第6話帰ってきた執事
王室にて執事服を着た者がハル姫の前に跪いていた。
「ヘルミー、お久しぶりですね、戻ってきてもらって申し訳ありません」
「いえ、ハルベルリラベルラ姫、お気になさらず、ハルベルリラベルラ姫もお元気そうでで何よりです」
とヘルミーと呼ばれた長い黒髪を一つに纏めた片眼鏡の凛々しい顔の執事が言った。
「さっそくだけど、執事見習いを呼びますね」
「はい、ベイリーがご迷惑をかけたようで申し訳ありません、責任を持ってゴウミという者を教育致します」
とヘルミーは深々と頭を下げながら言った。
「ゴウミ、入ってきなさい」
「ハ!!」
そう言ってゴウミは王室へ入ってきた。
「お呼びでしょうか? ハルベルリラベルラ姫様!」
「その呼び方じゃなくても、ハル姫でいいのよ」
するとゴウミは
「人の名を略すなど! そんな失礼なことできません!!」
と社会人的常識を持ち出した。
「ほほう、なかなかいい人材ではないですか」
笑いながら言った。
「私はもうちょっと柔らかくてもいいと思うのだけど」
苦笑しながらハル姫は漏らすとするとヘルミーは
「まあいいではないですか、そういう性格ならば無理矢理変えさせるのもダメですよ」
と笑いながらハル姫に伝えると
「そっそうですか? それならいいですけど……」
戸惑いながら納得した。
そして、ハル姫はヘルミーに
「とにかく、ゴウミのことを頼みましたよ」
「御意!」
そしてヘルミーとゴウミは王室を出た。
「ではゴウミ君、君はデンター組織で奴隷として扱われていたようだから多少のことは我慢できるかね?」
「もっと激しくてもいいと思いますが、ベイリーさんみたいに」
それを聞いてヘルミーは不思議そうに
「君は変わっているようだね」
と苦笑しながら言った。
ゴウミは
(さて、この御方はどんな厳しい指導をしてくれるのだろうか? 色々と楽しみの人だ!)
と淡い期待を抱いていた。
しかし、
「まずゴウミ殿は書類を捨ててしまったとのことですが出来るだけそのような物は破棄しないように注意してください、床に落ちていると捨ててしまうかもしれませんが決して捨てないようにしてくださいね」
「そっそうなんですね……前は少しでも汚れていると綺麗にしろと怒られていましたので」
とゴウミは以前の仕事での常識を伝えた。
ゴウミの前世での職場では上司が潔癖症で少しでも床に何かが落ちているとそれを捨てるように指示していたのであった、例え重要書類でも破棄するように命じてその後、上の者から注意されれば破棄した人物に責任を押し付けるというやり方がゴウミの頭の中でインプットされてしまっていた。
ゴウミの言葉を聞いてヘルミーは
「貴方は元奴隷でしたね……そういう理不尽を言われても仕方なかったのでしょう、しかしここではそのような無理難題は言いません、なので安心して仕事をしてください」
と優しい表情でゴウミに伝えた。
ゴウミは
(奴隷時代ではなく転生前の事なんだけど……まあいいか)
と取り敢えずは納得した。
4時間後
「よし、仕事の今日はこれぐらいでいいでしょう、出来るだけ早く仕事を覚えて頂きたいのですが、あなたはまだ教養も礼儀も知らないので、取り敢えずは教養と礼儀に専念してください、そして余った時間に仕事を教えていきます、別に焦って仕事をしなければいけないわけじゃないので、私もここに帰ってきていますので、その間は私がここの執事として働く予定になっておりますので、焦らずしっかりと覚えていきましょう」
「……はい」
「どうしましたか? もう疲れましたか?」
「いえ、そんなことはないんですが……」
ゴウミは思った。
(転生前の会社よりしんどくない、どうして? 執事ってもっと拷問のような仕事内容で1日あれば覚えられるだろうと無茶ぶりをされて覚えないといけないと思っていたのに……デンター組織の方がやっぱり……)
と自分のドMである欲求が発散出来ない事について不満に思った。
「まあ、執事は残念ながらちょっとそこらですぐになれるものではありません、私も父の仕事を10年間見て12歳で今の姫様の執事になれましたし、まあほとんどが実践方式の執事見習いで働いていましたけど、まあ一人前の執事として認められるのはかなり時間がかかるってことです、なのであなたが執事見習いを卒業するのにも相当の時間がかかりますよ」
と苦笑しながら言った。
ゴウミは
(つまりこういうことか、執事はお前みたいな豚がすぐになれるような安い商売ではない身の程を知れ! ゴミ豚が! と捉えていいのかな?)
と何とか無理矢理自分好みの言葉に解釈して少し興奮した。
それを見てヘルミーは
「何でこの子は頬を赤らめているのか?」
と疑問に思った。
だが、ヘルミーは
「まああなたには期待しているので頑張ってくださいね」
と肩を叩いて励ました。
ゴウミは
(期待という名の暴力!! 最高じゃねえか!!)
