第3話 そうだ、考えてみよう!


「パパ?」

「ん?」

「さっき言ってた"カゴ"って、どういうの?」


しばらくパパが頭を抱えながら仕事をしているもんだから、これでは本当に疲れてしまうと思った。天使ほどかわいい娘の私が癒してあげなければと思って聞くと、パパは嬉しそうに笑って絵を描いてくれた。



「こういうね、木の箱なんだ。」



パパのいう通り、それは想像通りのカゴだった。本物を見ていないからわからないけど、私の知っている木でできているんだとしたら、すごく重そうだなと思った。



「パパは何を運んでるの?」

「パパはねトマトチヂミを運んでるんだ。」



なるほど、私が食べていたあのトマトみたいなリンゴみたいな"チヂミ"は、どこからか輸入してきたものなのか。


「"カゴ"の前は、どうやって運んだの?」

「小さな箱に入れて運んでたんだ。大きな箱にした方が、いっぱい入るだろ?」

「そうかぁ!パパ、かしこぉい!」



って、あざとく言ったけど、それが賢い方法だとは到底思えなかった。だって箱を大きくしたところで人が運べる量なんて知れてるし、それにさっきパパが言っていた通り重労働だ。



少しでもパパの負担を減らすにはどうしたらいい…。



いつしかパパっ子になっていた私は、そこから真剣に考えた。でも考えているうちに眠気が来てしまって、大きく一つあくびをした。



「リア、眠いの?」

「ううん、眠くない。パパともっと、お話しするの。」

「ふふ、そうか。」



パパは納得したみたいに言ったけど、私をお姫様抱っこしてくれた。そしてそのままベットに連れていかれる間に、どんどん意識が遠のいていった。






「…ん。」


お昼寝から目覚めると、ベッドの横にはメイサが座って何かを縫っていた。



――――私、寝ちゃったのか。



まだ少し眠い目をこすりながら体を起こすと、メイサが「おはようございます」と言った。



「パパ、は?」

「旦那様は先ほどお仕事に行かれました。」

「ええ!いっちゃったの???」



子供の私の涙腺は、子供設計になっている。パパが行ってしまったことが悲しくなると、急に目から涙があふれだしてきた。



「リア様、大丈夫です。またすぐお帰りになります。」

「もっとぉパパとお話ししたかったのにぃ~!」



ついに大声で泣きだすと、メイサはそっと私を抱きしめてくれた。



「あらリア、起きたのね。」



私の泣き声を聞いて、ママが部屋に入ってきた。メイサはママに私をそっと手渡して、「旦那様がいなくて、悲しくなってしまったようです」と言った。



「寂しいね。」



ママは私を抱きしめて、自分も寂しそうな声を出して言った。私がママの胸の中で「うんうん」とうなずくと、ママは優しく頭を撫でてくれた。



「でもパパは私たちのためにお仕事頑張ってくれてるのよ。」

「いやだぁ~~!」



貧乏にはなりたくない。今のブルジョワとしての人生を、捨てたくはない。

でもパパにはもっと帰ってきて、私を天使みたいに甘やかしてほしい。



――――そのためにはどうしたら…。



今まではこの世界での目標は、ただいい家に嫁ぐことだと、そう思っていた。だからあざとく天使として生きるための道を模索しようと思っていたけど、でもパパにこんなに会えないまま子供時代を終えるのは、すごく嫌だ。




――――そうだ、パパの仕事、もう少し楽にできないか考えよう。



楽して生きていこうと思っていたこの世界の私が、初めて何かしようと思えた瞬間だった。ちょうど毎日花を摘んだり泥団子を作ったりする生活に飽きていたころだ。



私はさっきの地図とか今のシステムを頭の中で思い出しながら、どうしたらパパの仕事の負担を減らせるのか、考えてみることにした。


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