第26話 5歳、ニート、家をもらう。
「リアは
「うん、大好きっ。」
私のあざとさはとどまることを知らない。その証拠に私のセリフを聞いて、王様を警護している人たちの顔が、少し緩むのが分かった。
おじさんたち、ちゃんと仕事しないとだめよ。
「わかった。それではこの後、僕と一緒にお茶でもいかがですか、お嬢様。そこで最高の
「わ~いっ!ありがとう、王様!」
すっかり敬語を忘れて、私はそう言って王様に抱き着いた。
周りの大人たちは相変わらず慌てふためいていたけど、王様はそんな私を抱っこしてくれた。
「わしの部屋にティータイムの準備をしてくれるか。」
「はっ。」
王様は私を抱き上げたまま、ミアさんに指示を出した。私は王様にギュっと抱き着いて、あざといモードを続行していた。
「それとゴードン。」
「はっ。」
「さすがにわしも
王様のその言葉に、パパはびっくりした顔をした。
「ですが、王様…っ。」
「知っている。お前が子供のために自然の多いナルバ地帯に引っ越したこと。」
パパの職場は王都にあるのに、家が少し離れたところにあることが今まで何となく気になっていた。それって私のためだったんだと、王様の言葉で初めて知った。
「でもそろそろ、リアにも教育が必要になるだろう。周りに同世代の友達もいたほうが、リアのためなんじゃないか?」
「それは、そうです…。でも…っ!」
「お前は頑固だな。」
王様はそう言った後「リア」と私の名前を呼んだ。私が相変わらずあざとく「ん?」という顔をすると、王様はデレっとした顔で笑った。
「リアには
「やった~!お家がもう一つ?」
「そうだよ!」
皆さん、わたくしここでは名前をアリア。
5歳で当然ニートをしてますが、この度、家をゲットいたしました!!!
「わ~いっ。」
一言でその気持ちを集約してみたけど、パパはまだ恐れ多そうな顔をしていた。でもしばらくすると例のポーズをとって「ありがとうございますっ!」と大きな声で言った。
「お前にあげたのではない。リアに渡したんだ。」
「王様、ありがとう!リア、大事にするね!」
王様に抱き着いて言うと、彼は背中を優しくポンポンと撫でてくれた。するとその頃ミアさんがまた部屋に入ってきて、「準備が整いました」と言った。
ミアさんの言葉を聞いて私を下におろした王様は、またひざまずいて私に右手をだした。反射的にその手を握って見せると、王様はまた優しい笑顔をつくった。
「それではお嬢さん、僕とお茶をしてくれますかな?」
「はい、よろこんで。」
今度は大人びた仕草で、私も笑った。そしてそのまま王様は私の手を引いて、自分の部屋の方へ連れて行ってくれた。
☆
「ねぇ、パパはいかないの?」
王様と私についてきたのは、警備のおじさんとミアさんだけだった。少し不安になってそう聞くと、王様は「そうだね」と言った。
「パパは僕といるとすごく緊張しちゃうからね。リアだけの方がいいと思ったんだけど、嫌かな?」
「ううん、大丈夫。リア、お姉さんだもん!」
王様は微笑ましい表情で聞いてくれていたけど、周りの大人は相変わらず私の言動にあたふたとしていた。
それにしてもこの王様、本当にいい人だ。昨日まで心配していた自分に教えてあげたいくらい、王様は本当にいい人だってことが分かった。
この王様がトップにいるのなら、きっとこの国だってもっともっとよくなる。
政治の知識なんて一切ないのに、私は偉そうにそんなことをぼんやり考えた。さっき会ったばっかりなのにパパだけじゃなくてこの人のためにも私は自分の知識を使って、国をよくしたいななんてところまで考え始めた。
「さあ、お嬢様。こちらです。」
王様はそう言って、またひときわ大きな部屋のドアに片手を向けた。するとドアマンのおじさんが重そうな扉を軽々と開けてくれて、それと同時に部屋の中からはふわっと、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます