第9話OJT

デンター組織の奴隷を辞めて数週間、

ゴウミは普通に仕事を熟しながら読み書きの勉強をしていた。

そんな間にも様々な人と出会った。

まずは経済大臣の貴族はいつもハル姫と話していた。

そして、メル姫とゴウミにとってのお金の使い方を教えてくれる先生でもあった。

オイエアの文字や常識や歴史の勉強などを教えて貰うが負担を減らす為に、そしてデンター組織を調べる時間を作る為に分けていると聞いた。

国の名はジャーティス王国であり、豊かで経済も発達しており平和な国、貧民もいない、技術も発展している他の国とも良好関係を保っている等の素晴らしい国であることが分かった。

他にも調理された食事を持って行く際に会った調理長のバンダルさん、彼は誇りを持って食事を作っており残される事を凄く嫌う人でメル姫の偏食も許さないぐらい厳しい人であった。

しかし、食べれたときはちゃんと褒めるといった優しい面も持っていた。

そして、庭の手入れの際に会った庭師のサダールさんとも世間話をしたりと普通なら満足する生活を送っていたのであった。

そして、皆元奴隷であったゴウミに対しても皆優しく接してくれておりデンター組織で暮らした日々を考えれば嘘だと思えるぐらい平和な生活であった。

しかし、それこそがゴウミにとってとても満足に至らない理由であった。

そんな満足のいかない日々を過ごしている日常でその日は庭師のサダールさんの手伝いをしていた時だった。

麦わら帽子を被って少し伸びた髭を弄りながらも木々の形をチェックしていた。

そして、時計を見て


「ゴウミ君、少し休憩しよう」


とサダールがゴウミに言った。

ゴウミはサダールの方を見て


「はい」


汗を拭って一旦作業を中断した。

そして、立ったままのゴウミにサダールは


「ほら」


と言って飲み物を渡した。

とても冷えた水がグラスには入っていた。

サダールは微笑みながら


「さっきヘルミー様が渡してくださったよ、切りの良いところで休みを取らすようにとね、君は言わないと休憩を取ろうとしないって聞いてるしね」


と飲み物を飲みながら言った。

ゴウミは


「そうですかね? そんなつもりはなかったんですけど? それに仕事も早く覚えて役に立たないといけないですし」


と不思議そうに言った。

ゴウミにとって48時間働いて休憩5分という時間が当たり前であった。

転生前も転生後のデンター組織も同じような労働時間であった。

ザダールは


「大丈夫だよ、ゆっくり仕事を覚えていけばいいんだ……」


と優しく言ってくれたが


(ああ、そこは馬車馬のように働けでお願いしたかった……)


と少し困った顔で


「ありがとうございます」


と苦笑しながら答える。

そして、飲み物を飲みながらゴウミは椅子に座らず立ったまま一息ついた。

その方がゴウミにとって良い状態であった。

そんなゴウミを見てザダールは困ったように微笑んだ。

ゴウミが飲み物を飲んでいるとザダールは


「仕事に慣れたかい?」


と他愛ない質問をしてきた。

ゴウミは汗を垂らしながら


「え? ああはい、慣れましたよ……」

(精神的にはきつくないのが辛いけど……)


と思いながらも取り敢えず在り来たりな答えを伝えた。

するとザダールは


「それは良かった……覚えも早いし助かるよ……でも無理することないぞ、仕事が出来なかったからって君を捨てるようなことはしないから……こうやったちゃんと休憩だって取るんだぞ? せっかく助けて貰ったんだ……自分の命は大切にするんだ……君はこの世でたった1人しかいないんだから自分を大切にするんだよ?」


と心配そうに言った。

それを聞いてゴウミは


(この仕事で無理ならどの仕事も出来ないぞって昔上司が言ってたなあ……後お前の代わりはいくらでもいるんだ! とか何の為に生きているんだ! 仕事で役に立たなければお前は何の為に生きているんだ! 命より仕事だろ! エトセトラエトセトラ……今思いだすだけで興奮する!)


