第6話 だれか転生と精神年齢についての研究、しません?
「ゴードン様、アリア様。おまちしておりました。」
「ミアさん!ごきげんよう。」
今日もいつも通り、ミアさんがお出迎えしてくれた。なんだか味方に会えたような気持ちになって、思わず大きな声を出してしまった。
「リア様。とても素敵です。」
「え…っ、本当ですか?嬉しいっ。」
今まで何度だってここで挨拶をしてきたはずなのに、ミアさんがそんな風に褒めてくれるのは初めてだった。素直に喜んで反応すると、ミアさんは頬を少し赤らめて「はい」と言ってくれた。
――――大丈夫よ、リア。
今日もあなたは天使だわ。
「それでは、行きましょう。」
「はいっ。」
じぃじの話によると、今日はあの会議室でテムライムの王とお話をしてから、晩さん会的なパーティーが行われることになっている。会議だけで本当は帰りたかったんだけど、それはばぁばが許してくれなくて、それに参加することが決まってからは厳しく作法とダンスのレッスンを受けさせられた。
この国のダンスは、想像しているあの"舞踏会で踊るダンス"って感じのもので、通算45年の人生を通しても触れるのは初めてだった。
え、っていうか私、45歳なの?
こっわ。
なのに精神年齢はずっと29歳辺りで止まってる気がする。
45歳になったことがないからその時の精神年齢なんて分からないけど、もしかして精神の成長って実年齢にある程度比例するのかなって思った。いつか転生について研究する人が現れたとしたら、ぜひその統計、よろしくお願いいたします。
「ゴードン様、リア様、それではこちらでお待ちください。」
「あ、はい。」
余計なことを考えている間に、10年ぶりの会議室に通された。そういえばあのクソ王子も今日はきっと参加するんだろうな。
会うのは10年ぶりだけど、少しはクソが直ってるだろうか。いや、たぶん直ってないよな。人間本質の部分なんてそうそう変わるもんじゃ…
「よお、リア。」
緊張すると考えこむ癖があるんだろうか。
45年を通して初めて自分の新しい癖を発見した私は、名前を呼ばれてやっと意識を取り戻した。
「なんだ、アルか。」
「なんだってなんだよ。」
考え込む私の思考を停止してくれたのは、21歳になったアルだった。
アルとはあれからも色々縁があって、もはや幼馴染みたいな存在になっている。あのころとは違って背も高くなっていっちょまえの騎士へと成長したこいつだけど、中身は出会った頃の9歳のままだ。
――――ほら、やっぱり人って変わらない。
「どうしてアルが?」
こんな小難しい会議の日に、まさかアルと会うとは思ってなかった。するとアルは急にビシッとした恰好になって、「見て分かるだろ」と言った。
「わかんない。」
「分かれよ。お前の警護!」
まさかあのクソガキに守られる日が来るとは。そう言われてみればアルはいつもよりしっかりした服を着ていたし、腰にはゾルドおじさんとかジルにぃと同じような大きな剣をさしていた。
「アルに守れるの?」
「うるせっ!お前は黙って守られとけ。」
アルは顔を赤くして言った。やっぱり可愛いやつだなって思って、少しからかいたくなってきた。
「ねぇ、今日の私どう?」
意地悪おばさんになった私は、アルの前でくるっと一周してみせた。するとアルは子供の頃と全く変わらない不愛想な顔をして、「衣装だけはいいな」と言った。
「ん~。それって可愛いってことね。」
「ポジティブな捉え方だな。」
「え、じゃあ違うの?」
はっきりと言わないアルに、顔を近づけていった。するとアルは今日で一番顔を真っ赤に染めて私から目を反らした。
「違わ、ないけど…。」
「だよね、かわいいよね。」
アルは本当にからかいようがある。
自分が思ったようになったのが楽しくてくすくす笑うと、「調子に乗んな!」と怒られた。
「ありがとう、アル。」
「え?」
いつも通りアルと会話したおかげで、緊張がずいぶん解けた気がする。私は急にお礼を言われて戸惑っているアルを置き去りにして、おとなしく自分の席に座ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます