第二章 陸路の整備を始めます!
三歳 まずは運送方法の改革
第1話 私、3歳になりました!
あれから3年の月日が過ぎた。
あ、もう3年?って思う方も多いかもしれませんが、それも転生ものの定め、でしょ?
「アリア~!そろそろお家に入りなさい!」
「え~ママ。まだ私お外で遊びた~い。」
元々"言語"というものを会得していた私は、他の子より早くペラペラと話すようになった。私からしたらしゃべれてすっきりしたー!って感じだったんだけど、周りからしたら"天才児"って見られるみたいで、しゃべるだけで周りの大人は褒めてくれた。気持ちいい。
王女に転生していないって分かってから、私はどこかでいつか特殊能力に目覚めるんではないかと、期待していた。
チートばりに強い魔法が使えるとか、身体能力が超絶高いとか…。転生したらそういうものに何か恵まれるって思ったんだけど、3歳現在、特に私に秀でた能力は見つからないし、何せこの世界の人たちは、魔法とかそういうものを使わない。
なんだよ。どうせなら魔法、使ってみたかったぜ。
「今日はダーメ。パパが帰ってくる日でしょ?」
「あ、そっか!パパ来るんだ!」
魔法を使えないこの世界の人々は、前の世界の人々と同じように普通に働いている。そして赤ちゃんの時に感じていた通り、やっぱりパパは2週間に1回しか帰ってこない。どうやらパパはあの世界で言う社長みたいな役割をしているらしいから忙しくてもしかたないのかもしれないけど、それにしても帰ってこなさすぎる。
ママが毎日大変じゃないか!
と心の中で言ってはいるけど…。この3年でなんと信じられないことに、私はパパが大好きになっていた。
パパは相変わらずちょっと臭いけど、それは仕事を必死でしているせいで、シャワーを浴びるとその匂いはマシになる。それでもっていつもパパは優しい。いつもお土産を買ってきてくれるし、なにより私を天使扱いしてくれる。
っていうか言っておくが、この世界での私は自分でもいうのも気が引けるけど、マジで天使だ。もしパパに似てしまっていたらどうしようと鏡を見るまでは心配していたけど、その心配をよそに、外見はママにそっくりだった。
前世で言えばまるで海外のお人形さんみたいに整ったつくりをしていて、最初は自分でも見惚れてしまった。
特殊能力は備わらなかったみたいだけど、まあこの容姿ならいいところにお嫁に行って幸せな人生を送れるだろうと思うと、それだけで私は満足だった。
「パパ、早く帰ってこないかな~!」
「アリア様は本当に旦那様がお好きですね。」
「うん!パパだぁいすき。」
メイサも赤ちゃんの時とは変わらず、私にすごく優しくしてくれる。
私より年は絶対に年下だけど、この世界で言ったらメイサはお姉ちゃんみたいな存在だ。
「メイサのことも大好きだよ!」
「私もです、アリア様。」
メイサはそう言ってにっこり笑った。相変わらず鮮やかなピンク色をした髪の毛がすごくキレイで、何度見たって見とれてしまうほどだ。
家の前に広がっているお花畑で遊んでいた私たちは、ママに呼ばれるがまま手をつないで家の方に向かった。すると足元にピンクのキレイな花が咲いているのが目に入った。
「このお花、メイサの髪の毛みたい。」
花を指さしてそう言うと、メイサはお花よりキレイな笑顔でにっこり笑った。私はその花を摘んで、メイサに手渡した。
「はい、これはメイサのお花。」
「私にですか?ありがとうございます。」
小さなピンクの花を見つめて、メイサは嬉しそうな顔をした。その顔がすごくかわいくて、早くお嫁に出してあげなきゃなと、おせっかいおばさん親戚みたいなことを考えた。
でもそれもしょうがない。だって私、今年32ですから。
「パパにもお花あげよ~っと!」
「ふふ。旦那様も喜ばれます。」
前世の皆さん、私、しっかり幼女やってます。
そういえばあれから3年たったけど、お母さんは私の死を受け入れられただろうか。せめて死んでからお母さんが立ち直るまで見守らせてくれればよかったのにと今更あの天使に悪態をつきながら、いくつかパパのためのお花を摘んで、家の中に入った。
「アリア~帰ったよ~!」
「パパァ!」
それからしばらくして、パパが帰ってきた。私は玄関でしゃがんで両手を広げてくれているパパの胸に、勢いよく飛び込んだ。
「ほら、お土産だよ。」
「あなた、あんまり甘やかさないでくださいね。」
「いいじゃないか、たまにしか会えないんだ。」
パパはそう言って、私に大きなクマのぬいぐるみをくれた。
「私もね、パパにプレゼントかあるの!」
「アリアからパパに?」
「うんっ!」
私はそう言って、さっき摘んだ花をパパに手渡した。
パパは見るからに嬉しそうな顔になって、「ありがとう」と言って私を強く抱きしめた。
「痛いよ、パパ。」
「ごめんごめん、つい。」
大きなクマのぬいぐるみを見た時は、正直アクセサリーがよかったなと3歳児らしからぬことを考えた。でも花をあげただけでこれだけ喜んでくれるパパを見ていたら、なんでもいいやって思えるようになった。
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