第13話 和解
「炎槍ビースト!!」
「スターズ・オブ・エデン!!」
大きな爆発と土煙が舞うレグラスの丘──
ここでは聖剣の王キャスト・ブリザードと炎帝ルジウス・インフェルノの最大魔法がぶつかり合ったばかりであった。
そしてぶつかり合った土煙が晴れてきた中に人影が見えた。
「双方そこまで!!これ以上は無用であろう!」
現れたのは大地の王グランドロスであった。
その様を見て炎帝ルジウスが舌打ちをして怒鳴る。
「ふん!自慢の神獣、黒のユニコーンで相殺したか大地の王!
我らの戦を止めるのならば、死ぬ覚悟はできているのであろうな!」
それに聖剣の王キャストが続く。
「どういうつもりだ!大地の王!
これは私たちの戦いである。貴殿が手を出すことではあるまい」
「そもそも貴様でも相殺できるのはどちらか一方の攻撃であろう。
てことは貴様のほかにまだいるな!」
「あぁ……そうだな。姿が見えんなぁ」
大地の王がそう言うと、丘の上に光の粒が集まりその姿を現した。
「戯れはそこまでにしておけ」
透明だった姿が実体化して姿を見せたのは魔術王ガナルゼラシュだった。
相変わらず退屈そうな面持ちである。
「おいおい魔術王。
こんなところで後光隠蔽を使う必要があったか?王たるもの!堂々と姿を見せんか!」
後光隠蔽。
最果てまで行きついた王の素質を持つ者が使える侵入スキル。
それは人間では扱えない。
つまりこのスキルは人間をやめた者のみ扱える。
「ふん!戯けめ!この後光隠蔽は王たる者の素質がある者だけが使える。
故に、使うことが王たる者を象徴するのではないか」
突如現れた魔術王を見て、炎帝は嫌そうに言う。
「けっ!こんな所に魔術王とはな。こいつとは気が合わん……
はぁ、白けちまった。もういい!引き上げるぞお前ら!こいつらとはいずれ決着をつけることになろう」
「なっ!まて!」
先程まで話していたはずなのに帰ろうとする炎帝を見てキャストが止めようとする。それを炎帝ルジウスが軽く笑いながら振り返る。
「止めてもいいぞ!聖剣の王。だがな……
その時は、その首が地に落ちる覚悟をしておけ!」
炎帝がそう言うと、大地の王は残念そうに言う。
「そうか、いやー惜しいのう!貴様も我が配下へと誘いたかったんだが……」
「ふん!この世界で最も大きい領地を持つこの俺であるぞ。配下へと下るべきなのは貴様ではないか?」
「それはできないな!ガッハハハハハ!」
大地の王の豪快な笑い声が響く中、炎帝は聖剣の王に問う。
「聖剣の王!互いの人質は後日返すことにしようじゃねえか。
なぁに、悪いようにはしていない。安心しな」
このお人は戦いが好きではあるが、決して嘘はつかない。
ならばこの言葉も虚偽ではないだろう。
「相分かった。こちらも貴殿の申し出に応じよう」
それを聞くと、炎帝は兵を引き連れ自国へ帰還していった。
「これにて一見落着か」
思ったよりあっさりな幕切れに魔術王は不服そうだ。
「ふん!くだらん。こちらに牙を向くのであれば、容赦なく殺していたのだがな」
「まぁ、そう言うな魔術王。
我らとて、今は一人なのだ。だが彼らには優秀な部下たちがいる!その者を一気に相手をするのは骨が折れようて」
「かの有名な炎の四天王であろうが、聖剣の騎士たちであろうが、我が無限の本に内包されし魔杖の前では無力。それは貴様もだぞ。大地の王」
「ガハハハハ!
仮にも義理の父にそこまで言うとは、ますます気に入った!楽しみにしていよう!
先程も言ったが、余も貴様を叩き潰し!余の臣下に加えてやるから覚悟しておけ!」
魔術王と大地の王がそう言うと、魔術王は本から一本の杖を取り出し、その杖を地に刺した。
「おぉ!転移の杖か!また会おう魔術王!」
その言葉を黙って聞きながら魔術王はキャストに振り返り話しかける。
「ふん!ではな聖剣の王、貴様も生き残っていれば殺してやろう」
そう言うと、地に魔法陣が形成され、魔術王は消えていった。
残った大地の王グランドロスは後ろで黙って見守るキャストに向かって気軽に話しかけた。まるで余も貴様の参人を待っているぞと言わんばかりに……
「では!余も帰るとするかの!
無断で抜け出したのでな!どやされること間違いなしだわ!ガハハハハ!
では、また会おう!行けー我が愛馬!」
大地の王はそう言って荒野をを駆けて行った。
その様子から相変わらず豪快なお人だとキャストは思う。
「ラリュスト卿」
後ろの紫鎧の騎士に声をかける。
「はっ!」
「兵をたたんで帰還する」
「はっ!帰還する!陣を引けー!」
こうして五帝王の久しい戦いは突如来た魔術王と大地の王の参入で幕を閉じた。
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