第3話報告

広く綺麗なカーペットが敷かれている一つの部屋。

大きなお城の王室にてリブアイは跪いていた。

そして、王座に座っている1人の女性がいた。

その女性は黄金の髪を揺らして黄金の瞳でリブアイを見つめていた。

そして、綺麗なドレスの胸の部分を華奢な手で当てながら


「そうですか、助けることが出来たのは少年一人ですか……」


と悔しそうに涙を流した。

そして、心配そうな表情で


「それで、その少年は無事なんですか?」


とリブアイに確認に確認すると


「はい、姫様! 怪我は少なかったのですが、栄養も失調気味で危ない状態でしたが、ナイジー医術師により一命を取り留めました、今は意識も戻っております……」


それを聞いて姫と呼ばれた若い女性はホッとしたように


「良かった、本当に良かったです……」


と安心したように胸を撫で下ろした。


「ただ、彼には少し心の問題がありまして……」


そう思っていた矢先凄く言いにくそうにリブアイは続ける。


「! それはどういうことですか!」


それを聞いた瞬間姫は再び険しい顔になった。


「あの者は奴隷生活が長かったのか、あそこが自分の居場所だと思っているようなのです、なので目が覚めたとき彼は自分の居場所を潰されたと我々に怒りを見せたのです……」

「そ……そんな!」


姫は口に手を抑えた。

リブアイはさらに続けた。


「彼自身もまだ我々を受け付けていません、おそらくデンダ―組織の洗脳が原因かと……」

「あの噂は本当だったのですね……可哀そうに、なにも頼ることが出来ず、酷い環境を受け入れるしかなかったのですね……」


姫は再び涙を流しながら言った。


「なら、彼をこの城で預かりましょう!」


とふと思いついたように言った。

それを聞いてリブアイは不安そうに


「姫様! よろしいのですか! 危険もある可能性が……」


と慌てて静止したが姫は険しい表情で


「子供が酷い状態で放置などできません! それに例え孤児院へ預けたとしてもそんな状態の少年が他の子達に危害を加える可能性もあります、なればこそこの貴方達騎士が警護する城で預かった方が彼にとっても安全でしょう!」


とリブアイに対し真っ直ぐな目で訴えかける。

それを聞いて我に返ったのかリブアイは


「!! 申し訳ありません!」


リブアイはすぐに謝罪した。

しかし、姫は微笑みながら優しい声で


「いえいいの、あなたは私の身を案じて発言してくれたのでしょう、ありがとう」


とお礼を言った。

それを聞いてリブアイは顔を伏せながら


「お礼には及びません、それが我々の使命なのですから……しかし、この城でどうなさるつもりなのですか? 仕事を与えるのでしょうか?」


姫は質問に少し考えて答えた。


「そうね、執事見習いはどうかしら? ちょうど執事が自分の後継がいないと嘆いていたでしょう?」


それを聞いたリブアイは


「確かに、執事見習いなら我々の目も届きますし、それが一番でしょう! ありがとうございます! ハル姫様!」


ハル姫と呼ばれた女性は王座から立ち上がると


「いえ、その少年の為です、これぐらい大丈夫です、それよりその少年とは会えますか? 直接このことを少年に伝えたいのですが」


と真剣な表情でリブアイに聞いた。

それを聞いてリブアイは慌てて


「よっよろしいのですか! 何があるか分からないのでここに連れてきたほうが良いのでは! そうすれば守りもかたいかと!」

「その少年は弱っているのでしょう? まだ無理をさせるわけには行けません!」

「では体の状態が完全に回復してからではどうでしょうか!」


とハル姫を案じて提案をしたがすかさずハル姫は


「彼が不安になっているのなら、すぐに安心させるべきです!」


と胸に手を当てながら伝えた。

それを聞いてリブアイも納得したのか跪いて


「!! いえ、申し訳ありません! 警護はいつもより完璧にさせていただきます!」

「申し訳ありません、私のわがままを聞いてもらって……」

「そんな顔をしないでください、我々はあなたに連いていくと決めた者共です、どうかお気になさらず!」


ハル姫はそれを聞いて嬉しそうに


「本当に感謝します……これからもよろしくお願いします」


眩しい笑顔を向けた。


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そしてメリーの体が完全回復して、メリーの欲求不満のボルテージがさらに上がっていた。


