第16話 数日後の噂
ゼラード王が死に、領地が落ちたことは3日で世界中に知れ渡っていた。
それは様々な国にいきわたり、世界中の号外に大きく出ている。
「おい!聞いたか!突然現れた王様に、ゼラード王の土地が奪われたんだとよ」
「そいつはほんとかよ!」
「ホントだって!滅んだ国は再建が進められ、なんか建物が建ってるって話だ!」
ゼラード王の土地はただの荒野へとなっていた。
元あった城の跡には、大きな墓が建てられたという。
その話は魔物の残党狩り部隊、冒険者の間でも広まった。
普段、魔王大規模掃討による、残党を狩るために民間の企業として作られ、冒険者と呼ばれる者達は社員として契約の元活動している。
その活動は広く、5帝王の国以外が傭兵としても依頼するほどであった。
「おい、その国はどこだって?」
「何だっけな?ジノラバっていう名前の国だとかなんとか……」
「ジノラバ?聞いたことないな」
「噂では召喚儀式により召喚された国らしい!」
インフェルノ帝国、城内──
ここでは炎帝ルジウス・インフェルノが特産である紅茶を飲みながら街で配られている記事を見ていた。
「ルジウス様!お呼びでしょうか」
入ってきたのは、ルーカス・アルベール。
炎帝四天王の一人である。
「おい、ルーカス。このジノラバなる地はどこにある?」
「どうでしょうか?噂では召喚により異世界から来た国というでしょうし、ですがあの欲の強いゼラードの近くとなれば砂漠地帯の方ではないかと!」
砂漠の国、これから大きくなるか?だがここよりは遠いであろう。ならば、ここまで這い上がるのを待ってやろう。
「ふっ、ならば余計な事はいらねぇな」
ルジウスは特に気になった様子もなく、自分の仕事へ移行した。
魔術王ガナルゼラシュの領地、ラルクの国の王宮内──
ここではガナルゼラシュ王が玉座に座りながら、あっちこっちへと行きかう兵たちに指示をしながら書類をじっと見つめていた。
「王!聞きましたか!王が嫌っていたゼラードが死にました!」
「戯け!そのようなことどうでもよい!
西の連合が戦支度を始めている。こんな忙しい時に迷惑な。一族もろとも焼き討ちにしてくれる!」
魔術王ガナルゼラシュは西の連合国に手を焼いていた。
なんとも勇者を召喚して、5帝王であるガナルゼラシュに反旗を翻したのである。
そんな忙しそうにしている中、ガナルゼラシュの妻セラスが出てきた。緑色の髪と瞳の美しい王妃である。
「リベル殿、陛下はお疲れの上、またあとでね」
「これはこれは奥方様。わかりました」
家臣たちの前でそう話した後、数分たって家臣が退出した。
するとセラス妃が急いでリベルのもとに駆け寄る。
「ねぇねぇ!さっきの話!陛下の前に私に教えて」
先程の王妃としての威厳は消え失せ、ただの恋する少女のような表情を浮かべ、リベルの元へ走り寄る。
「また陛下に自ら教えて差し上げたいんですな!」
そして先ほど畏まっていたリベルが友達のように反応する。それをガナルゼラシュはジト目で見ていた。
「だってガナ様忙しくて一緒にいてくれないんだもの!そういうときくらいは話のネタでほしいでしょう」
「夫婦仲もよろしいようで何よりです。わかり申した。このリベルにお任せください」
「おい! そこうるさいぞ!」
ガナルゼラシュがコソコソ話す二人に注意する。
だがつかさずセラスが反論する。
「だって陛下がかまってくれないんだもの!
注意するぐらいだったらもうちょっと妻に優しくてもいいんじゃない?」
「我はいつも優しいと思うが?」
「最近優しくありませーん!」
王妃が勢い良くツッコんで、魔術王は頭の裏をかいて困っていた。
大地の王グランドロスの領地、ウルドニア城内──
「なんと!軍事国家と名高いゼラードの国を一夜で攻め落としたと!!」
グランドロスは広場で兵たちと宴会をしている時にその話を聞いたようであった。
「はい!何しろ噂では召喚された転移国家ではないかと!」
「召喚された転移国家か……
いい!たとえ異世界から来た国であろうが余はこの目で見たくなったぞ!また遠征へ繰り出すか!」
王が盃を手に取りそう言うと、兵士たちが笑い出す。
「ははははは!」
「陛下お戯れを!」
「我らは疲れましたぞ!」
兵士たちが豪華絢爛な食事を食べながらそう言う。
「そうか?
そうだな!今はゆっくりと休むとしよう!
皆の者!此度の遠征!誠に大義であった!!今回の宴は存分に楽しむがよい!」
「うおおおおおおおお!」
「ガハハハハ!そうだ飲め飲め!ガハハハハ!」
聖なる王キャスト・ブリザードの領地、ブリザード国城内──
ここでは長いテーブルに王と7人の聖騎士が話し合っていた。
「最果ての地で新たな王が誕生したようです」
「まさか無敗で知られていたゼラード王が負けるとは……」
「その無敗は魔術王に破られただろ」
「気になるのはどうやって一夜で落としたかだ」
「経済的制裁を加えられてはいたが、そうそう落とせるような国ではあるまい」
「私には……何も……」
「元気を出せ!ギャリエル卿。こうやって戻ってこれたのだから、よかったではないか!」
2日前に炎帝との人質交換で返還されたギャリエル卿はここ最近ずっと落ち込んでいた。
人質に取られたことが、とても悔しかったようである。
「私が読みを間違えねば、勝っていたのに……」
「ギャリエル卿、王の前ですぞ!元気を出して」
キャスト王は目をつぶったままじっと皆の意見を聞いていたが、ようやくしゃべりだした。
「ここよりはまだ遠い地域だ。まだ考える必要はない」
「しかし!一夜で落とすほどの戦力です。
5帝王のだれかと手を組まれれば厄介なことに……」
「確かに大地の王ぐらいは接触しそうだな。
だが、あの方はそう言うお人だ。いずれは戦うことになるであろうが、まずは連合とのことを考えねば」
かくして、レヴェルトの初戦は圧倒的な力により圧勝であった。
5帝王にまで広がったこの噂はこれからの世界のあり方を大きく変えることになる。
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