第2幕前半

▼ラトル

 ラトルに訪れたメリナとチルリル。女性が多い。

チルリル「今日はなんだか女の人が多いのだわ。」

メリナ「そうね。何かあるのかしら。」

お婆さん「おや、チルリルちゃん。」

チルリル「こんにちは、おばあちゃん。今日はお祭りなのだわ?」

お婆さん「今日はプライさんが説法に訪れてるからね。隣町の女性も多く来ているみたいだよ。かく言う私もファングッズを買ってしまったわ。ふふふ。」

チルリル「何を...言っているのだわ...?」

メリナ「私たちが本部に戻っている間に、一体何が...。」

 大きな歓声が上がる。

女性「きゃーー、プライ様ーー!」

メリナ「な、何、この黄色い声援は?」

 酒場から出てくるイケメンになったプライ(アナザースタイル)。外には出てくるのを待っていたたくさんの女性。出てきたプライに近い女性が話しかける。

女性「プライ様!どうか私の経典にサインを下さい!そうして貰えればもっと神様のことが分かる気がするんです!」

 経典を押し付けられる。

プライ「そうですか。私にできることであれば...、どうぞ。」

 サインした経典を返す。沸き立つ歓声。

女性「きゃーー!次は私の分を!」

女性「いいえ、私よーー!」

 酒場からさらに青年が3人現れる。

ダイゴ「悪いな。このあと、リハーサルがあるんだ。サインなら後にしてくれ。」

 歓声が上がる。

女性「きゃーー、ダイナソーズよ!ベースのダイゴだわ!」

女性「シンジとキョウスケもいるわ!」

 女性を押しのけて前に進むチルリルとメリナ。

チルリル「ちょっと通して欲しいのだわ!」

女性「なによ!割り込まないでよ!」

女性「あなた会員番号何番よ!」

メリナ「...いいから、ちょっと通してもらえるかしら。」

チルリル「やっと抜けたのだわ!」

プライ「おお!チルリル殿、メリナ殿!いらしていたのですね!」

メリナ「いらしていたのですね、じゃないわよ... 。何よこの騒ぎは。...というより、誰よあなたは。」

チルリル「うーーっすら、プライの面影があるのだわ...。」

女性「...あの子達、知り合いらしいわよ。」

女性「知り合いだからって、馴れ馴れしく話してるんじゃないわよ。」

女性「ちっ、今日はもう解散ね。」

 女性達去る。シンジ、プライとメリナ達を交互に見る。

シンジ「なに、カノジョー?」

プライ「いえ、私の上司です。すぐに行きますので、先に行っていてもらえると。」

キョウスケ「うーっす。じゃあ、またあとでな。」

シンジ「上司の子もバイバーイ。」

 3人去る。

メリナ「頭が全く追いつかないわ...。」

 アルド来る。

アルド「お、メリナにチルリルじゃないか。来てたのか。いやー、プライは相変わらず人気者で大変だな。」

チルリル「アルドまで何を言っているのだわ...。」

メリナ「アルド...、あなたの知っていることを全て教えなさい。」


▼回想・コリンダの原(ラトルで受注)