「鞭打ち罵倒蔑み縛り亀甲縛り晒し何でもいい、僕に安息を……」


メリーは完全に気を落していた。

メリーにとって罵倒や拷問等の類は必要不可欠な環境であった。

他の者がどんなに嫌だとか悲しいだとか苦しいと思っていたとしてもメリーにとってはもはや酸素と言っても過言ではない。

そんな酸素のない環境下に無理矢理置かれている状態であった。

メリーを救った国の者達は悪気はなかったが、メリーにとってあまりにも残酷な状況であった。

このまま心労が溜まり続けるとメリーはおかしくなるだろう。

つまり、リブアイ達はメリーに対して余計なお世話をしてしまったのであった。

そんな事になる前にメリーは自分の環境を変える必要があった。


(早く自分にとって素晴らしい環境を見つけないと……でもどこに……)


と考えていると


トントントン


「入るぞ!」


ドアのノックと共に

ハル姫とリブアイとベリダと1人男性が入ってきた。

男性はチョビ髭で髪をオールバックにした執事服を着た男性であった。


「お加減はいかがですか?」


ハル姫はメリーに聞いた。

メリーは生気のない目でハル姫を見ながら


「ああ……はい……大丈夫です」


と機械的な受け答えをした。

今のメリーには作り笑顔も敬語もする余裕はなかった。

メリーにとって最高の環境を潰されたショックにより心労が重なり疲弊していたのであった。

それを聞いた男は険しい表情になり


「貴様! 姫になんて無礼な言葉づかい! 恥を知れ!!」

「アヘエエ」


ゾクゾクゾク!


と見下されながら言われた為、メリーはビクンビクンとしながら高揚した。


メリーの欲求不満のボルテージが少し下がった。


「お前の様な屑は! そもそもそこで寝る事自体あり得ないんだぞ!!」


見下ろしながら男は言った。

それを聞いてハル姫は男を睨みながら


「ベイリー!! 止めなさい! なんてことを言うのですか!」


とベイリーと呼ばれた男を叱りつける。


「しかし!」


とベイリーは反論しようとするがすかさずハル姫は


「彼は今不安な状態にあるのです! 少しは大目に見てあげてください!」


と逆にベイリーを注意した。


「!! くっ! 分かりました……」


ベイリーは不満そうに黙った。

それを聞いていたメリーは


(おいおい、なんてことをしてくれるんだ……せっかくの罵倒がちゃんと続かないじゃないか……)


と心の中で不満が渦巻いていた。

ハル姫はそんなことも知らずに優しい表情で、


「怖がらせてごめんなさいね、私はこの国の姫、ハルベルリラベルラ・メルメベリインと申します、長いのでハルとお呼びください、よろしくお願いしますね」


と微笑みながらハル姫は言った。

それを聞いてメリーは


(姫? つまりは女王様だと! つまりこういうことか!)


メリーの妄想

『オ―――――――――――――――ホホホホホホホ! この愚民ども! 私はハルベルリラベルラ・メルメベリイン女王! ハル女王と呼べと言ったのはほんの冗談よ! 人の名前を略すなんて、お前ら愚民に出来るような代物ではなくてよ! もし略そうものならキツイ処刑が待っているわよ! この汚らしい豚ども!!』


(こういうことか!)


とメリーは勝手な妄想で解釈した。


「あなたの名前を教えてもらえるかしら?」


そんな事を考えているとは知らずハル姫はメリーに名前を聞いた。


(ここは父親と母親にもらった名前か? 否! 豊臣秀吉だってこの名前を貰ってからはそれを名乗ってたんだ! 俺も日本人ならそれに従うんだ!)


ハル姫からの質問にそんなことを考えてメリーは自己紹介した。


「はい!! ハルベルリラベルラ・メルメベリイン女王様!! 僕の名前は53番です!」


と頭を下げながら自信満々に名乗った。

それを聞いてハル姫とリブアイとベリダは悲しそうな顔をした。

ベイリーは見下したようにメリーを見たいた。


「所詮は奴隷か、そんな見下された名前を人前で恥ずかしげもなく名乗れるとは、汚らわしいな」

「アヘエエエエエ!」


ゾクゾクゾクゾク!


(にゃ! にゃんにゃんだこの人は! この僕をこんにゃにしてどうしゅるしゅもりだ!)


と興奮しながら勃起した。


(ん?)


リブアイは布団が盛り上がったのをハル姫は不思議そうに見た。

しかし、暴言を吐いたベイリーにハル姫は


「ベイリー! どうしてそんな酷いことを言うのですか! この子は奴隷生活が長いのですから自分の名前を忘れてしまったかもしれないと言うのに!」


と怒鳴ると、ベイリーはビクンとして縮こまった。


(? 何かおかしい? 罵倒じゃないような気がする? どうしてしまったんだ! 女王様! 君の実力はそんなんじゃないだろ!)