と昔の上司の教育に対して懐かしさを感じて、イッてしまいそうだった。

しかし、すぐに興奮を冷まして


「無理してませんよ……」


と出来るだけポーカーフェイスを作って答えた。

ザダールは笑いながら困ったように


「それは良かったよ……そろそろ座ったら?」


と一向に座ろうとしないゴウミに座る様に指示するとやっと椅子に座った。

ドMであるゴウミは命令には逆らわないという性癖を持っていた為、座ったのであって疲れたから座った訳ではなかった。

そして、サダールは


「この国ではあまり犯罪が起こらないんだ……今いる女の騎士達が見回りや犯罪が起こらないように頑張っているからね……安心して暮らせる」


と飲み物を飲んで言った。

ゴウミは


「そういえば男の騎士もいるって聞きましたけど……今どうしてるんですか?」


と不思議そうに聞くとサダールは


「今は王と女王と共に他の国に交渉に行ってる……だから今は彼女らがこの国の治安とデンター組織の対処をしているんだ」


と落ち着いたように説明した。

そして


「皆奴等と戦っている……デンター組織に囚われた者達も助けようと奮闘しているよ」

「そうなんですか」


と頷きながらゴウミは話を聞き続ける。


「君はまだ奴等から洗脳を受けていて苦しいだろうがきっと何とかしなる……それに王や女王もこの国を愛してそしてデンター組織を討ち滅ぼそうと他の国と協定を結んでいる……他の国からもあの組織は危険視されている程だ……あそこでしか過ごしていなかった君にはあまり分かりにくいかもしれないが……」


とザダールの説明続ける。


「奴等を滅ぼすのはそう簡単にはいかないだろう……だが皆頑張っている……きっと君の呪いを解いて助けてくれる……だから安心しなさい」


と宥めるように言った。

ゴウミは


「……えっと……ありがとうございます……頑張ります」


と頭を下げてお礼を言った。

ザダールは時計を見て


「そろそろ時間だ、仕事に戻ろう」


と言って立ち上がった。

そして、ゴウミはザダールの話を聞いて思った。


(何が言いたいんだろうか……この人は……でも良いことも聞いた!  僕って……呪われていたんだあ……知らなかった……全然知らなかった……誰から恨まれていたのか知らないけど……ありがとう! 全然覚えないけど恨んでくれてありがとう! 何か……興奮する!!)


と心の底からいつの間にか呪っていた人に対して感謝した。

ゴウミは呪われているという不安に興奮を覚えた。

ドールエムーリズの事であるとは全く思っていなかった。

しかし、


(でも平和なのかあ……ああ……それって僕にとって良い環境ではないんだがなあ……)


という不満も考えていた。


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その後、ゴウミは仕事を終えて、オイエアの授業を受ける。

オイエアは感心しながら


「凄いですね……読み書きをこんな短期間で仕事を熟しながらマスターするとは……」


とかなり驚いていた。

それを聞いてゴウミは


「昔のOJTが役に立ちました」


と答えた。

それを聞いてメル姫は


「おーじぇーてーとは?」


と聞きなれない単語に不思議そうに質問した。

ゴウミはメル姫の方に目線を向けて


「OJTって言うのは仕事を実践しながら覚えていく手法の事だよ」


とメル姫に説明した。

それを聞いてオイエアもメル姫も


((確かに……奴隷もある意味では仕事をしながら覚えさせるのだろうけど……))


と悲しそうに考えた。

そもそもゴウミはもともとの会社でそのように教育された。

しかも、覚えることは高校生で全く学ばなかったプログラミング言語でしかも普通の言葉とは明らかに違う難解な物であった。

しかし、そのおかげでこの世界の言葉を覚えるだけの記憶力と要領の良さが通用したのであった。

ゴウミはそんなことも関わらず昔の事を思い出していた。


(ああ、確か僕も最初は知らなくて上司に怒られたっけ? 新入社の時に……)


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これはゴウミが二郎だった転生前の話


小さなオフィスに数人のスーツを着た社員が並べられて髭の生えた男性が


「ええっと……今日から4人入ったな……俺が上司だ!! じゃあさっさと仕事を始めろ!」


と上司は4人の新入社員に言い放った。

それを聞いて1人の新入社員は


「あの!! けん「質問があるなら手え上げろおおおお!! そんな事も分かんねえのかあ!!」


と間髪入れず上司はその社員に怒涛を入れる。

ビクッと驚きながらもその社員は


「はい! 私の名前は山田(やまだ)聡(さとし)です!! えっと「てめえの名前はどうだっていいんだよ!! さっさと質問しろ!!」


と再び怒鳴った。

ビクビクとしながら山田は


「えっとおお……その……研修はないのでしょうか……」


と怯えながら質問した。

すると上司は冷たい目で


「はああ……あのさ? お前さ? どういう教育受けたの?」


と本気で呆れたような目で見た。

山田はその目に心に冷たい何かが忍び込んだような気分になった。

二郎はその冷たい目線に


(良いな……山田君……僕も研修の事聞けば良かった……)