女神「迷える容姿の子羊よ!いま神の慈愛を持ってその容姿を作り変えん!」

プライ「ぬ、ぬわーーー!」

 光に包まれる。光が収まると姿の変わったプライが立っている。

アルド「大丈夫か、プライ!プラ...イ?」

プライ「どうなったのです、アルド殿。呪いは成功したのですかな!?」

アルド「あ、ああ...。うーーっすら面影は残っているけど、ほぼ別人だよ。」

女神「はい、鏡をどうぞ。」

プライ「ぬ、ぬわーーー!?!?げほっ、げほっ...!」

女神「その体で大声を出してはいけません。大きな声を出す時は、お腹に力を入れて鼻から抜けていくように出すのです。」

プライ「はっ...、そういえば、声もそこはかとなく透き通った美声になったような。あーあーあー。」

アルド「そこはことなくどころか、すごく美声だぞ。」

女神「これはインドア・クリエイティブ系イケメンですね。芸術方面で成功するでしょう。法力も上がっています。」

 プライ、治癒術を使ってみる。

プライ「おお、確かに力が増していますぞ。」

女神「代わりに筋力や体力は制限されているので気をつけて下さい。その体での下山は無理でしょう。帰りは私の魔法で送ってあげます。」

アルド「何から何まで、ありがとうございます...。」

 黒い靄がプライから発生して形を成す。

プライ「こ、これは一体...。」

魔神「我を生み出したのはお前か...。ふむ、せいぜい後悔しないことだな。」

女神「呪いから生まれる魔神です。呪いを解くためには、この魔神の与える試練を乗り越える必要があります。」

アルド「呪いを解きたい人なんているのか?」

女神「ふふ、どうでしょうね。さぁ、そろそろ下界にお戻りなさい。」

 アルドとプライの体が浮き、そして飛ばされる。

女神「あなた達に良きイケメンライフがあらんことを...。」

プライ「ぬ、ぬわーー!」


▼ラトル

 回想から戻ってくる。

メリナ「...それで、戻ってきたらバンドのボーカルに誘われて、人気が出た?」

プライ「メンバーが抜けて困っているとのことだったので、私がお助けできるのであればと...。」

チルリル「あんなチャラチャラした人達と一緒にいて大丈夫なのだわ...?」

プライ「ああ見えて誠実な青年なのです。私が参加する時は、売り上げは全て教会に寄付してもらっています。」

メリナ「奉仕活動なら、とやかく言わないけど...。」

プライ「良かった!今は彼らの力になるのが楽しいのです。もっと多くの人に神の教えを説いてみせます!では、彼らを待たせていますので、これにて。」

 プライ去る。

チルリル「お友達ができて何だかんだ楽しそうなのだわ。そういえばプライはまだ二十歳だったのだわ。」

アルド「そうだな。」

メリナ「こういう変化を望んでいたわけではないけど、これも一つの答えなのかしら。何か問題があるわけでもないし、本人が幸せそうな以上、私たちが口を挟むのは野暮かもしれないわね。」

チルリル「...なのだわ。」

 画面を引いて場面終了。3人がそれぞれ奉仕活動に励む様子。プライの野外ライブは大盛況。教会本部でプライとチルリルとロゼッタが話している。

ロゼッタ「最近、お二人は調子がいいみたいですねぇ。昇進の話も出ているみたいですよ。このままどうか...、どうか私の手を煩わせないようにお願いしますね。」

 ロゼッタ去る。プライとチルリル喜ぶ。そして数日後のテロップ。教会本部に多くの神官が集まっている。

司祭「...聞いての通り、メルロ区付近に凶悪な魔物が出現した。厄介なことに我々の法力がほぼ通用しない。早急に我々で排除する必要がある。皆、心して挑むように。」


▼シャスラ結晶地帯

 凶悪な魔物と総力戦をしている神官達。メリナとチルリルが前線で戦っている。

メリナ「法力が通用しないのは本当に厄介ね...。」

チルリル「私達の斬撃と打撃が頼みの綱なのだわ...!」

メリナ「とはいっても、迂闊に近寄れば致命傷は避けられないわね。」

 伝令の神官が駆け込んでくる。

神官「敵が突っ込んできます!ご注意を...!」

 言うや否や突っ込んできた魔物に伝令が吹き飛ばされる。そのままチルリルにも衝突する寸前でスロー演出。

チルリル「は、速い...!」

プライ「チルリル殿!」

 プライがチルリルを抱き抱えて吹き飛ばされる。

チルリル「きゃあああーー!」

プライ「ぬわーー!」

 地面に倒れている2人。なんとかチルリルを抱き抱えて、プライが下敷きになっている。

チルリル「プライがクッションになってくれたおかげで、なんとか助かったのだわ。...プライは大丈夫なのだわ?」

プライ「...肋骨を数本やられましたが、大丈夫です。」

チルリル「致命死なのだわ!?」

プライ「大丈夫です...。法力だけは高いので...。」

 回復。

プライ「さぁ、盾にはなれなくても、まだまだクッション材にはなれますぞ...。」

チルリル「そんなの寝覚が悪すぎるのだわ!いいからプライは後ろに下がっているのだわ!」

 前線に戻るチルリル。以降、メリナとチルリルが攻撃して、プライが庇ってのシーンを繰り返してフェードアウト。教会本部。チルリルとメリナがベッドで寝込んでいる。他にも寝込んだりうずくまっている神官が多数。教会の通路を歩くプライ。噂が聞こえてくる。歩き続けるプライ、背景は黒くフェードアウト。

神官「なんとか退けたが...。今回は神童と呼ばれた二人もパッとしなかったな。」

神官「どちらも攻撃が主体だからな。守る者がいないと力を発揮できないのだろう。」

神官「あのプライとかいう男はどうした?いつもは奴が壁になっているだろう。」

神官「あの強靭な肉体を捨てて、今は音楽活動に励んでいるそうだ。そのせいで役に立たなかったらしい。」

神官「なんと嘆かわしい...。」

 背景がフェードイン。ラトルの道に変わっている。

プライ「む?あれはいつも一番前の席で説法を聞いてくれている御仁ではないか...?」

女性「今日の説法いくー?」

女性「プライ様いないんでしょー?私パスー。」

女性「あんたプライ様目当てだもんねー。」

女性「もー、説法なんて全然頭に入らないって感じ。あの声を聞いてるだけで幸せなの。」

プライ「...そうか。私の声は届いていなかったのか,,,。私は何をやっているのだ...。回復したとはいえ、メリナ殿もチルリル殿も一歩間違えば命を落としていた。私は二人を支えるのでは無かったのか...?」

 一拍置いて。

プライ「戻ろう。元の私に。」

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