第11話

「もしも世界が終わるとしたらどうする?」


 いつだったか修司がこんなことを言い出したことがあった。私はまた彼の悪い癖が始まったと苦笑しながらも、彼の戯言に付き合ってあげることにする。


「世界の終わりって?」

「ほら、隕石が降ってくるとかさ」

「うわ、すごいベタな奴」


 私はそう言って思わず口の端を緩める。

 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、修司はどこか高揚したような調子で言った。


「もし、世界が終わることが決まっていたとして、そんな世界でも最後まで生きていたいって思うか?」


 彼の問いかけに私は改めて考える。

 世界が終わる。終焉が目の前にあるとき、人はいったいどういう行動をとるのだろうか。

 しばしの思考の後に私は答えた。


「私だったら適当なところで死んどくかな」

「なんで?」

「だって、最後まで生きてたら、何かしんどそうじゃない?」


 隕石にぶつかって死ぬのがどれくらい痛いのかなんて想像もつかないけど、もうちょっとましな死に方というものはありそうな気がするのだ。

 私の答えを聞いた修司は否定も肯定もせずに頷いた後に言った。


「俺だったら最後まであきらめない」

「なんで?」


 そしたら、彼はどこか得意げな顔をして言った。


「もしかしたら、奇跡が起こるかもしれないだろ」


 私は彼の顔を覗き込む。


「世界の終わりなんて、奇跡が起こるには十分過ぎる状況だろ」


 そう言って、修司は笑った。

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