と羨ましがった。

山田は怯えながら


「あのお……何かまずい事を……」


と気まずそうに確認すると

すると上司は下賤な者を見る目で


「あのさ、君本当に分からないの? はあ……これだからゆとりは……普通仕事って言うのはOJTが基本だろ? 分かる? 分かりまちゅうううかあああああ!」


と煽る様に山田の頭をポンポン掌で叩きながら言った。

山田は青ざめながら


「へ……OJT」


と涙目になりながら震える。

上司は冷たい目を続けたまま


「OJTも分からんのか……学がないなあ……親はどんな教育を……そうか!  お前の親はお前に教育を施していないんだな! そうかそうか! だから頭が未だに赤ちゃんのままなのかあ! 可哀そうでちゅねえええ、最近でいう虐待親かなあ! 全く教育放棄された奴が何で内なんかに来ちゃったのかなあ? お前赤ちゃんからやり直したらどうだ? 今度は糞親に当たらないようにな!!」


と言って肩を叩いて哀れむように言った。

そして、


「ほらほら! お前等も突っ立ってないで仕事仕事! OJTぐらいわかるよな! 仕事は熟して覚えろ! こんな名前に恥があるような奴とは違うだろ!」


と今度は山田の名前をディスりながら他の新入社員に言い放った。

二郎以外の2人は何か言いたそうだったが酷いことを言われたくないという思いが強く文句を言えずに仕事に取り掛かった。

上司は見下すように山田を見て


「さてと、OJTすら分からなかった教養のない山田君、君今日はもう何もしなくていいよ、邪魔だから……ここでばぶーばぶー泣いて突っ立っていたらどうでちゅかああ?」


と鼻で嗤いながら上司も仕事に取り掛かる。

山田は目の生気を失いながらそのまま突っ立ったままであった。

そんな彼を見て二郎は


(ああ! 良いな! あんなに言われて!! 僕もやはり今からでもOJTを知らないと言おうかな!!)


と悩んでいると


「何をしている! 早く仕事しろ屑が!」

「アヘエエ!! ひゃい!」


と言って二郎は興奮しながらも仕事に取り掛かった。

皆が仕事に取り掛かっている間も山田は動けないでその場で突っ立ったまま。

昼食の時間ですら動くことすら出来ていなかった。

ただただその場で突っ立ったまま時が過ぎていく。

山田の時間だけが完全に止まったようであった。

そんな山田に誰も声を掛けることが出来なかった。

二郎はただただ


(あああ! いいな! 僕もああなりたい!!)


と羨ましがってはいたが声は掛けなかった。

二郎は余韻に浸りたいのかもと考えてそっとしてあげるという二郎なりの気づかいであった。

そして、その日は残業で新入社員全員泊りであった。

皆途中から山田を見ていなかった。

それだけ仕事が忙しくてそんな暇が無くなったのであった。

そして、残業も5時間を過ぎた時だった。


「あああ! あ! 良いよな! そこで突っ立ってるだけの奴は! てかさ! 目障りなんだけど! 帰れよ! 恥!」


先程の上司が山田の方を見て言った。

他の皆は冷汗を掻きながら騒然とした。

すると上司は


「何してる! さっさと仕事しろ!!」


という言葉と共に仕事は再開された。

そして、仕事が終わった頃周りを見ると山田はいなかった。


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ゴウミは思い出して


(そういえばあの後、山田君足を滑らせて屋上から転落したって上司が言ってたんだっけエ? 災難だったなあ……)


と懐かしそうに思った。

メル姫は


「どうしましたか? ゴウミさん?」


と顔を覗き込むように聞くと


「? ああ、大丈夫ですよ、少し昔の事を思い出して」


と笑いながら言うとやはり2人は悲しそうな顔をする。

するとメル姫は切り替えたように


「それにしてもそのおーじぇてぃーがあるにしてもちょっと嫉妬してしまいます、私の方が先に勉強をしてたのにもう完全に追い付かれちゃいました」


と照れたように言った。

それを聞いてゴウミは笑顔で


「それは僕自身がすでに姫より年齢が上だからですよ、それに文字も知らないのが多かっただけで見ない期会がなかったわけではありません、何となくで覚えていってそこから文字と言葉とを関連付けして覚えていっただけです、きっとメル姫もすぐに覚えれますよ、それにまだ姫は6歳じゃないですか?」