とメリーは心の中で勝手な評価をした。


(同過去の女王様がSの女王様であるように!)


とメリーは必死に願った。

しかし、メリーの思いとは裏腹にハル姫は


「もう大丈夫です、あなたはもう……奴隷ではないのです、だから安心してください」


と涙を流しながらメリーの頭を撫でた。


(え、何これ、何で優しくする! 俺を罵れ! 罵倒しろ!! 痛めつけろ! お前はそれでも女王様か!!)


と怒りを露わにしていた。

それを見ていてベイリーは


「貴様! ハル姫を睨めつけやがって! 何から何まで無礼な奴だ! ハル姫様! この者は異常です! 即刻処刑を!」

「そんなことしません!」

「そうです! この子が知らない場所に連れて来られて警戒するのはしょうがないことなのですから!」

「まさか、お前、我々が命がけで見つけて助けた命を粗末にしたいと言うのか!」


ベイリーは3人に怒られた。

ベイリーがメリーに取っている態度は明らかに騎士やナンジーの行いを無駄にするようなものである。

それにも関わらずベイリーはイライラしながらメリーを睨み着ける。

メリーはハッとなり


(いかんいかん、この僕がなんてことを……僕みたいな豚が上級国民を睨み着けるなんて……落ち着いてせめて事務的な対応で、マニュアルの様な書かれたことをそのままするように……)


と心を落ち着けてメリーは


「ええっと……僕に何か用ですか?」


メリーは冷静に質問した。

それを聞いて


「すまない、少し失礼な振る舞いをしてしまった、私の名前はリブアイ・メイルーン、騎士長をしている者だ」

「私はベリダ・ルーティーン、副官をしている者です、でこの男の人が……」

「いい、自分で自己紹介する、ベイリー・ベントルンだ」


と言って自分の名前をそれぞれ名乗った。


「あなたは自分のことを53番と名乗っていたけど別の名前を付けましょう」

と優しく微笑みながらハル姫が提案するとメリーは慌てて

「いいえ、遠慮します」


と即答した。

せっかくの気に入った名前を捨てるのが惜しく感じたのであった。

それを聞いてベイリーはメリーを睨みつけながら


「貴様! ハル姫のご好意を拒む気か!」


と罵るとメリーは体中から高揚して


「アヘエエ」


ゾクゾクゾク


と甘美な声を上げた。


「ベイリー、一々怒らないで上げて、ごめんなさい、その名前はあまりいいものではないと思うの、だからとてもいい名前を付けたいのですけど、良ければさっきの名前とあまり変わらなさそうな名前にしますが」


気を使ってハル姫が言うとメリーは仕方なさそうに


「……はい、分かりました」

(くうううん、なんて理不尽、こんなプレイもまたいい)


と思いながら自分を納得させた。

そうしないと話が終わりそうになかったからであった。


「ではゴウミと言うお名前はどうでしょうか?」

(ゴウミ? ゴウミ、ゴミ? ゴミ!!)

「それでよろしくお願いします!!」


メリーはゴウミと言う名前に改名した。

ゴウミという名がゴミと言う名前に似ていることによって少し興奮出来たからであった。


「良かった! 喜んでもらえて!」


しかし、ゴウミは貧困な家庭でずっと働かされていた為、勉強不足だった。

ゴウミとはこの世界での意味では強き子になる様に願いを込めて名付ける意味を持っていたことを

そして、ハル姫は


「あなたはもう少ししたらこのお城で働いてもらおうと思うのだけれど、よろしいでしょうか?」

「お仕事はなんですか?」


ゴウミは質問した。


「あなたにはそこのベイリーのように執事になってもらおうと思うのだけど」

「!! この者に執事など無理です!」


ベイリーは決めつけた。


「ベイリー! 貴様さっきからその態度はどうかと思うぞ! なぜこの者に出来ないと決めつける!」


とリブアイは反論するとベイリーは


「それは! 所詮は奴隷ですからですよ!」


と睨みながら言った。


「アヘエエエ」

ビクンビクンビクン!


