五歳 この世界について学ぶ

第22話 王様からのお手紙


はい。そしてついに!なんやかんやで、無事5歳になりました~!



4歳の私の活躍もあって、あれからまた半年で陸路の運送はずいぶんと整理された。最初は受け入れられなかったウマスズメも、今では隣町でもパートナーとして飼われるようになったらしい。


そしてパパが作ってイーサンおじさんが発展させた運送のシステムによって、今まで王都周辺でしか手に入らなかったトマトチヂミは、全国へと流通し始めた。それをいいことにパパは他のものも隣国から仕入れたり、王都から出荷したりしはじめて、国全体が活気づいてきているのが5歳の私でもよくわかった。



「リア、帰ったよ!」

「パパァ!おかえりっ!」



そして私の思惑通り、パパは徐々に早く帰ってくるようになった。私は大満足の表情で、毎晩のようにパパを迎え入れているし、ママも心なしかいつも嬉しそうだ。



「お帰り、あなた。」

「アシュリー、今日はビックニュースがある。」


いつも通りパパを出迎えると、パパは持っていたカバンから手紙のようなものを取り出した。手紙にはアニメでよく見ていた赤いスタンプが押されていて、典型的な"手紙"だなって私は眺めていたけど、ママはそれを見てすごく驚いた顔をした。



「これって…っ!」

「そう。王様からだ。」



ええぇぇ?!?王様からパパに手紙ぃ?!?



パパがどんどんこの街で力を発揮し始めたことは分かっていたけど、まさか直接手紙が来るような地位までいったとは。



―――私、すごいな。



あっちの世界に居たら、絶対にこんなこと起こりえなかった。

お母さんのことは悲しませたんだろうけど、転生を選んで本当に良かったのかもしれないと5年目にしてようやくかみしめていると、パパはニコッと笑って私の方を見た。



「王様から、リアへの手紙だよ。」

「え…っ?」



王から?私に?て、手紙…???

パパにじゃなくて?!?!?!?



驚いて声が出せない私の顔を覗き込んで、パパは「大丈夫?」と聞いた。全然大丈夫ではないんだけど、私は子供らしく笑って「わぁ、なんだろう」と言ってみせた。



「ほら、読んでごらん。」



5歳になってすっかり文字が読めるようになった私に、パパは手紙を手渡した。私は震える手をなんとかおさえながらそれを開封して、手紙を開けてみた。




"アリア・サンチェス"


手紙には確かに、私の名前が書いてあった。まだ信じられない気持ちを抱えながら、元気に手紙を読んでみることにした。



「リオ、レッドじょうへ しょうか、んを、めいずる。」



リオレッド城へ、召還を、命ずる…?

つまり、城へ来いと。



「リア、意味がわかるかい?」

「わかんない。」

「お城へ来てください、ってことだよ。」



その"わかんない"は、どうして私が呼ばれたのか"わからない"って意味だった。でもパパはその言葉の説明をして、「本当にすごいことだよ」と付け足した。



「ど、どうしてリアが…。」



するとママが、動揺する私の代わりに聞いてくれた。するとパパも困ったように笑って「わからないんだ」と言った。



「よくこんなシステム思いついたねと言われたときは、毎回娘のおかげだってこたえてたんだ。それがなぜだかしらないけど、王様の耳に入ったのかもしれないね。」



ねぇ、パッパ。そんな謙遜必要ないって。



転生前は王女になりたいとか思ってたけど、私は今の暮らしで十分満足だった。王様に接する機会なんてないけど、両親に愛されて、幸せに暮らす、人生…。



「なんにせよ、本当に名誉なことなんだよ。リア。」

「大変!メイサ!!!」



ママはそれから焦ってメイサを呼んで、当日私が何を着ていくのかの相談を始めていた。私はその間も放心状態でそこに立ち尽くして、もし粗相なんかしちゃったらどうしようと、早くも緊張し始めた。



「ねぇ、パパ。」

「ん?」

「パパも一緒?」

「もちろん、その下に一緒でいいって書いてあるだろ?」



確かにそこには、パパも一緒に来るようにと明記されていた。それを見て私は少しだけホッとしている自分がいることを、私もしっかりと自覚していた。



前の人生の時から、こういう緊張する場面が苦手だ。

就活の時の面接とか、授業の時の発表とか。そういう事でさえなるべくしないでいいように生きてきたはずだったのに、まさか新しい人生で"王様"に会わなければいけなくなるなんて。

こんな日が来てしまうなら、いっそのこと不便なまま生きていけばよかった。



「リア、よかったな。」



パパはそんな私の気持ちなんて察してくれることもなく、ニコニコして頭を撫でてくれた。そこでようやく私は自分が5歳だったってことを思い出して、子供らしく振舞えば、後はパパがなんとかしてくれるかと、無責任なことを考えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る