インターミッション
変な二人だった。
わたしは学校から帰っても外に出ず、家で本ばかり読んでいた。
児童向けの本や漫画など色々な本を読んでいた。
その中の世界に浸って空想することが好きだった。
主人公になりきり、頭の中で様々なシーンを思い描くだけで楽しかった。
友達がいなくても寂しくなかった。
母は気にしていたようで、何かにつけて外で遊んだらと言ってきた。
友達がいないのを不憫に思ったのだろう。
わたしには煩わしいだけだった。
だから、漫画を片手にすぐ近所にある公園へ行った。
そこであの変な女の子と男の子を見つけたのだ。
二人の背丈は同じで、最初は友達同士に見えた。
しかし、観察すると二人の関係は友達ではなかった。
女の子がブランコに乗ると男の子が背中を押していた。
女の子が鉄棒に掴まるとすぐ横で男の子が手助けしていた。
女の子が木に登ろうとした時は、男の子が必死に止めていた。
まるでお姫様と従者のようだった。
わたしは公園に行くと、自然に二人のことを目で追うようになっていた。
ある日、二人が棒切れを持って、切り合いの真似事をしていた。
切りつけるのは必ず女の子で、男の子は逃げ惑うばかりだった。
いつの間にか、男の子がわたしの近くまで逃げてきた。
「このリットウェルから逃げるのかっ!ウルガスラよっ!」
女の子が叫んだ言葉に、わたしは驚いた。
わたしが好きな漫画の主人公のセリフそのものだった。
主人公である男装の麗人リットウェルが敵役のウルガスラを追い詰めるシーンだ。
「おろか者めっ!貴様をワナにハメたのだっ!」
わたしは思わず足元にあった枝を拾って叫んでいた。
二人はきょとんとしてわたしを見ていた。
わたしも無意識に出た自分の言動に気付き、頭の中が真っ白になった。
「それ。あたしも持ってる。」
わたしは拾った枝を右手に持ち、漫画を左手に持っていた。
女の子はわたしの左手の漫画を指差していた。
「好きなの?」
「あ、う、うん。す、好きで全巻持ってる。」
突然の事と、普段から他人と喋り慣れていないせいで、言葉が滑らかに出なかった。
「ふ~ん。」
女の子が観察するようにわたしを見ていた。
真っ直ぐな視線で、わたしの内面が晒されそうな気がして怖かった。
「ねえ。ねえ。一緒に遊ぼ。」
男の子がわたしの側に来て、人懐っこい笑顔で誘ってきた。
「ダメッ!お兄ちゃんが他の子と遊ぶのはダメ。」
その言葉で、わたしは二人が兄妹だと知った。
「少しだけだって。もう棒で叩かれるの嫌だしさ。」
「じゃ、少しだけだよ。何するの?」
女の子が渋々同意した。
「鬼ごっこ。逃げろおおおおおおおおおっ!!」
男の子がわたしの腕を掴んでいきなり駆け出した。
わたしは驚いて、掴まれた右手の枝を落とした。
左手の漫画は強く握って離さなかった。
「こらあっ!待てええええええっ!!」
走って逃げる二人を見て、女の子も駆け出した。
「にげるなああああああああああ!!」
女の子が、手に持ったままの棒を振り回しながら迫って来た。
目が吊り上がり、鬼のお面のような表情で叫んでいた。
「いやあああああああああああ!!」
男の子を見ると本気で怯えていた。
「あはははは。」
わたしはその顔が可笑しくて知らないうちに笑っていた。
それから、わたしは二人と一緒に遊ぶようになった。
男の子がわたしを見つけるとすぐに誘ってきたからだ。
女の子のほうは、最初嫌がっていたけど次第に打ち解けて仲良くなった。
二人はわたしをウルガと呼んだ。
少年のように見えるわたしが、ウルガスラに似ていたからだろう。
わたしは、友達と遊ぶことが楽しいものだということを初めて知った。
そして、その楽しい思い出はたった二か月で終わった。
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