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 サダバナイは激怒した。年下で格下のくせに、俺様の通信を一方的に切りやがった。しかも昨晩ときたら、女三人を囲ってまたしても俺に無断でどこかへ行ってやがった!そのうえずぶ濡れで風邪を引いただと?一体ナニをして来たんだ!!

 怒りで顔を赤くしながら、サダバナイはクルーを集めることにした。あのバカが何と言おうと、これからは俺がリーダーだ!いや、最初から俺の方が上だった!俺の方が艦長に相応しい!全員にわからせてやる!!そう強く決意し、まずはショーゴを呼びつける。

「他の奴らをブリッジに集めろ!」

 命令されたショーゴは、ゴーレムにクルーを探させ、全員に伝言するよう指示した。


「よし、集まったようだな!」

「何でテメーが出しゃばるんだッ!アイツはどうした!」

「あいつだと?」

「あのぅ、私たち、ゴーレムからジョー艦長がここに集まるよう言ってると聞いたのですが…。」

 クーがおずおずと答える。

「どういうことだ、オチファー!」

「あなたの指示通りに集まっている。それだけのことです。」

 ショーゴは集めろと言われただけなので、手っ取り早く集める方法を使った。そう、「艦長が呼んでいる」と。そしてみんな騙された。本当に呼んでいたのは“自称艦長”だ。

「まぁいい。お前ら!ヴィオトークが倒れた今、俺がこの飛空艇の艦長だ!クルーは全員俺の指示に従う義務がある!」

「艦長が代理を頼んだんですか?証拠はどこです?」

 クーが無表情でサダバナイに質問する。

「艦長が指示を出せない場合、自動的にそうなるのだ!そんな簡単なことも理解できんのか!」

「確かに艦長が負傷や死亡によりどうしても指示が出せない場合はそういったルールが適用されますが、ジョー艦長から『本日全員休日、自由行動』との指示が実際に出てますので、指示が出せない状況には当てはまりませんわ♡」

 レイネは相変わらずニコニコと事実を述べる。

「いいや!奴は艦長として機能していない!いいか!全員俺の指示に従え!ヴィオトークが何だろうが、俺は貴様らより立場も役職も上だ!下の奴はそれに従うのが当たり前だ!それが会社なのだ!貴様らはルールを軽視して秩序を乱している!まず何をするにも逐一俺に報告し、許可を取るよう徹底しろ!これは上司命令であり、常識だ!」

「フン、馬鹿らしい。ごっこ遊びは一人でしろ。」

 グランはさっさとその場から離れて出口に向かう。

「…フン、野良犬は社会常識どころか人間様の言葉がわからないからな。人に従わぬ犬は保健所送りだ。」

「………。」

 グランはサダバナイを横目で見て、そのまま無視してブリッジを退出した。

「確かに勤務中は上司の命令に従うものですが、本日は休日ですので、私も失礼致します♡」

 レイネは暗に飛空艇では一番偉い艦長命令が上司命令を上回ることを示し、軽いヒールの音を響かせてブリッジを後にした。

「早くも命令違反者が出たな。奴の職務怠慢な態度は会社に報告してやる。」

「正確には、レイネさんはフリー契約で社員じゃないので、会社に報告しても大した意味は無いと思います。法律に関してはレイネさんの専門ですし。」

「うるさいぞ、サナライン!さっきから貴様も口答えばかりだな!性格も暗けりゃ言葉遣いもなっていない!どうしようも無いクズだ!独りよがりな社会不適合者め!」

 その言葉に、クーはうつむいて後ろを向き、顔を隠した。

「ひ、ヒドイです!!言葉の暴力はパワハラに当たります!それこそ会社に報告させていただきます!」

「フン、女は何でもパワハラだセクハラだと言いがかりばかりだな。そんな弱っちい奴が社会で活躍できるわけがない。まず会社を辞めていくのはそういう弱い奴だ。それこそ自然淘汰の結果だ。おっと、貴様らは社員じゃなかったな?正社員にすらなれん無能は虚しいな~。」

 マァヤは珍しく強い怒りの表情を見せ、クーに優しく呼びかけて背中を支えながら一緒にブリッジを後にした。

 残るはサンとショーゴだ。

「フン、所詮ヴィオトークの集めた役者は無能揃いと証明されたな。やはり最後に残るのは正社員だ。ナイエルもアイツらのようにならんよう気をつけることだな。」

「は、はぁ……。」

「返事は『ハイ』だ!もう一度!」

「は、ハイ!」

「よろしい。ではまずルールの確認と今後についてだが…。」

 その時、ブリッジの扉が開いてゴーレム7号が入って来た。

「サダバナイ様ニ、艦長ヨリ、ゴ伝言デス。」

「何?ついに観念して艦長職を渡す気になったか?」

 サダバナイは鼻で笑い、ニヤけながらゴーレム7号を見下す。

「サダバナイ様ノ休日ハ別日ニ変更ノウエ、先程ノ ブリッジ内デノ ヤリ取リノ詳細ヲ レポートニ マトメテ ゴ提出クダサイ。手書キデ。デキマシタラ、文字データト音声データニ変換ノウエ、飛空艇内記録ニ アップロード シテクダサイ。艦長ガ ソレヲ確認デキルマデ、自室カラ出ナイデクダサイ。艦長命令デス。以上。」

 ゴーレム7号はナナキからの伝言を言い終えると、そのままブリッジを後にして艦長室に戻った。そこには、広くない室内に先程ブリッジから出て行ったメンバーが集まっていた。

 実は、ナナキが悪夢第二弾を見てビショビショになった体を拭いてるところに、次々とメンバーがサダさんの横行をチクりに凸って来たのだった。

 ナナキは人に命令するのは好きじゃないが、上司命令がそんなに好きならしょうがないということで、サダさんに小学生の反省文並の命令を出して差し上げたのだった。

「みんな俺の部屋にいると風邪引くよ?」

「大丈夫です!飛空艇の換気システムは完璧なので!それに、皆さんまだ治癒魔法が効いてますから、免疫もバッチリです!」

 マァヤがどこかで聞いたようなセリフを言う。

 一方サダバナイは、怒り狂ってナナキの部屋に向かったが、途中で待ち受けていたゴーレムたちに囲まれて自室まで連行された。

 その後、ナナキの命令を無視したサダさんは、何か言う度に“上司の命令違反を自分でした”ことを指摘され、余計に誰もサダさんの「命令を聞け」という命令を聞かなくなってしまった。

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