第5話 宣言

 王宮、大階段上──


 王宮中が戦争への準備、内政の管理に追われていた。

 そしてレヴェルトは街を見下ろせる王宮の大階段の上にいた。


 「余は少しこの世界を見て回る!フロース!爺!しばしの間任せるぞ!」


 レヴェルトは美しい街の夜景を見ながら、後ろに控えるフロースと世話役の爺ことサーヴェイに言う。

 そして天へと声を張り上げる。


 「起きよ。カエルム・ナーヴィス! 余と共にこの地をを見て回るぞ!」


 そう言うと、一瞬風が止んだようにも感じる。

 空が夜なのにも関わらず天上の雲は金色に光り輝いた。

 暗いこの世を今まさに明るく照らす神の光。

 国の民がその明るく照らされた空を見上げる。先程まで踊り、酒を飲んでいた者達もみな等しく空を見上げる。

 王の号令で呼ばれ、雲の切れ目からとてつもない輝きを放つ船が下りてきた。

 まるでこの世を見下ろす神々の船のようである。

 その船は天上から地上へゆっくりと降り立って行った。

 船の扉が開かれ、レヴェルト王が乗り込むと再び光を放ちながら、目に見えぬ速さで天へと飛び立った。

 

 その姿をフロースとサーヴェイは見送る。


 「いつ見ても眩しいのう」


 サーヴェイはその眩しさに目を背ける。

 そしてフロースはその姿を誇らしげに見守りながら言う。


 「我が王家に伝わる秘宝。

 ですがすべての機能を使えたのはレヴェルト様のみの船、カエルム・ナーヴィス。

 まさしくこの国を治める者にふさわしい船ですね」


 「うむ……でも儂には眩しくてかなわんわい」

 

 サーヴェイの老体にはその眩しさは堪えられないようで、小声で呟くのが聞こえる。そして行ってしまった船を目を輝かせながら見ているフロースに声をかける。


 「なにをボーっとしとるんじゃフロース様。 レヴェルト様に言いつけられたであろう」


 「ちょっ、 お待ちください!!」


 そう言ってフロースは走って行くが、使用人たちの前で転んでしまい、羞恥に顔を赤らめていた。



 高度二十キロメートル、天の船──


 「ここか」


 レヴェルトは空から地上を見下ろしていた。


 「どこも戦が絶えぬようであるか。やはり醜悪なものだな人間とは……」


 レヴェルトはどこか悲しそうな表情を浮かべる。

 

 とはいえ、人間とはいつの世も変わらぬものではあるか。

 だが、まだ救えぬことは無い。

 ならば、この悪しき世界をこの光の神王たる余が治め、世界を救うこととする!

 

 そうして王は両手を広げ高らかに述べた。


 「余はこの世に召喚された王である!

 故に余は選ぼう。この世を統一し統べることとし、新たな世界を作り上げよう!」


 レヴェルトは汚くとも青く美しい世界を眺める。


 ──この薄汚い世界でも神たる余が治めれば、幾らかはマシになろう。


 「来るがいい猛者たちよ!

 余にその力を見せ、余よりも世界を統べるにふさわしいか見せてみるがよい!」


 常勝の王は高らかに宣言を述べていた。

 まるでこれから来る戦いの火蓋を切って落とすように……

 

 数多の王、英雄たちの戦いの物語。

 突如異世界に降り立った最強の王によって、この戦火はますます燃え上る。

 

 ──まさしく世界を救う戦いである。

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