ゴウミはその瞳に愛を感じた。


「いい加減にしろ! 差別するなど人として恥だぞ!」


リブアイは睨みながらベイリーと喧嘩した。

その間、ゴウミは先程のベイリーの見下したような目を思い出して高揚していた。


「とにかく、執事見習いとしてこのお城で働いてみてください、もしよろしければですが」


と言ってハル姫は少し不安そうに言った。

それを聞いてハッとなったゴウミは


「構いませんよ」


文句なしの上司のいる職場で、ゴウミにとって断る理由がなかった。


(アヘエエ! これからこの素晴らしい先輩から色んな攻め……ではなくて、いろんなことを学ぶのか、楽しみだよハアハア!)


と興奮気味だった。

それを見てハル姫は


「良かった! やってくれるのですね! ありがとうございます!」

「チッ!」


ベイリーはいやそうな顔を露骨にゴウミに向けた。


(本当にこれから楽しみだな!!)


そして、ゴウミの体が治ってからということでひとまずはこの話は終わった。


「僕からしたら別に今日無理やり痛みを感じながら働かされるって方が、嬉しいんだけどね」


と欲望を漏らした。


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そして、数日後

ゴウミの体は異常な速さで完治した。


「チッ! もう少しかかれば俺からお前を追い出すことが出来たかもしれないというのに! まあいい! ちゃんと覚えろよこの間抜けが!!」

「はい! ベイリーさん!」


ペシイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!


するとベイリーはゴウミの頬を思いっきり叩きつけた。


「アへえ!!」


歓喜を漏らしながらゴウミはその場で頬を抑えながら倒れる。


「様を付けろ! このゴミ屑が!」

「ひゃひゃい! ベイリーしゃま!」


高揚しながら嬉しそうにゴウミは返事をした。

そして、ベイリーはここを1人で掃除しろと言ってどこかへ行ってしまった。

そこはあまり汚れてはいないがすごく広い部屋であった。


(さすがお城、ここまで広いとすぐ汚れるわけか、でもほとんど綺麗だからやることなさそうに見えて……は! もしかしてちゃんと掃除しないと女王様の愛の鞭を貰うのでは! しかし、ちゃんとせずにもらうのは僕のMのプライドが許さない! ならちゃんとお仕事をしたうえでお仕置きを貰わなければ!)


そして、ゴウミは必死になったその部屋を掃除した。

ふとゴウミは


「そういえば制限時間はないのだろうか! その方が体に鞭打って働かされると言う快感を覚えるのだが!」


と言う想像しながらてきぱきと掃除を進めた。


30分後


「ふう、何とか半分ってところか……うん、これは遅い! なんてノロマなんだ僕は! 普通もうとっくに終わってる頃だろうに! なんて僕は無能なんだ! 本当に最低だ! そんな僕には素晴らしいお仕置きが待っているに違いない! あっ! 違う! 恐ろしいお仕置きだった!」


ゴウミは嬉しそうに言い換えて掃除を続けた。

すると


「うわ!! 何だこれ!」


そこへリブアイが入ってきた。


「もっ申し訳ありません!! ここの掃除はまだ終わってなくて! こんな使えない僕をどうか罰してくだしゃい!!」


とついにゴウミ自信からの本音が出た。


「いや、こんなに綺麗になっているなんてと思っただけ……どうしたんだ! その頬は!!」

「え……あ!」


ゴウミは頬を見るとさっきベイリーに頂いた愛情であった。


「これは……B」

(あぶねええ!! もう少しでベイリーの愛の鞭だと言いかけた!)

「ぶつけました!!」


それを聞いたリブアイは


「おいおい、そそっかしいな、気を付けろよ、まだ傷が治ったばっかりなんだから無理はするなよ! 掃除をしっかりしすぎるのもいいが、自分の身も大事にしろよ!」


と注意を受けた。

ゴウミは少し違和感を感じたが


「ひゃい」


少し怒られたことを興奮した。


「うーん、まあいいか、取り敢えずここ前に掃除していたはずだし、あまり使わないのにもう汚れたのか? それともベイリーの奴適当に掃除したのか? ちょっと姫に報告していた方が良いかな……」

「いえ! 何か掃除した方が良いと勝手に思って勝手にやってしまいました! すみません!!」


とゴウミは自分が怒られるように誘導したが


「そうだったのか、まあお前はまだ来て日が浅い、ここはいいから別のところを掃除しなさい、ベイリーにはそれとなく言っておくから」

「はい!!」


ゴウミはベイリーさんが自分のために意味のないところを掃除させて自分の仕事の邪魔をさせないようにと邪険に扱ってくれたことをとても感謝した。

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