第33話 大地の王訪問
ジノラバ城壁外──
今日はついに大地の王グランドロスの訪問日。
ジノラバはこの国に来て初めての大きな外交に活気だっていた。
街には屋台が並び、音楽が鳴り響く。
民たちもそれぞれ豪華に着飾り、自らの王が外と同盟を結ぶことに歓喜していた。
遠くに見えるは赤色の旗。
大地を駆るその姿は獅子の如く。
二百はあろう兵士を引き連れていた。
その様子をレヴェルトは見つめる。
「来たか」
黒衣の衣装を金の鎧に召し換える。
フロースが迎えに来ると、王は自分と同盟を結ぶに値するかを見に行くことにした。
グランドロスは自領よりも豊潤な国に、感心していた。
グランドロス自体は強欲であるものの、それは戦いと王としての最果てを見たいという欲望だけであった。
だが、この国はその欲を薄れさせるほどに豊かで活気にあふれていた。
例えるならそう。
一度ガナルゼラシュ王の領地へ行ったが、あれに近いものを感じる場所であった。
金色でありながら邪魔にならない美しさ。
緑と水が豊かな土地。
まさしく理想とするべき国であった。
兵を率いてたのにも関わらず、それを物珍しそうに見るこの国の民たち。
どれもこの国にとっては宝なのであろう。
「ようこそいらっしゃいました。グランドロス殿」
美しい女だ。
地面にまで届きそうな紅桔梗色の髪、美しき金色の瞳の女。
娘達に匹敵する美しさだ。
その女は「こちらへ」と言ってグランドロスを王宮に案内する。
中は面白い壁画が描かれていた。
この国の成り立ちでも絵にしているのだろうか?
とても興味を引くものだった。
裏の湖もとても美しい。
特にグランドロスの娘が好きな花があり、連れてきてよかった思った。
「こちらの中に我が王がお待ちでございます」
重々しい金の扉。
王たるものが待つに相応しい。
ここまでの印象では増々気に入っている。
「扉を開け!」
重々しい扉が開かれる。
中から涼しい風が吹き抜ける。
豪華ながらも、どこか安心感のある空間であった。
左を見れば、この国。ジノラバの街並みを一望できる。
──ほう、これはこれは。素晴らしい。
グランドロスはここから見る街並みに見惚れ、胸が暖かくなる。
「ほう、貴様。余の国が気に入ったか」
目の前の階段上。
そこに座してこちらを見下ろす男。
この男が王なのであろう。
ここに居るどの人間よりも感じるものが違う。
まさに王の神威。
「ああ、真に良き国だ」
「そうか」
そう言って階段状の男が下りてくる。
金の鎧の音を響かせながら。
美しい。
先程ここへ案内した女とは血縁なのだろうか?
あの女を男にしたような容姿だ。とても似ている。
だが違うのは、男から感じる覇気であった。
金の瞳もこちらの考えることが手に取られているようにも見えるほどに威圧感があった。
この男とは本音で語り合う方がよさそうだ。
「余はレヴェルトルス・ガラールセンラー。ここの王である」
そう言ってこちらに手を差し伸べる。
「ガハハハ!余はウルドニアの王、グランドロスだ。会えて嬉しいぞ」
そう言って二人の王は固い握手をした。
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