第28話 話し合い
ジノラバの王宮──
レヴェルトはあちこちにに侵攻し、降伏した者共の処罰や処遇を伝え、その過程で、使える者などはどんどん登用していった。
今日も王の間には様々な腕を持った職人、建築士が招かれていた。
レヴェルトは招かれた者に笑顔で接していた。だが王の神威により、集まった者は恐ろしく、顔すら上げられないといった様子であった。
「貴様は学問に精通し、国では建築を任されたと聞いた」
「はい!城や神殿などの数々の建造を手がけました」
「ほう、ここではそのような人材が大変重宝される!
そなたの活躍!余に見せてみせよ!!」
王宮に通された者は、それに見合う仕事を与え、占領した領地を住みやすく、そして建築物を一新する大工事が進められていた。
一方逆らった貴族などは首をはね、鴉の餌となった。
残酷なようだが、こうすることにより、速やかに降伏すれば寛大な措置をとり、これまで以上の生活を約束するという逆らいずらい状況を作ったのだ。
「リサ!街に溜まった孤児は幾らか居ろう!」
「はい。まだ200名ほど」
リサ・レイはレヴェルトの傍らで、王とは何たるかを学んでいた。
だが、学ぶというより、王を補佐する役割みたいなものだ。
そう。
レヴェルトの妹として暮らしているが、ここでは家臣である。
「ではその者は孤児院を造ったらすぐにそこに住まわせる。
そこでもある程度の文字と学を教えよ!もちろん成長すれば兵として使う!」
「そうですねお兄様。あと数年すればこの国の人材不足は解消されるでしょう」
今この国は人材不足である。
レヴェルトのカエルムナーヴィスにより3国ほど切り取り、国を明け渡したのが1国。
切り取った3国はルクスプルヴィアの光により、跡形もなく消えたため、新しく国を築いている途中であったのだ。
そのためかなりの人手が必要であった。
「3国ともすべてお兄様の光の結界に入れることができるのですか?」
この国はレヴェルトのスキル、光の結界のもとに守られている。
これは歴代王には備わっておらず、このスキルを持っていたのはレヴェルトのみである。
通れるのは門のみであり、結界は星が壊れるほどの物が当たらなければ破れることは無く、壊すのはほとんど不可能であった。
そして防がれるのは攻撃的な意思を持った者やその者から放たれた魔法などであり、雨などは入るようになっている。
さらに気温の調節も可能でこの国はちょうどいいと思われる温度で日々守られていた。
「無論だ!我が敵であればまだしも!余に平伏するのであれば!それは余の民となろう。
であれば、余の恩恵に浸るのは必定!!」
そのようなことを話すと、フロースが王の間に入り聞いてくる。
「レヴェルト様!お目通り願いたいという方がここに」
「赦す!通すがいい!」
そうして、ジノラバはかつてないほどの活気を見せていた。
だが、次に入ってきたのはおそらく移民ではない人間だった。
その者はレヴェルトの前に平伏し、礼儀もよく出来ていた。
「お初にお目にかかります。
私の名はジェバードと申します。此度は移民としてではなく。とある方の使者として、参りました。」
「ほう、余を光の王知って貴様のその気概!
余を前にして平然と話せるその度胸!
誉めてやろう!
赦す!申すがいい!此度貴様を送ったものはどこのどいつか!!」
「はい。
私を使者として送ったのは、ここより西を治めるこの世界で2番目に大きな所領を持つ我が王。5帝王が一人にして、大地の王、グランドロスでございます。」
レヴェルトも聞いたことのある王であった。
普段であれば、自分が敵である王に会うなどごめんだが、不思議と興味がわいた。
「その王は余に何を求めて、貴様を送ったのだ?述べるがいい。」
「はい。我が王は一度この国を見てみたいとのことです。」
その言葉を聞くと、フロースがつかさず言う。
「なっ、不敬ですよ!王の至宝たる国を敵である王に見せよとおっしゃるとは!」
「良いのだフロース。
それで、その者は余に従う気はないのであろう?
ならばなぜ余が貴様の王を我が国に入れねばならぬ。
返答次第では我が光に焼かれて蒸散せしものとなろう!」
「まだお話はございます。
我々の王はぜひとも光の王たる貴殿と同盟を結びたいと考えておられます。」
「ほう。王であり!神であり!光たる余に!貴様の王と同盟者となることでこちらにどんな恩恵がある。答えよ!」
「貴殿の国は占領し破壊された国々の再建をしておられると伺いました。
ならば此方は職人などの労働者をご提供しましょう。
そして我が王はこの天下において、絶対的な力を有しております。
故に同盟の締結をしていただければ、全世界への抑止となり、レヴェルト様の邪魔をする者はおりません。」
「なるほどな。
では聞こう!貴様らの国は与えることが目的ではあるまい!
なんだ?赦す!申してみせよ!」
ジェバードは少し考えた後、何か思い立ったようだが口に出さず言う。
「えぇ、そうですね。
我が王は貴公の活躍を日々楽しみに聞いておられました。
故にただ会ってみたいだけだと言われましたが?」
「ならば言おう!
貴様らが余に与えるだけではこちらの顔が立たなかろう!
赦す!なんでもよい!貴様が思い立ったことを申してみせよ!」
思っていたことを見抜かれ、驚いたのか。顔色を変えなかったジェバードは会って初めて驚いた顔をした。
「なんと、気づいておられましたか。
数多の王と交渉してきましたが、貴公は他の王とは違うようですね。」
「当たり前だ!余は神であるぞ!
故にこそ!人間の考えることなど、余には手に取るようにわかる。」
「ならばお言葉に甘えて失礼します。この国は金が芳醇にあると見えますが?」
「ここの金は余の光輝によって生み出される。
故にこの余が生きている限り、我が国の金が尽きることは無い。」
「であれば、その金をこちらに売っていただきたい。私からの要求はそれだけです。」
「よかろう!
貴様の王に伝えるが良い!貴様が労働力を提供する間、値も安く売ってやろう!」
「なんとこれは一本取られましたな。
お心感謝申し上げます。我が王もお喜びになられるでしょう。」
「ふふはははは!
喜べ!貴様、余の興味を引いたぞ!
面白い!気に入った!余も貴様が心酔する王にに会ってみたくなったぞ!
急ぎその者に伝えよ!貴様の訪問を我が国は全身全霊を持ってもてなそうとな!」
こうして、この世界に転移して初めての王と王の会談が行われることになった。
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