第55話 なんかえらいもん、もろてしまいましたわ。
「それからもう一つ。」
じぃじは私を抱き上げて、穏やかな声を出した。また何を言い出すんだろうと私も注目して聞いていると、じぃじはまたミアさんに何か指示を出した。
「この子、アリア・サンチェスには、王城への無期限の通行許可証を渡そうと思う。」
はい?
通行、許可証…????
私がまだ戸惑っていると、ミアさんははがき位のサイズの小さな紙を持ってきた。そのはがきには前もらった手紙と同じように、王様のスタンプが押されていた。
「王様、そんな子供に…っ!」
「さすがにやりすぎなのでは…?!?」
クソ大臣ズが、こぞって声を上げ始めた。でも私もその意見には少し賛同しながら驚いてじぃじの顔を見た。
「そんなことはない。この子は
いや、私もうすぐ36ですしね。
そりゃ発想力だってあるでしょうね、ええ。
「ですが…!」
「なぁ、イグニア。お前はこの間の遠征、何で行ったんだ?」
「ウ、
「それもこの子のおかげだと、そうは思わないか。」
グダグダ言っているクソ王子を一蹴して、じぃじは言った。
「この子が今後、私の支えになってくれることを確信している。だが何かを思いついても私に意見できなければ、実現だって出来ない。なのでここに、私から正式に許可を与える。」
そう言って王様は私を床におろして、椅子に座った。そしてそのハガキにサインを書いた後、私に目線を合わせるようにしてしゃがんだ。
「リア。何か思いついたら、じぃじにお話ししに来てくれるかい?」
「うんっ!」
断る理由なんて一つもない。
私は元気に返事をして、そのハガキを受け取った。
王様の命令を、反対することが出来る人はいなかった。クソ王子は相変わらず不服そうな顔をしていたけど、そんなことはもう気にならなかった。
「それでは今日の会議はここまでとする。解散!」
じぃじがそう言うと、全員が一斉に立ち上がって敬礼をした。じぃじは私に「また今度
「あまり調子に乗っていると、痛い目をみるぞ。」
すると後ろから、クソ王子がすごく怖い顔をして言った。昨日の出来事を思い出した私は、思わず体をこわばらせた。
「フンッ。」
固まっている私をあざ笑って、クソ王子もどこかに出て行った。
その後ろ姿が見えなくなってから私は大きくため息をついて、心の中で「ベーーーーッ」と子供みたいな反抗をした。
「リア。」
すると後ろから、優しい声でパパに呼ばれた。声に反応して振り返ると、パパはそれと同時に私を抱きしめた。
「お前は本当に偉い子だ。」
「でしょ。」
まだ王城にいるっていうのに、一気に緊張が解けた私は体重をパパにゆだねた。パパはそれを察して私を抱き上げてくれて、「お家に帰ろっか」と優しい声で言った。
「ゴードンさん!」
すると今度は、パパのことをジルにぃが呼んだ。パパがそれに「ジル君、帰ってたんだな」と反応すると、ジルにぃはそこで敬礼をして、「はいっ」と返事をした。
「お疲れのところ申し訳ございませんが、一旦うちに来てもらえませんか?」
ジルにぃは申し訳なさそうな顔をして私たちを見てそう言った。正直疲れがピークに達していたから早く帰りたかったけど、昨日けがをしていたアルのことも心配だ。「いいよ」って意味を込めて私がうなずくと、パパも「大丈夫だよ」と言った。
☆
それからジルにぃの後ろをついて、私たちはカルカロフ家に向かった。すると相変わらずキレイな庭の前には両手を前で組んで心配そうな顔をしているメイサと、顔中にガーゼみたいなものをつけたアルの姿が見えた。
「メイサ――――――!」
姿が見えたと同時に私が叫ぶと、メイサは私たちに気が付いて走って寄ってきた。パパは私のことを降ろしてくれたから、私もメイサの元に駆け寄った。
「リア様っ!」
メイサは力いっぱい、私を抱きしめた。私もそれにこたえるみたいにして、メイサを抱きしめ返した。
「リア様、すみません…っ!本当に…っ。」
「メイサ悪くないよ、私のせいだもん…っ。痛くない?ケガしてない?」
「私は大丈夫です。」
私たちは確かめ合うようにして、お互いの顔を見合わせた。メイサは私の頬にそっと手を添えて、もう一回「ごめんなさい」と言った。
「おい、バカリア。」
すると後ろから、相変わらず不愛想な顔をしたアルが寄ってきた。顔が傷だらけ過ぎて、思わず笑ってしまった。
「何笑ってんだ!」
「ありがとう、アル。」
いつもは悪口しか言わない私が素直にお礼を言ったのを聞いて、アルは顔を真っ赤にした。それがとてもかわいくて、おばさんはからかいたくなってしまった。
「守ってくれて、ありがとっ。」
私はそう言ってアルに近づいて、ほっぺにキスをした。するとアルはついに私に背を向けて照れ隠しをしていたみたいだったけど、耳が真っ赤なので照れているのがバレバレだった。
「守ってない…!」
するとアルは、両手でこぶしを握って小さな声で言った。
また照れ隠しをしているのかなと思って見つめていると、今度は強い目をしてこちらを振り返った。
「守れなかった!なにも!」
そりゃそうだ。だってアルはまだ11歳の子供なんだから。
「しょうがないよ」って言って励まそうとすると、アルはその前に「リア!」と叫んだ。
「俺、強くなるから!」
「う、うん。」
「にぃさん!俺、もっと頑張るから!」
「そっか。」
大人たちはアルを見て、穏やかに笑っていた。
子どもってこうやって成長するんだな~と、アルを見て思った。
どんなときだって、カルカロフ家の庭はとてもきれいだった。向こうの方で揺れているレイムの花をみて、今日こそキレイなものを、ママに摘んで帰ろうって決めた。
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