第45話 いつも話がほぼ決まってしまっている件


「すみません、ご挨拶も出来ず。長い間ルミエラスで暮らしておりましたので。」

「は、えっと、はい。聞いております。い、いつもジル様とアラスター様には…。」

「いいですよ、そんなにかしこまらなくて。」



ジルにぃとアルは身長も高くゴツゴツした体で気迫があるけど、ウィリアムさんはどちらかというと細身で、知的な印象だった。同じ兄弟なのに全然違うな~と思っていると、「違うでしょ?」と急に言われた。



「兄貴や弟とは似てないとよく言われるんです。武道も私には全く才能がなく…早々に父に捨てられました。」

「おじ、様に…?」

「そんな言い方をすると誤解されるぞ。」



じぃじは楽しそうに言った。ウィリアムさんも同じように笑って、「そうですね」と言った。



「武道には向いていないので、僕はどれだけでも頭脳で王のためになろうと。そのためにルミエラスで長年勉強をさせていただきました。」



ルミエラスは他より、文明が発展した場所だと聞いたことがある。だから国交の整っているテムライムより、まだ関係に距離があるルミエラスの方に留学してたんだと納得した。



「これまでも何度か帰国はしていましたが、正式に帰国することになり、ご挨拶をと思いまして。」

「そ、そうなのですね。わざわざありがとうございます。」



私は丁寧に礼をして言った。するとウィリアムさんは「こちらこそ」と言って、爽やかに笑った。また眼福になりそうな新たなイケメンが登場したな、と思った。



「実はそれだけじゃないんだ。」



目をハートにしている私に、じぃじは言った。

「まだなんかあるの?ワッフルたべようぜ」と思って見返すと、じぃじは「ウィル。話してあげて」とウィリアムさんの背中をおした。



「昨今のテムライムとリオレッドの関係をみて、お互いのためにルミエラスとも同じような関係が築けないかと、僕は思っています。」

「ルミエラスとも…。」



「ええ」と言って、ウィリアムさんは笑った。確かにその方がお互いいいだろうなとは、私も前々から思っていた。



「幸いにも僕は長年ルミエラスに居ましたので、王にお会いすることが出来ます。なので王にも、今のテムライムとリオレッドの国交についてお話をしに行こうと思うのです。」



「あ、いってらっしゃい」と思った。でもやっぱりそれだけで話は終わりそうになかった。



「そこでその時、ぜひアリア様についてきていただけないかと思いまして。」



はい、出ました。ついてきてくれないかのやつ。


亭主関白じゃないんだからさ?時代は令和なんだからさ?

俺に黙ってついてこいとか、もう古いのよ。


いやこの世界ではまだまだそんな感じなのかもしれないけど。

私も黙ってほいほい男についていくほど馬鹿じゃないのよ。


私にはもうエバンさんっていう好きな人もいるし。

「ルミエラスね!いく行く!ついてく!」なんてそんな軽々しくは…



「そして今回、テムライムの方も、同時にルミエラスに言ってお話をされるそうです。3国で国交をもっと活性化しようと、そう話す予定です。」



テ、テムライムからも…?それってもしかして…。



「テムライムからはロッタとその部下、後は護衛としてディミトロフ家の息子も来るかもなぁ。」



じぃじはこちらを見てニヤニヤしながら言った。

なんで国の王様まで私の恋愛事情がばれてんだよ!

それならもういいじゃん!国際結婚でも何でもしようぜ!!!

迎えに来いよ、エバン!!!!!!



「本当はゴードン様が行かれるのがいいと思うのですが…。とてもお忙しくされているそうで、ぜひアリア様をと打診をいただいております。」



ねぇパッパ。打診するなら先に言ってくれない?

私だってさ、予定ってのがあるのよ。

あとさぁ、心の準備もしなきゃいけないでしょ?

もうここまで来たら断れない!ってとこまで話を決めてるのに

何も言ってくれないってどゆことなの?!ねぇ?!?!



「いかがでしょうか。」

「そこまでお願いしていただいて、私がお断り出来る理由がありません。お力になれるかは分かりませんが、ぜひ同行させてください。」



私はまたお嬢様モードを作って、丁寧に言った。

じぃじはまた意味ありげな顔で笑っている気がしたけど、それは思いっきり無視してやった。

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