

って、いつも自分で自分に言ってる。誰も言ってくれないし。




え?何?そんなことよりエバンさんとの関係って?

ええ、そりゃご期待通りあの後お持ち帰りされて…。



ってことはなく、私たちは爽やかにお別れをした。その時「今度リオレッドに来たらおすすめのワッフルせんべいのお店に連れて行く」なんて約束もちゃっかりしたんだけど、そんなに簡単に会える距離でもないから、あれから一度も会えていない。でもたまに手紙のやり取りなんかしちゃって、会えていなくてもますますエバンさんのことが好きになってしまっている。ピュアじゃん。





「リ、リア様。失礼、します。」

「どうぞ~。」


そして帰ってきてからじぃじに頼んで、うちでティーナに働いてもらうことにした。うちで働いてもらうっていうより、私専用のお支度係になってもらったってのが正しいんだけど、仕事も早くて正確なティーナを、ママもすごく気に入ってくれている。



「はぁ~。何か楽しいことないかしら。」

「リア様、本日は王がお呼びですので、楽しいことは…。」



ティーナは今日も真面目にそう返事をした。

おおきな一仕事を終えた後、私は燃え尽き症候群みたいに無気力な生活を送っている。今日だってじぃじに呼ばれているから何なんだって話だ。


いや、冷静に国王に呼ばれてこんな反応するやつおかしいんだけど、そうなってしまったんだから仕方ない。



「何の話なんだろうねぇ~。眠たいなぁ~。」

「リア様、ジッとしててください…っ!」



また何か楽しい仕事をくれるだろうか。

あれ以上大きくて楽しい仕事なんてないんだろうけどな。


半分あきらめてあくびをしながら、ティーナに支度をしてもらった。そしてあらかじめ呼んでいた馬車リゼルに乗り込んで、私は今日も、じぃじのところへと向かった。





「失礼いたします。アリアが参りました。」

「うん、入れ。」



この世界の成人は16歳で、私なんてとっくにいい大人だ。そしてパパは今や、この国の大臣になってしまった。

その娘が下品でやんちゃだなんて噂が回ればパパの立場も悪くなるだろうから、前より一層丁寧な姿勢で挨拶をすることにしている。



でも一度じぃじの部屋に入ってしまえば、私はじぃじの本当の孫の一人だって自分で思っている。今日もドアが閉まった瞬間には気を抜いて、「じぃじ、今日はどうしたの~?」と言いかけた。



「お話するのは、初めてですね。初めまして、アリア・サンチェス様。」



するとそこには、見慣れない人が座っていた。それが誰かって疑問はとりあえず置いといて、急いで姿勢を立て直して「初めまして」と言った。



「この人が誰か、分かるかい?」



いや、分かるかい!

と心の中のおばさんが叫んでいたけど、でもなんとなく、どこかで見たことがある顔な気がした。どこで見たのか思い出そうと私が悩んでいると、二人ともクスクスと笑い始めた。



「すまんすまん。意地の悪いことをしたね。」

「わたくし、ウィリアム・カルカロフと申します。」

「カル、カロフ…。カルカロフゥ?!?!?」


つ、つ、つまり、次男―――――?!?



大げさに驚く私をみて、二人とも楽しそうに笑っていた。

お待ちかねカルカロフ家の次男が、ここに来て初めてこの物語に絡んでくるのであった。




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