第18話 勇者召喚

 異世界召喚。

 それは森羅万象の門番との契約により成される神秘。

 誰もが一度は勇者としての召喚を少しは夢見るだろう。だが、それは本当に正しいのか?

 

 憧れは時に間違いを生む。

 憧れの果てにあるものは何なのか?


 ──それはいずれ分かる。


                  ⚔


              別世界の王のDifferent world 金彩の戦火


                  ⚔

 

 日本、東京──

 

 俺は西住海斗。

 ごく普通の高校生だ。

 都立の高校に通う高校二年生。

 運動も成績だって上でもなく下でもない。つまりは普通だ。

 気になる女子は近所のクラスメイト。

 趣味は自作プラモとな〇うで小説を書いたりしている。

 何もかもが平凡。

 そんな僕の学校での出来事。 


 「おい見たか!異世界勇者冒険譚面白かったよな」


 「ああ、あの魔王の散り様がよかった」


 異世界召喚モノのラノベか。

 興味は多少なりともある。

 というか書いてるし……

 でも俺だけじゃなく誰だって憧れるだろう。

 自分がとてつもない力を手に入れて勇者となって活躍する。

 そして綺麗な人とたくさん恋をする。

 こんなこと普通は無いのになと考えるけど、小説や漫画で想像してしまう。

 

 「おい西住、お前はどう思う?」


 友達の裕也に呼び止められてビックリする。


 「えっ、何が?」


 「なんだ聞いてなかったのかよ。ほらこっちの王女様と女騎士、どっちが可愛い?」


 絵にあったのは可憐な王女様と気高そうだが見るからにツンデレだろうといった女騎士だった。


 「う~ん、女騎士かな?」


 「お前、ツンデレ派なの?」


 「いや、そうじゃなくて。俺はいつもは気高い人が頬を染めたりするギャップが好きなの」


 「ああ、なるほどね」


 嘘ではない。

 そういうギャップは好きだ。

 俺だってそんな人にモテたいし、勇者となって悪い奴を懲らしめたい。

 

 ──ああ、そんな時が来ればいいな。


 「おい!なんだこれ!!」


 裕也が突如大声を上げる。

 机に伏していた俺はどうしたのだと思い顔を上げた。


 「なっ!」


 眩しい。

 突如教室が光に包まれる。

 辛うじて見えた物に俺は驚いた。


 (あれは、魔法陣?)


 なんと教室に光り輝く魔法陣が描かれていた。

 そして突如開いた光の穴にみんな落ちていた。


 「うわぁぁぁぁ!」


 「助けてぇぇぇ!」


 クラスメイトの悲鳴が聞こえる。


 『──承認』


 ──ん?なんだ?この声……


 『──承認』


 ──また。


 『──生贄35名。これより勇者召喚を開始する』


 ──勇者召喚!なんだって!!


 この超常現象は勇者召喚なのか。


 「これで!俺の平凡な日常が!」


 歓喜。

 まさに歓喜の声であった。

 夢にまで見たその時がやってきた。

 青年は身を任せるがままに光の穴へと落ちて行く。


 

 連合本部、召喚の間──


 「ついに来ます」


 「やっとか」


 連合の幹部らしき男が門の前を囲む。


 「これでまた五帝王の台頭を阻むことが出来るぞ」


 「ああ、長きこの世界の主導をついに我らが」


 光は天へと伸びる。

 そして総勢35名の勇者を召喚した。


 「なんだ?ここは」


 一人の少年が問う。


 「ここは連合の本部。此度貴様らを召喚したのは我らだ。命令には強制で従ってもらう」


 一人のリーダーらしき男がそう言うと、女の高校生が反論する。


 「何ですって!そんなの勝手よ!!今すぐ帰して」


 他の者達だってそう言うが、連合の幹部たちは動じない。


 「我々と貴様らの間には門番との契約がある。それを破るということは消滅。すなわち死を意味する。それに貴様らを帰す方法など我々は知らん」


 それを聞き、他の者達がショックなのか静かになる。

 だが、その中でも歓喜に胸を高鳴らせるものが一人。


 ──やっぱり召喚だ。


 西住海斗その人だ。

 人智を超えた超常現象。その一部始終を目撃したのだ。

 今まで妄想に作り上げた世界がここに。


 そしてまた幹部の男が言う。


 「まずは貴様らが勇者としてどれ程の性能があるのか見定めてやろう」


 そうして移動しようとした時に、裕也が立ち上がる。


 「おい俺たちに何をさせようってんだ!」


 そう言うと男はゆっくりと振り返る。

 そしてクラスの全員を見て言った。


 「この世界で猛威を振るう五帝王を倒してもらう」


 「五帝王?」


 「この世界を侵略しようとする輩だ。是非とも貴様ら勇者にはその者共を倒してもらいたい」


 やった。

 海斗は心の中で歓喜する。


 (やっと、俺が活躍する時が来た)


 五帝王ていう奴らはおそらく魔王みたいな奴なんだろう。

 ならそんな奴らが人を困らせているのは許せない。


 そう思っている中、話が進められ、他のクラスメイトもこの世界で生き抜く術が欲しいので了承した。

 

 「手始めはここから近い魔術王だ。出陣は一か月後。貴様らにはもともと魔法が備わっているはずだ。」


 異世界でなくても現代人は魔法を有してはいる。

 だが、存在に気づいていないだけだ。門番は召喚に際して、その人間にきっかけを与える。そうして、魔法の概念がないところからの勇者でも魔法やスキルが使えるのだ。

 その情報により、他のクラスメイトも驚きと、喜びの声を上げる。


 ──俺が勇者になって、世界を救う。



 異世界召喚。

 それは疑問、生贄を使ってまで呼ばれることが正しいのか。

 何も知らない相手を敵と決めつけるのは正しいのか。


 ──それは、誰にもわからない。

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