第27話 ちょ、王様、マジかw
部屋の手前には応接用みたいな大きな椅子とソファが置いてあって、その机の上には見たことのないくらい大量の
そして部屋の奥にはとても豪華な机があって、その机は王様が一人で仕事をする時に使うみたいに見えた。その証拠に机の上には、処理しかけの書類みたいなものがいくつか広がってる。
――――あ、この王様、ちゃんと仕事してる。
社会人だったころは社長室にだって入る機会はそんなになかったけど、うちの社長だってそんな一生懸命仕事をしてなかったと思う。王様と言えばただその席に座っているだけの役割だと思っていたけど、この王様はとことんいいトップみたいだ。
「いらっしゃい。」
初めて見る光景に驚いていると、部屋の奥の方からとてもきれいなドレスを着たおばさんが出てきた。
「リア、紹介するよ。この国の、王妃だ。」
――――わっ!意地悪王妃!
また頭の中で勝手に"王妃=いじわる"の構図を作り上げている私は、ちょっとでも嫌われないようにするためにすぐに作法をしてみせた。
「はじめまして、王妃様。アリアと申しましゅ。」
どんな言い方をしても、噛んでしまうのはやっぱりご愛嬌だ。
でももしかしてこの人には私のあざとさスキルを使えないかもと震えながら頭を下げていると、王妃様はクスクスと声をだして笑い始めた。
「まあ、本当にかわいいお嬢さんね。天使ちゃんだわ。」
王妃様はそう言って、私をギュっと抱き締めてくれた。私は張りつめた緊張が解けて思わず力が抜けそうになって、王妃様にしがみついた。
「はじめまして、リア。エステルです。」
エステル様は王様みたいに白髪にはなっていないけど、前世で言うお母さんくらいの年齢の方だった。年齢も年齢だからしわはあるんけど、それを考慮したとしてもめちゃくちゃにキレイな人で、王様もなかなかやるなと生意気なことを考えた。
「楽しみにしてたのよ。さあ、座って。」
王妃様は私の手を取って、ふかふかの椅子に座らせてくれた。目の前に置かれているたくさんの
「こんなに、いいの…?」
今すぐにでもかぶりつきたい気持ちをおさえて、恐る恐る聞いた。すると王様も王妃様もニコニコと笑って、「たくさん食べて」と言った。
「お前たち、一旦下がってなさい。」
「ですが…。」
「そんなに見られたら、リアが食べづらいだろう。」
王様は気を使って、家来の人たちみんなを部屋から出してくれた。何て察しのいいイケおじなんだと感心しながら、私は両手を元気に合わせた。
「いただきまぁ~す!」
そしてまた元気にそう言って、目の前の
噛んだ瞬間に絶妙な甘さと説明のつかないコクが口の中に広がって、私は思わず両手を頬に置いて「おいしぃ~~~~」と叫んだ。
「ふふ、本当に好きなんだね。」
「パパがね、いつもお土産に買ってきてくれるの!」
「そうかそうか。優しいパパだね。」
まるで二人は、おじいちゃんとおばあちゃんみたいに私を甘やかしてくれた。私はもう地位も名誉も気にすることなく二人に存分に甘えながら、
「エステル、娘がいたらこんな感じだったのかな?」
「そうね。私たちのところは息子ばっかりだからね。女の子は本当にかわいいわ。」
二人は微笑みながら、そんな幸せな会話をしていた。私はそんな二人ににっこりと笑いかけて、出してもらったジュースを飲んだ。
「お腹いっぱぁいっ。」
吐きそうなくらい食べて、ついに限界を迎えた私は、背もたれに持たれながら言った。すると王様も王妃様も「ふふふ」と笑って、「よく食べたね」と行ってくれた。
「リアはほんっと~にかわいいなぁ。」
すると王様は私を横からギュッと抱きしめて、頬を摺り寄せていった。びっくりはしたけど
「リア?」
「ん?」
「じぃじって呼んでくれる?」
デレデレした声で、王様は言った。この人いいトップではあるけど、威厳は全くない。
いや、たぶん大人たちの前では威厳があるようにふるまっているんだろうけど、家来たちが出て行ってから、ただの変態おじさんみたいな顔をしている。
でも
しょうがないわね、ファンサービスしてあげましょう。
私は今日最高の笑顔を作って、「じーじっ」と呼んであげた。
「きゃっわいい~~~!」
王様はついに私に頬ずりをしながら、我慢することなくデレ顔をして言った。あまりの変わりっぷりに驚いて私が何もできずにいると、王妃様から「あなた」と低い声が飛んできた。
「みっともないわよ。しっかりしなさい。」
「いいじゃないか~、ここにはリアしかいないんだし。」
でも王様はそれを無視して、デレ顔をしたまま私をスリスリし続けた。すると王妃様は立ち上がって王様を鬼みたいな顔でにらんだ。
「あなた。」
「はい。すみません。」
ちょ、王様、マジかwwwww
こういう世界って、亭主関白が普通じゃないの?www
思わず草をはやしてそう言ったけど、心の声なので二人には聞こえていない。多分これは聞いてなかった話にしないと駄目なやつだなと空気を読んで、私はソファにゴロっと横になった。
「リア、眠くなっちゃったぁ。」
「そうだね。遠いところ来てくれたから疲れたよね。」
王妃様は私の頭を膝にのせて、ゆっくりと撫でてくれた。
話をそらそうと言ったんだけど、そんなことをしてもらったら本当に眠くなってしまう。
少しは成長したとはいえまだ5歳の私は、そこから本格的な眠りの世界に入ってしまった。
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