第8話 忌々しい記憶
魔術の王。
この世から一度生を消した王。
彼は誰もが見ても王の中の王であった。
邪魔する者は容赦なく殺す。
だが、自国の民にはその優しさを見せる。
私は知っている──
彼の優しさを。
彼の美しさを。
私は愛している──
貴方の虹色の瞳を。
貴方の綺麗な金色の髪を。
貴方のすべてを──
──愛している
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別世界の王のDfferent world 金彩の戦火
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ジノラバの国、城壁外──
金色に輝く国を歓喜の視線で見ている一団が居た。
「素晴らしい!!素晴らしいぞ!」
先程のゼラード王が両手を広げ歓喜のあまり大声で声を荒げていた。
「声をもう少し抑えてください。気づかれます」
シュバルツインがゼラード王にしゃがむよう言うが、ゼラードは立って大声で叫ぶ。
「シュバルツイン! 見よ!あの壮大な面持ちの王宮を!ここは砂漠地帯なのにも関わらず水や木々が豊かである!
何よりも儂が気に入ったのは今まで見たことのない金の山だ!王宮なんてすべて金ではないか!ほしい!ほしいぞ!!」
「確かにあの国を奪い取ることができれば今までの現状から抜け出せるかもしれませんが、あの堅城鉄壁な城は容易には落とせますまい」
「そこは貴様の統率力であろう!
我らは一度しか負けたことがないのだ。忌々しいあの戦しかな」
五年前、魔王掃討大戦──
この世界は五帝王と言う、この世の天下をとると言われている存在がいる。
聖騎士と聖剣を統べる聖なる王。
第16代皇帝にしてすべてを焼き尽くす槍を持つ炎帝。
大地を駆け巡り、数多の国を攻め滅ぼした大地王。
万を超える魔杖をかき集め、自らの収集品とした魔術王。
そして数多の悪魔を主従の関係に置いた魔王。
だが、その王たち以外はそれといった力を持っていない。
そのため自らの国から生贄を使い、森羅万象の門番と契約を行い、勇者を呼び出す。
そして力を蓄えた他の国は5帝王の国以外の国が連合を組み5帝王に反旗を翻したのである。
その戦いのさなか、連合であるにもかかわらず主のいない隣国へ攻めようとしていたのはゼラード王その人であった。
「馬鹿どもが。儂がのうのうと協力するわけがあるまい。このまま5国ほど貰っていくぞ!」
そう言って兵を進めて街道を行く。その数5万。
このまま容易に攻め滅ぼすはずであった。だが街道の奥に人影があったのである。
「とまれ!
何者だ!そこどかねば死ぬことになるぞ!!」
人影に向かってシュバルツイン将軍が大声で忠告する。
「どうした?何があったのじゃ?」
「はっ!それが、街道のど真ん中に立ち、我々の道を阻むものが……」
「ふん!殺して進め」
「御意!」
そう言って兵を進めたその時……
「地を這う蟻共が!
王であるこの我にどけと申すか!
冥界でその身を千度殺しつくそうとも足らぬ失言としれ」
そう言ってその者が持っていた本が金色に光り輝いた。
そうして照らされた姿を見て兵が震え上がる。
「あの姿は……」
「魔術王ガナルゼラシュ」
「なぜ5帝王がここにいるんだ」
アラビア系の服に、ターバンを巻いた金髪の魔術王がそこにいた。
震える兵にシュバルツイン将軍が喝を入れる。
「案ずるな!
ここには5万の兵がいる!兵を引き連れておらぬ5帝王に何ができる!」
そんなことを言っている中、魔術王が本を開きこう言った。
「オープン・ザ・ワンド」
周りが静寂に包まれる。
「ひっ、本から杖が大量に」
本から金色の粒が大量に出てきたと思えば、杖の形を作り、様々な伝承や神話にある魔杖に代わっていた。そしてその大量の杖が5万の大軍を取り囲んでいたのである。
「ふん!砕け散るがいい!蟲が」
魔術王が手を掲げた瞬間、魔杖の先が光り輝き、その光がまるで夜空を舞う流星群がごとく降り注いだ。
「うぎゃあああ」
「たす……けっ」
5万の大軍は何もできずただの肉塊となっていく。飛び散った血により街道は赤い霧に包まれた。
「王!お逃げください!!ここは危険です!!」
「我々が盾となります!早く!!」
兵士の悲鳴と飛び散る腸や脳、目玉。
その中を王はわずかな兵を連れて逃げる。
「おのれー!!許さぬぞ悪魔め!!」
ゼラード王が叫ぶ中、魔術王の攻撃は止むことはなかった。
「ふははははははは!」
血風の中魔術王ガナルゼラシュの笑い声がこだましていた。
かくしてゼラード王が率いる軍隊が初めて負ける結果となったのであった。
「あの戦いから5年。
我が国は周辺諸国からも蔑まれ、国交も断絶され、もはや国としても成り立たなくなってしまった。
だが! だがあの国さへ手に入れれば、我らはまた再興せしめることができる! シュバルツイン!!」
「はっ!」
「すぐに戻り、戦の準備を整えよ!
我らの力量をいま世界に示さん!!」
「御意!!」
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