と慰めるように励ました。

メル姫は


「ありがとうございます、頑張ります……」


と頬を赤らめた。

するとオイエアは笑顔になりながら


「そろそろハル姫に報告するか……」


とボソっと言った。

ゴウミは


「どうしました?」


と不思議そうに聞くとオイエアは慌てて


「何でもないよ! さ! 勉強を続けよう!」


と言って文字の勉強を続けた。

そして、その日オイエアは


「ハル姫様、お話宜しいでしょうか?」


とお辞儀をして玉座に来ていた。

ハル姫は


「オイエア教授、どうかしましたか?」


と優しそうに聞いた。

するとオイエアは


「実はゴウミがもうそろそろ文字を完全にマスター出来そうであることを伝えに来ました」


とゴウミの今の状態を伝えた。

それを聞いてハル姫は


「え! そんなに早くですか! 仕事もしながらですよね!」


と驚きながら聞いた。

ハル姫自身文字を覚えるのにもう少し時間が掛かると予想していたのであったが、それを覆す速度の理解力を持っていることや仕事をしながら覚えるという事に感心していた。

オイエアは


「はい、かなり勉強面に関しても仕事に関しても優秀です、このまま彼を執事見習いだけで終えてしまうのはもったいないかと思いました」


とゴウミの将来を考えてハル姫に進言した。

それを聞いてヘルミーはムッとして


「執事の仕事も立派な物ですよ」


と言い返してしまう。

オイエアは慌てて


「すいません、そういう事でなくただ彼にも何かしたい事をさせた方がいいのではと思いまして」


とさすがに言い方が不味かったと思い謝罪する。

それを聞いてヘルミーは


「確かにそうですね……執事の仕事を与えたのは良いですけど……それは結局彼がしたい事かと言えばただそれしかなかったからそれに縋っただけの事、彼にだって将来があります……執事の仕事がしたいなら良いのですけどそれ以外にも選択肢を与える必要があるという事ですか?」


とオイエアを見ながらヘルミーは質問する。

オイエアは


「はい、その通りです……彼が執事の仕事を本当にしたいならそれでもいいのですが勉強して他の仕事をしたいと思うならそれも叶えてあげたいと思いました」


と自分の思いを伝えた。

それを聞いてハル姫は


「確かに……私は彼に仕事を与えて生きていく術だけしか与えていませんでした……彼に自分の将来の選択肢を与えることをしていませんでした……情けないです」


と自分の考えの浅さを反省していた。

それを聞いてオイエアは


「いえ! 我々もそのことに思い着いていなかったので! ですので今から彼の将来の為の提案を考えたことを伝えたかっただけです!」


とハル姫を落ち込ませないように慌てて伝えた。

それを聞いてヘルミーは


「ふむ、学園に通わせる……そういう提案の事で良いですか?」


と聞くとオイエアは


「はい、私はメル姫様の教育係で礼儀作法や文字や簡単な計算などぐらいしか教えれません、それにデンター組織の事も調べたいのでそう考えると私の教育では不十分かと思いまして、学園では魔法の事や錬金術や医術に商売に着いて学ぶことが出来ます! そうすれば彼の未来も広がると感じました」


と必要だと感じたことを伝えた。

ヘルミーも


「確かに私も彼を学園に通わせるのには賛成です……彼は休日になっても特に何もすることがありません……一度外には出ていましたが特に買い物をするわけでも誰かと遊ぶこともありません……きっと彼は休日に何をすればいいか分からないこともあるのでしょう……それっきり外に出ず部屋でボーっとする日々しか過ごしていません……」


それを聞いてハル姫は


「確かに……いくら休日を与えたとしても自分のしたい事を分からないままでは休日の意味がありません……無為に時間を潰してしまうだけです……それに彼は友達の作り方も分からないのでしょう……奴隷としての生活が長かったせいで私達が出来ることが分からないのかもしれません」


とゴウミ自身の自由を有効に活用出来るようにしたいと本気で考えた。

するとハル姫は


「もう一つ気になることがあります、彼が学園に行くのはもちろん賛成したいのですが……肝心の精神的な部分はどうですか? ドールエムーリズの呪いがある分彼自身にも負担があるのでは?」


と冷汗を掻きながら不安そうに質問した。

それに対してヘルミーは


「大丈夫です、最近彼自身自傷行為をすることもなく妄言や虚言を吐くこともなく過ごしております、おそらくドールエムーリズについて話さなければ問題はないかと」


と現状のゴウミについて話す。

それを聞いてハル姫は


「そうですか……良かった……」


と安堵の声を漏らし胸を撫で下ろす。

ヘルミーは


「資金の方は彼自身が執事見習いとしての給料を使えば大丈夫でしょう」


と学校の手続きの為の資金を提案した。

ハル姫は


「それはこちらが出してあげることはダメなのでしょうか?」


と提案するとヘルミーは厳しい表情になり


「残念ながらダメです……デンター組織から保護したとはいえ執事見習いとして働くことでこの城での生活が認められています……もしその仕事が出来なければ城から出た生活になっていたでしょうね……実際城の資金は国民の税です……それを元奴隷であった子に使うという事は他の奴隷の者達にも与えないといけなくなり収集が付きません、だからこそ学校の教育費は彼自身が稼いだお金を使えば税金を使ったのではなく彼自身の正当なお金として扱えるのです」


