第9話 領内視察
レヴェルト王の領地、ジノラバ──
ここではレヴェルトが領地を歩いて見て回っていた。
歩くと人々がひれ伏していたが、レヴェルトが「仕事をしているが良い。赦す!」というと、お辞儀をして自らの仕事をこなしていた。
「ゼベよ!どうだ!貴様は何一つ不自由はないか!」
レヴェルトが小さい民家によると一人の男性が出てきた。
「これはこれは王様。
えぇ、王様のおかげで何一つ不自由はございません。
王家からの援助のおかげでこちらの新しい仕事も慣れてきたところでございます」
「それはよい!
貴様は隣国との貿易を行っていたからな!
この新しい土地では職をなくしていたであろうが、安心するがよい!!余が貴様の仕事を復興すると約束しよう!」
それを聞くと男は深々と平伏し、感謝を述べた。
「ありがとうございます。
これまでレヴェルト様にどれだけ救われたか……
有事の際はお呼びください!このゼベ!全身全霊を持ってお救いすると約束いたします!!」
「天から仰ぎ見るべき余に不可能なし!!
うむ!その時はぜひとも頼む!貴様の力、頼りにしているぞ!!」
そう言ってレヴェルトは男の元を去った。
男はその姿が見えなくなるまで深々と平伏していたという。
続いてレヴェルトは水が美しい公共の庭園に向かっていた。
そこで子供たちが伸び伸びと遊んでいた。
「あー!おうさまだ!」
「おうさまー!」
子供たちがレヴェルトの元に走ってくる。
「む!アルト!フィール!元気であったか!!」
まだレヴェルトの腰ほどしかない子供がレヴェルトに抱きついていた。
親はそれを見ると
「無礼でしょ!!」
と言って止めようといしたが、レヴェルトがそれを止める。
「よい!余は寛大である!!
子がたくましいのはこの国が豊かである証拠である!余は純粋にうれしく思うぞ!」
そう言って、レヴェルトは子供の頭をさすり言葉をかける。
「なにをして遊んでいたのだ。申してみるがいい!」
「うん!あのね、竹を編んで球を作って蹴って遊んでいたんだ!」
「これ俺が考えたんだよ!すげぇーでしょ!」
気さくに話す子供を見て、親はおろおろとしていたが大丈夫と言わんばかりにレヴェルトは親に一瞬目をやり子供に話しかける。
「うむ!貴様のその才能!よく磨くがよいぞ!
その才能はこれからの国を必ず支えるものとなろう!!」
「えへへへ!」
子供は嬉しそうに手を頭にやる。
レヴェルトはそれを見るとやはり心がうれしく思えた。
「そう言えば!
アルト!フィール!貴様らに弟ができたと聞いたぞ!
どうだ!兄弟とはいいものであろう!!」
レヴェルトはそう言うと、子供二人は「うん!」と嬉しそうに、そして元気に大きな声で返事をした。
「おうさま!実はね!今弟も来てるの!」
「お母さまが今背負ってるよ!」
「なんと!そこの者!近う寄れ!貴様が背負う子の瞳が見たい!」
そう言って子供の母親がより、後ろの子供をレヴェルトに抱かせる。
赤ん坊は母親以外に抱かれたのにも関わらず大人しく、そして嬉しそうにしていた。
「ふむ!この青色の瞳は実に、この国を見守る空が如し!実に良き男子となるであろう。
ふむ、気に入った!女!この者の名は決めているのか?赦す!述べるがいい」
レヴェルトの呼びかけに女はオドオドしながら近づく。
「いいえ、父親が亡くなってしまったため、名づけ親をお願いしようかとこれから私の親の元へ……」
この国は基本名づけは男につけてもらうのが習わしである。それを聞くとレヴェルトは赤ん坊の顔を見ながら言った。
「その必要はない!この赤子の名は余がつけてやろう!」
レヴェルトが腕を組みながらそう答えると、女はビックリして言う。
「そんなもったいなきことでございます。王に平民の名をつけていただくなど」
「別に良い!二度は言わぬ!余がこの者の名をつけたいと思ったのだ!ならばよいであろう!」
そう言うと親はありがたき幸せと深々とお辞儀をした。
「ふむ!ならば貴様には余の名を少しやろう!この光の王である余のな!
そうであるな……
ふむ!決めたぞ!貴様の名はレヴェルタスだ!どうだ!余の名をほとんどやったぞ!この名に恥じぬよう!これからの国をその空のような青い目のごとく照らし続けるがよい!!」
赤ん坊は嬉しそうに笑い、近くにいるアルトとフィールが「いいなー」と言いながら、レヴェルトの腕にいる赤ん坊を見ていた。
「アルト!フィール!お前たちは兄として!姉として!
貴様らの弟を導き!守ってやるがよい!!」
「うん!」
そうしてレヴェルトは赤ん坊を親に渡すと王宮に向かって歩いて行った。
「やっぱりおうさま優しいね!」
「ちょっと声が大きいけどね!」
「あなたたちもあのお方のような人になるんだよ」
そう言って親は子供を連れて帰路についた。
「ふむ、大方此度の召喚で損害を被った者はあらかた周ったか」
レヴェルトがそんなことを呟いていると、奥からフロースが走ってきた。
「レヴェルト様!ハァ、ハァ、急に消えられては困ります!」
「貴様が遅いのが悪い!
余の姉ならば、余に追いつけるほどになってみせよ!」
「レヴェルト様が走るのがいけないんですーーーー!!」
そう言ってフロースの大きな声が国中に響いたのであった。
ゼラード王の領地──
ここでは着々と戦の準備が進められていた。
兵も続々と駆け付けている。
「王!軍馬の手配も終わりました。あとは兵と食料が集まるのを待つばかりであります。」
馬上にいるゼラード王にシュバルツインが跪き申し上げる。
「敵に悟られるわけにはいかん!なんとしてでも確保せよ!
必要なら脅してでも集めよ!この戦に勝てばこの状況も解放されるのだ!安いもんであろう!」
「しかし……
これ以上の徴兵と税を課すのは……」
経済的制裁によって極貧の生活となっている中、領民は何とか生活を保っている感じである。
だが、そんな中でもっと課税を課すのはゼラード王にとっても賭けであった。
「よいから早くせい!二度は言わぬぞ!!」
「はっ!直ちに!」
そう言ってシュバルツインは部下に早馬を走らせ民へ伝えに行かせた。
「フフフフ、これで儂はついに5帝王に並ぶ時が来たぞ!待っておれ黄金の国。儂が今から迎えに行くぞい」
ゼラード王はなんとも気持ちの悪い笑顔でそうつぶやいた。
そしてその様子を可愛らしい幽霊を介して見ているのがひとり……
ユーレンである。
「うわっ!気持ちわる!」
ユーレンはその顔で吐き気が出てきた。
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