第10話 炎槍 聖剣

 赤い槍の王。

 

 親の愛によって生まれた精霊の血を継ぐ者。

 お前は生きなければならない。

 父の分も、母の分も。

 祖母の炎槍を持つ君。


 私は知っている──


 お前の猛々しさを。

 お前の誇りを。

 さぁ、その身を焼き尽くしてでも進みなさい。

 

 いつか地獄へ行こうとも。

 私はお前を信じている。


 いつかその行いが報われることを。


 ──私は信じている。


                  ⚔


              別世界の王のDifferent world 金彩の戦火

                  

                  ⚔

 

 ジノラバから遥か北のレグラスの丘──

 

 鳥たちが飛んでいく戦火の中を。

 君は何を見た。

 私は何を見た。

 それは誰も知らない。


 「はあぁぁぁぁぁ!!」


 「うおぉぉぉぉぉ!!」


 この丘では剣がぶつかる音がなり響き、鎧を着た騎士たちが剣や槍を持ち、殺しあっていた。

 騎士たちの戦い。

 それぞれが祀り上げる王の意向に従い。

 君主が選んだ道に付き従う。


 一方は聖剣での斬撃や突きを繰り出す聖騎士。

 もう一方は剣よりも槍をメインとして戦っているようだった。


 「せやぁ!」


 数々の敵兵を切り伏せる一人の王がいた。

 その王が持つ聖剣は他の聖騎士たちと違い大きな輝きを放ち、白色の髪に緑の瞳、 青と銀を基調とした鎧をまとっていた。


 「五帝王が一人、炎槍使いの皇帝ルジウス・インフェルノ殿とお見受けする!

 我が名はキャスト・ブリザード!

 ブリザード国が王にして龍殺しの異名を持つ者である!

 手負いとはいえ、今朝の戦いでギャリエル卿を下し、捕虜にしたと聞いた!

 だがこちらも貴様の将軍を捕虜としている!今なら間に合う! こちらには話し合う余地があると!」


 聖剣の王キャストが敵兵達に向かって呼びかける。

 軍勢の中に赤き剛槍を振るう者が一人。

 赤い髪に赤い鎧、真っ赤な槍を持つ、スラッとした容姿をした、だが獣のような眼力を携えた青年、ルジウス帝が出てきたのである。

 

 ルジウス帝が槍を担ぎ、キャスト王を睨みつける。

 

 「そうかい。だが……」


 そう言うとその男は一瞬の内にキャスト王の前に移動し槍を大砲がごときスピードと威力で突き上げた。

 キャスト王はその槍を辛うじて受け止める。


 「久しぶりに会ったんだ!そんな寂しいこと言うんじゃねぇよ!こちとらまだ暴れ足りねぇ!!」


 そう言うと、ルジウス帝はその槍で、傍から見たら何本もあるように見えるくらいの突きを繰り出した。


 「ぐっ!」


 キャスト王がそれをよけ続ける。


 「話し合うつもりはないというのか!

自らの部下を見捨てると!!ルジウス殿!!」


 キャスト王が怒りを見せてそう問いかけると、ルジウス帝は目を見開き、笑みを浮かべながら問いに答える。


 「話し合いには応じてやろう!!

 だが五帝王でありながら!魔性の女に気を取られている貴様の腕が落ちてないかこの俺が見てやろう!!

 

 ルジウス帝は槍を横に一閃する。

 これからもっと早く打ち込むぞと言わんばかりに。


 「この俺を落胆させてくれるなよ!」


 そう言って炎帝は槍を突きまくる。

 キャスト王はそれを紙一重でよけながら自らも剣を打ち振るう。


 「せやぁ!」


 「うおっ!」


 キャスト王が後ろに回り、剣を振るう。

 だがそれをいとも簡単に避ける炎帝ルジウス。そして棒高跳びのようにして空中に飛んだ。


 「空を舞うか!!」


 「我が炎槍の一撃!受けるがよい聖剣の王!!」

 

 まだ両者とも本気ではない。

 だがどちらもその心意、その力量を確かめるために最大魔法攻撃をここに放つ。

 ルジウス帝が槍を投げる動作をすると、槍を中心に近くにいるものが顔を背け、離れようとするほどの温度を持った灼熱の炎が舞う。



──刺し穿て!



──抉り取れ! 



「炎槍ビースト!!」



槍は一気に放たれた。

渦状に炎が舞いながら、地面を抉り、その速度はマッハを超えていた。


「こうなれば相殺するしかない!!」


 キャスト王は聖剣を上に掲げた。

周りに光が満ち、聖剣へと集中していた。



 ──星は廻り、楽園の花は咲く



 ──この聖剣は世界を救うため


 

 「受けよ!スターズ・オブ・エデン!!」


 聖剣は大きな光となり振り下ろされた。

 光は迫りくる槍へと一直線で向かい、大きな衝撃波と爆発を引き起こして、周りを吹き飛ばした。

 そう。これが2年ぶりである、五帝王同士の戦いであった。

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