とお金の問題が起こる事を危惧した危険性を伝える。

それを聞いてハル姫もさすがに仕方なさそうに


「そう……でしたね……分かりました……ではそれでお願いします」


と言うとヘルミーは


「いえ、まずは彼の意思も聞かないといけないでしょう……もし彼自身学園に行く事を拒めば無理強いすることになります……もしかしたら間を置けば気が変わるかもしれませんが自身が行きたいと思わないと彼にとって学園は苦痛になってしまうかもしれません、なのでまずは彼自身にも話をするべきかと、それに編入試験の準備もしないと……」


とゴウミの意見を聞いての話し合いをすることを提案する。

オイエアもハル姫も


「それでいいでしょうね」

「分かりました、すぐに彼を呼べますか?」


と賛成し、ゴウミの時間が空いているかを確認した。

ヘルミーはお辞儀をしながら


「一応今は休憩時間になってはいますが……どうでしょう……ちゃんと休憩してるか分からないので……取り敢えず探してみます」


と言ってゴウミを探しに王室を出た。

そして、数分後


「連れてきました、やはり仕事していました」


と言って箒を持ったゴウミを連れてきた。


「すみません、なんか休憩して良いのか分からなくて」


と笑いながら正直に言った。

するとハル姫は


「この時間になったらちゃんと休憩してくださいね、休憩時間は12時から13時までです」


と呆れながら説明した。

するとオイエアは


「姫、話が逸れてます」


と伝えてハル姫は


「そうでした! ゴウミ、貴方に少し提案があるんですが?」


と言った。

それを聞いてゴウミは


「えっと……何でしょうか?」


と少し高揚しながら聞いた。


(ああ、もしかしてここから追い出すので一文無しで頑張れって言うのかな? 俺何したのかな? ああこの理不尽の可能性興奮する!)


と考えながら答えを待っていた。

するとハル姫は


「貴方には学園へと通って貰おうと考えているんですが……どうでしょうか?」

と質問された。

ゴウミは


(学園って……教育機関? ああ、この世界にもあるんだ……まあ親は学校での学びより実践、つまりはOJTの教育法で俺を育てたからな……その後すぐにデンター組織で働いたから文字とかも覚える必要もなく働けてたからな……)


と考えているとオイエアは

「どうですか? ゴウミ? それとも学園という言葉が分からないとかでしょうか?」


と心配そうに確認を取った。

それを聞いてゴウミは


「あ、それは大丈夫です、何となく知っています、子供の教育機関みたいな場所ですか?」


と聞くとヘルミーは安心したように


「はいそうです」


ゴウミが学園とはどんな場所か知っていたことに安心した。


(学園かあ……通うべきか……しかしここで働いているだけだと自分の思う通りの環境にならないままの可能性の方が高い……それにこの世界の知らないことはまだまだあるだろう……魔法も技術力も医術力もこの国の深い部分まで何もかもを知ってるわけではない……それはつまりそれらを学び上手く利用すれば自分にとって素晴らしい環境を作り出すことが出来るかもしれない……)


と可能性を模索する。

ハル姫はそんなゴウミの様子を見ながら


「ゴウミ君はこの城の中でしか行動が見受けられませんのでおそらくお友達を作ることも困難だと思います、そう考えると学校では様々な方たちと出会えると思いますのでお勧めしたいのですが……いかがでしょうか?」


と不安そうに説得をした。

それを聞いてゴウミは


(クラスメイト……いきなり入ってきた転校生、クラスの輪を乱してしまう存在、そしていじめによる僕へのご褒美、再び楽しい青春の生活……)


そのことを考えただけでゴウミはイッてしまいそうであった。

そして


「分かりました! イキます!」


と嬉しそうに答えた。

それを聞いてハル姫は


「良かったわ! それでは今後の手続きと話をしましょう! まずは編入試験がありますのでそちらを後日受けて頂く事になりますが出来ますね?」


とハル姫は信頼を示すようにゴウミに問いかけた。


「はい!」


ゴウミは自信満々に返事をしてそれを見たハル姫は安心した表情になる。

ゴウミは様々な意味で楽しみであった。

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