第三章 貿易の基礎を作っていきます!

十六歳 貿易条件を作る

第1話 条件なしに貿易してるとか、ま?


ハロ~!みなさん!

わたくし16歳になりました~!!


濃い幼少時代を送ったせいで人生がとても長く感じられてるんだけども、まだまだぴちぴちのJKの年齢っす!



え?あれからどうなったかって??


あれからじぃじは言った通り、すぐに港を作り始めたの。資金に関しては見栄っ張りの貴族たちが、競い合うようにしてたくさん出してくれたみたい。もしかしてわざわざみんなを集めて発表したのも、その狙いがあったのかな~?と今になっては思ってる。


そしてパパも、すぐに航路の整備を始めた。しばらくはやっぱり忙しくて家に全く帰ってこなかったけど、軌道に乗ってきたら今まで港で色々と調整を手伝ってくれていたリカルドさんっていうおじさんに船会社を任せて、それからは順調に家に帰ってくるようになった。



そしてじぃじの目論見通り、それからすぐに暴動は治まった。

あれから10年がたつけど目立った暴動は起きていなくて、何ならむしろ流通が活性化し始めたことで、国の経済もめちゃくちゃに発達した。



つまり、国がすご~くお金持ちになったの。私すごくない?



「失礼いたします。サンチェス家 アリアが参りました。」

「入れ。」



そして私はというとね。あの通行許可証を駆使して、あれから王城に行きまくった。


何かアドバイスしてたかって?

う~ん、まあ。してたっちゃしてたんだけどね…。


ほとんどワッフルせんべいを食べていただけっていうのは、秘密の話だよ。



「ごきげんよう、王様。」

「お前たち、下がっていいぞ。」

「はっ!」



16歳になって分別をつけなければならなくなった私は、家来さんたちがいる前ではこうやって淑女のふりをしている。



「じぃじ~!」

「リア~!!待ってたぞ~~!」



でもじぃじが家来さんを部屋から追い出した後は、私たちは本当の家族みたいに昔から変わらずこうやって砕けた挨拶をする。何年たっても勇ましくてかっこいいじぃじが、本当に大好きだ。



「じぃじからのお呼び出しなんて珍しいわね。」

「そうなんだよ、今日はリアに話があって。」



だいたいいつも、知りたいことが出来たかもしくはワッフルせんべいが食べたくなった時、特権をフルに生かしてここに来ていた。でも今日はあらかじめ来てほしいっていうじぃじからの通達があって、私はここに来ている。



「まあとりあえず座って。」

「う、うん…。」



じぃじはそう言って応接のソファに私を座らせて、ミアさんにお茶を持ってこさせた。王城で飲むお茶はいつだってすごくおいしい。私は今日も味わいながら紅茶を一口飲んで、自分の方から「どうしたの?」と聞いてみた。



「最近、テムライムとトラブルがあったのを知ってるかい?」

「ええ。パパから聞いたわ。」



最近またパパがせわしないから理由を聞くと、トラブルがあったっていう事だけは教えてくれた。でも詳しく聞く間もなくパパがいつも仕事に行ってしまうから、その内容はあまり聞けていなかった。



「この間テムライムで船にトマトチヂミを乗せている時、天候が悪化したせいで船の上に乗っていたものが痛んでしまったんだ。」

「なるほどね。」

「それがどちらの責任なのか、どちらが費用負担するのかってところで、もめてしまっているんだ。」



話を聞いてすぐに、あ~なるほどなと納得した。



貿易をしていく上で、そういうトラブルはどう頑張っても避けられない。


本職が貿易だったはずなのに、今までどういう条件で貿易をしているのかってことを知らなかった自分の浅はかさを、そこで痛感した。



「条件は、どうやって決めてるの?」

「条件?」

「うん。テムライムと取引する時、何か約束事みたいなものはあるのかしら。」



私の質問に、じぃじは頭を悩ませた。そしてしばらく考えた後、言った。



「ないな。」

「ふぇ?」



え、え、待って。

条件なしに今まで貿易してたとか、まじ?



思わず間抜けな声を出した私を、じぃじは不思議そうな顔で見ていた。私は衝撃で持っていたお茶をこぼしそうになったのを、なんとか必死で食い止めた。

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