と転換し、再び興奮した
。
「喜んでもらえて何よりです」
と言ってヘルミーは立ち去った。
「さてと、頑張るか! 女王様ではなく姫か……その姫の為にも!! 鞭! 鞭をきっとくれるはず! ……多分」
と無駄な期待を胸にゴウミはやる気を出した。
「取り敢えず今日はもう終わりだしお風呂でのぼせてもお風呂に入り続けると言う自分なりの拷問を受けて快感を感じて、癒されるか」
そう言ってお風呂場に向かった。
脱衣所の籠に服を置こうと歩いていると、近くに服が置いていた。
執事服が置いてあったのでゴウミは
「ああ、ヘルミー先輩か」
と何の気なしに思った
そしてゴウミは
(男同士背中でも流すか、俺の国の裸の付き合いも大切だからな)
そして服を脱いでゴウミはお風呂に入った。
すると
「え……」
大きな浴槽に使っていたヘルミーがいたのだが、
しかし、様子が明らかに変だった。
「? どうかしま……ああ、そういうことですか」
とゴウミはヘルミーを見て気づいた。
明らかに女の体であった。
「すみません、女性の無防備な体を見てしまって、これからは気を付けます」
それを聞いてヘルミーは顔を真っ赤にしながら止まっていた。
そしてゴウミはお風呂を出た。
「浴場は女風呂と男風呂に別れていないからな~気を付けよ」
そして服を着て出ようとすると
「待ってくれ!!」
とヘルミーに呼び止められた。
「? 何ですか?」
ゴウミはヘルミーを見て聞いた。
「いや、その! えっと! どういえばいいんでしょうか! その!」
ヘルミーはテンパっていた。
「ああ、あなたが女性であることは言いませんよ」
「いや、そんなあっさりと受け入れられても! 少しは驚けよ!!」
「でもな~」
ゴウミは前世でそんなハプニングはアニメやドラマやラノベで見慣れていた。
そんなためゴウミは
(実際にあるんだな~こんなこと)
ぐらいにしか思わなかった。
そのため、ヘルミー自身が逆に驚く羽目になっていた。
「ちょっと話そうか!」
「その前に服を着てください」
ゴウミは呆れるように言った。
「え、あっ……ああああ……」
ようやく気付いたのか、ヘルミーは顔を真っ赤にしながら
「嫌あああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
と悲鳴を上げながらその場にあった桶を投げつけた。
ドス!!
そのままゴウミの顔面に直撃して鈍い音が鳴った。
「アヘエエエエエ!!」
高揚しながらゴウミは鼻血を出しながら倒れ、そのまま気を失った。
そして、ヘルミーは我に返り
「すっすみません!! 大丈夫ですか!!」
と言いながらゴウミに駆け寄った。
そして、
「なぜ、本当に大丈夫ですか? え? 何その表情は……私の裸を見たからか?」
とアへ顔になっているゴウミを見て戸惑った。
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5分後
そしてゴウミは気が付いた。
「うん? 何だろうか?」
するとゴウミはヘルミーに膝枕をして貰っていた。
「あ……申し訳ありません、どうやら気を失っていたみたいですね」
「謝る必要はない、謝るのは私の方だ……」
そう言ってヘルミーは申し訳なさそうに
「本当にすまない! つい投げてしまって!」
と頭を深々と下げて謝罪した。
「いえ、別に構いませんよ」
「そうか……優しいんだな、君は」
ヘルミーは微笑みながら言った。
(気持ち良かったし……)
ゴウミはそんなことを考えているとは知らずに
「見られたからにはちゃんとしないとな……」
ヘルミーは少し悲しそうに言った。
(まさか! 証拠隠滅のために俺を殺すのか! 俺なら大丈夫だぜ!! なんてったって最後に死ぬ際もすごく良かったんだ! 今の俺なら死亡プレイだって良くなるさ!!)
と死んだ時の事を思い出しながら高揚した。
「あ……あの、いちいち顔を赤くしないでくれないか……恥ずかしいぞ」
「あり……いえ、すみません」
ゴウミはご褒美に対する気持ちを裸の事だと勘違いされたと理解し、すぐに落ち着かせて顔を元の状態に戻す。
「えっとだな、私が女なのに男のフリをして執事をやっていることは誰にも言わないんだっけ?」
「はい、別にいいんじゃないですか? 良くあることでは?」
(俺の世界では一度流行っていたしな)
と転生前に見ていたエンターテイメントなどを思い出していた。
「そうなのか! いや、そんなことはない! お前は奴隷生活が長い為知らないだろうが女が執事になることは普通ありえないんだ!」
「でしょうね、女の人ならメイドでしょうし、男なら執事って聞いたことあるような無いようなだし……」
「何故あいまいなんだ君は……」
呆れながらヘルミーは言った。
(俺の国では一応は女の人も執事になれるみたいだけど、この国ではどうやらそのルールは適応されないようだ)
するとゴウミはあることに気づいた。
「そういえば、騎士はどうして女性ばかりなんですか? そのルールだと騎士もダメでは?」
するとヘルミーは
「男性の騎士もいるよ、しかし女性も戦えると言って今の騎士団が猛反したんだ、それを聞いて王様がではやってみろと言うことで誕生したのがあの騎士たちだ、王様曰く、兵力はたくさんあった方が良いと言うことだ、男性の騎士たちは女のくせにと今でも考えている者は少なからずいるそうだ」
それを聞いてゴウミは納得した。
(そうなんだあ、男尊女卑か、俺はむしろ逆がいいけどね、女尊男卑! 万歳!!)
