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空に闇がかかり、水平線に近づきつつある太陽が眩しく島々を照らす中、ナナキの沈んだ黄泉沼の表面がザワザワと波立つ。黒すぎて視認できないが、その波は次第に大きな渦となり、その勢いが大地を揺るがす。
「何だ?」
グランの抵抗を皮切りに、全員が二体の首無しペガサスと絶望的なヤケクソ乱闘を繰り広げていた。
突然、ナナキの落ちた黄泉沼が、爆発したように黒い飛沫を吹き上げる。
瞬間、その飛沫の中から、いや、飛沫そのものが、漆黒の巨大なドラゴンとなって急速に乱闘現場へ向かって飛翔してきた。
ドラゴンは二体のペガサスや戦ってる人たちを、全て飛来する勢いのまま体内に巻き込み、一直線に空高く舞い上がる。上空には魔法磁気層のノイズストームが広がり、薄く光る粒子に覆われている。そこまで行くと、二体の首無しペガサスはエラーを起こし、ついにはフリーズして機能を停止した。
ドラゴンは旋回して元の島に戻ると、停止した二体のペガサスを元の停泊場所に置き、その近くの高台に全員を戻した。
「な、何が起きたんだ??」
「あら、かわいいドラゴンちゃん♡」
「な、何呑気なこと言ってるっすかー!!」
「このドラゴンさん、私たちを助けてくれたですか…?」
「これは……、ダークソリッドの生命体……?」
「ナナキ……。」
各々好き勝手言ってると、ドラゴンがシャワシャワと溶け、黒い渦となり、天に向かって一直線に伸びながら細くなっていく。そして、その中程が丸く膨らみ、パンっと弾けると、黒い翼を付けたジョーダンことナナキが姿を現した。
「ジョー艦長!!」
「ジョー!」
「ナナキ!!」
それぞれがナナキの呼び名を口にする。
「う~~~頭いてぇ……。」
ナナキはバサバサと羽ばたきながら高台の先端あたりに降り立ち、そのままくたくたと気の抜けたようにしゃがみ込むと、真後ろにぶっ倒れて手足をその場に投げ出した。
「ジョー!生きてたのか!」
グランが四つ足で急いで駆け寄り、ナナキのニオイを嗅いで本物か確かめる。
「嗅ぐな嗅ぐなっ!」
ナナキはグランの顔を両手で挟んでギュウっと引き離そうとする。
「ジョー艦長ーっ!良かった、良かったですぅ~~~!!」
マァヤが泣きながら駆け寄って来た。
クーもマァヤの後ろから駆け寄ってきて貰い泣きしている。
「その羽、私とお揃いね♡」
レイネがスッとナナキの横に飛んで来て中腰になり、嬉しそうに微笑む。その腕と腕の間には魅惑の谷間が浮かび上がった。わぁ~お。
「ナナキ!良かったぁ!」
「ジョー艦長~~~!!」
リズとサンもドカドカとナナキに押し寄せる。
ナナキは無性に照れ臭くなった。こんな経験は産まれて、いや正確にはこの世界では産まれてないが、とにかく初めての経験だったので、どうしていいかわからずその場の雰囲気に身を委ねることにした。
突然、二体のペガサスから同時に「ジャラララ~~~」というSEが流れてきた。
「な、なんですか!?」
「飛空艇のシステムが再起動したみたいです…。」
マァヤの問いに、クーが若干冷静になって答える。
みんなの向こう側には、ショーゴが何をするでもなく、気絶して伸びきったサダさんからちょっと離れた所に立って、こちらを眺めていた。
再起動にともない、二体の首無しペガサスは再びガシャガシャと変形して元の飛空艇の姿に戻った。
「リズ艦長ー!何があったんですかー!?」
リズのクルーたちも、監禁から無事解放されたようだ。
美しい夕日が高台からの景色を美しく彩り、陽の光を背に、散り散りの島々が真っ黒な影となって繋がって見えた。
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