第11話 どうやらパパは商人のようです
話はどんどん進みますが、私、目が見えるようになりました!
「アリア、おはよう。」
ママおはよう!
あまりはっきり見えていない時は、ママが緑の肌とかしてたら受け入れられるかなって思ったけど、ママは色白の肌をしていて、瞳の色はキレイなエメラルドグリーン、髪の色はキレイな金髪をしていた。
唯一耳はとがっているけど、そんなことは気にならないくらい、ママはすごくキレイだ。
「アリア様、おはようございます。」
そしてメイサはママとは違って、ピンクのきれいな髪色をしている。日本人だった時みたいに私が黒髪だとしたら、多分髪の毛の色を抜いてもあんなキレイな色は入らない。
うらやましいな~と思いながら髪の毛に手を伸ばすと、メイサはそんな私を見てにっこり笑った。
「最近目を合わせて笑って下さるようになりましたね。本当に、まるで天使みたいです。」
「そうね。メイサのことも大好きみたい。」
いつも優しく笑ってくれる二人が、私は本当に大好きだ。今日も私は赤ちゃんとして、ただ寝て乳を飲んで笑うだけのイージーモードな生活を楽しむのだ。
「旦那様、遅いですね。」
「そうね、何かトラブルかしら。」
どうやら今日は、パパが帰ってくる日らしい。
日付の感覚がまだあまりつかめていないから定かではないけど、パパは2週間に1度くらいしか家にいない気がする。もしかして私が寝ている頃に帰ってるのかもしれないけど、しばらく会わないと顔も忘れてしまいそうになる。
――――何の仕事を、してるんだろう。
子供が生まれたばかりなのに仕事ばっかりで全然家にいない父親って、前の世界にいたとしたら典型的なダメ男だ。っていうかブラック企業すぎてついていけない。
分析してみるところこの世界では女の人がバリバリ働きに行くっていう文化もあまりなさそうだ。
いや、もしかしてうちが裕福なだけなのか?まだ外の世界を見れていなくてよくわからないけど、私がこの世界でそんなブラック企業に勤めることだってないんだろうってことは分かる。だから色々と法律の整っていない世界で働かなければいけないパパには、元社会人として同情はする。
「きゃあ~。」
「アリア様もパパに早く会いたいですね。」
―――いや、別に。
メイサにかまってほしくて声を出したのに、勘違いしてメイサは笑った。
あ~早くしゃべりたい。最近ゴロゴロしてるのにもさすがに飽きてきたわ。
駄々でもこねないとやっていけないと思ってそろそろ泣きだそうとすると、玄関の扉が開くのが見えた。
「ごめん!遅くなった…。」
パパはひどく疲れた様子で家に入ってきた。
ちなみにパパはとても色黒で、髪の毛も真っ黒。屈強な男って感じの見た目で、悔しいけど某ダンスグループにいそうなタイプのイケメンだ。
この世界の年齢の概念もよくわからないけど、ママは多分あっちの世界での私より年下な気がする。パパは見た目で言うと30代半ばって感じだ。
鍛えていそうな体をしているのにこれだけ疲れているっていう事は、よっぽど力を使う仕事のなのかな。
赤ちゃんらしくもなく詳しい分析をしていると、パパが疲れた顔を崩して笑って、私の方を見た。
「アリア、いい子にしてたか。」
当たり前でしょ、もう私アラサーですからね。
パパはそう言って笑って、私のおでこにキスをした。いつもならかえってすぐ私を抱いてくれるんだけど、今日は本当に疲れているみたいで、そのままドカンとダイニングテーブルに腰を下ろした。
「お食事にされますか?」
「ああ、頼む。お腹が減って死にそうだ。」
パパはメイサにそう言って、着ていた服のボタンを2つ外した。
パパが仕事に行くときの服は、シャツの上に緑色の生地に金色の刺繍を施したベストとジャケットを着ている。よく考えれば力仕事をするにしてはきっちりし過ぎているな、と思った。
「何かトラブルでもあったの?」
「ああ。テムライムからの船が難破したみたいで、商品が届かなくて。」
「大変じゃない!大丈夫だったの?」
「商品は全部だめになりそうだ。まだ色々とやることが残ってるからこの後シャワーを浴びてすぐに戻るよ。」
あら。この世界にも船で輸出入するシステムがあるのね。
会話からすると、多分パパが商人っていう事は分かった。テムライムってのが多分近くにある都市?または国?とかで、そこから何かを買おうとしているらしい。
――――商人のくせに、なんであんなに真っ黒なのよ。
まるで船乗りみたいに焼け焦げたパパは、さっとご飯を食べてシャワーを浴びた後、本当にすぐに仕事へと行ってしまった。
やっぱり超ブラック企業だ。お察し。
何かしてあげたいと思わないこともないけど、今の私に出来るのは寝る事と食べる事だけだ。パパが帰ってきたときに元気な顔を見せて癒してあげるためにも、そのあとすぐに目を閉じて、一旦寝ることにした。
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