そしてゴウミは
「それだと女の執事も認めても大丈夫なのでは?」
と質問すると
「執事は他の重要な仕事を任せることがあるため、女には任せられんと言うことで却下されている、戦いなら盾はたくさんあった方が良いからっていうのも女を卑下にしているような考えを持つ貴族いるからだろうな」
と少し呆れながら言った。
「成程、状況は理解できました、つまりあなたは今違法をしていると言うことですね」
「ああ、実際のところそうだな……」
「そんなに執事になりたかったんですか?」
ゴウミはヘルミーに何気なく質問した。
するとヘルミーは俯きながらも
「私の父は王様の執事だった、しかし母は私を産んだ後すぐに死んでしまった、そのため女である私を男として育てて男と偽って無理やり執事にされたんだ」
とヘルミーは少し遠い目をしながら言った。
ゴウミはそのことを聞いて
「辞めたいとは思わないんですか?」
と確認した。
「いや、今ではこの仕事を気に入っているからね、気を付けて風呂に入らないといけない部分はまだあるからみんなが入る前にさっさと済ますようにしているんだが、まさか君が入って来るとはね……」
ヘルミーは残念そうに言った。
「まあとにもかくにも取り敢えずはあなたが女の人であることは言うつもりはありませんよ、正直女性が働く世の中であったとしてもそれは別にいいんじゃねえかと思いますし、私は」
ゴウミが言うと
「ありがとう、とにかくここから出るよ、誰かが来たら厄介だし」
「では僕はお風呂に入ります」
すると、
「今日も疲れた~」
「騎士長! お背中流します」
とリブアイとベリダの声、そして他の女性兵士たちの声がした。
「おっと、今から女性の騎士たちが入るようだ、男の兵士たちが入る時になってしまうみたいだな、本当にすまない」
「いえいえ、お気になさらず」
するとヘルミーは
「ちなみに女性が入った後に男性が入るのでそこは注意するように」
と注意を受けた。
「そうだったんですか、知らずにすみません」
「いや、入って来たばっかりだし仕方ない」
そう言って2人は浴場から出た。
すると
「おう、2人共そんなに早く入っていたのか?」
「ヘルミーさんって、この時間に入っていたんですね、知りませんでした、普通は私たちの後ではないんですか?」
「ええ、そうなんですが兵士たちが入る時間も仕事ですし、その後だと遅いので早めに入るようにしているんですよ」
「そうだったんですか、知りませんでした」
するとリブアイは
「? なあ、ゴウミよ、お前臭わないか?」
「はう!」
ゾクゾクゾク!
ゴウミは気遣いを言葉攻めとして捉えた。
「いや、気に障ったのならすまない、別に悪い意味では!」
「いえ、今ゴウミ君も入ろうとしたのですが、騎士長の声がしたのでまた後で入ってもらうことになったのですよ」
とヘルミーが言うと
「そうだったか……すまないな」
と申し訳なさそうにする。
それを聞いてゴウミは
「いや別に構いませんよ……」
(臭いと言われて少し嬉しかったし!)
と考えながら高揚するとベリダは
「ダメですよ、いくら子供でも女性の裸を想像するのは、セクハラよ?」
と注意を受ける。
ゴウミはその言葉を聞いてびっくりしたように
「申し訳ございませんでした」
(この世界にもセクハラってあるんだ……)
と思いながらも頭を深々と下げて謝罪した。
リブアイは焦ってゴウミに
「そこまで責任を感じなくてもいい! 君は子供だしそこまで気にしていないぞ!」
とゴウミを見ながら慰める。
ゴウミは
「いえ、考えてはいないのですがやはり不快に思われたと感じたので謝罪は必要かと愚考します」
とあくまで自分の立場は下の様な意見を4人の前で伝える。
それを聞いてリブアイは困ったように
「全くお前は……取り敢えず私達はお風呂を使うがご我々が上がり次第ゴウミに風呂の順番を譲ろう」
と申し訳なさそうに言った。
それを聞いてゴウミは
「うーん……分かりまいた、よろしくお願いします」
と言ってリブアイの意見を尊重した。
理由は
(さすがに僕みたいなドMは自分から悪意を持ってご褒美をもらわないようにしないと心労が溜まりかねない)
との理由でった。
そして、リブアイは
「では、お先に入ってくる」
と言って笑顔のまま浴場へと入っていった。
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