第17章 分離と恐れ
1 ただ、理性や想像力によって分かるというのは、ある分け方に従って分かるにすぎません。
2 分け方には様々なものがあります。例えば、まず言語であり、また神話であり、科学であるのですが、それらはいずれも絶対的なものではありません。
3 もちろん、有用でなければならない以上、根拠のない分け方ではありませんが、現実をそのまま明らかにするものではありません。
4 この分かるということによって、人間は自然を支配し、文明を発展させ、欲望を充足させてきました。これにより、私たちの暮らしがより安全に、より便利で豊かになったことは否定できません。
5 また、文化や制度、技術の力で、私たちは様々な制約や束縛から解放され、自由になりつつあるようにも見えます。
6 しかし、分かることは同時に分からないことを生み出します。なぜならば、具体的現実はあまりに多様で複雑であり、理解の枠組み(分け方)に収まりきらないからです。つまり、理解しきれない、分からないことが残されるのです。
7 光が当たれば影ができるように、分かることによる安心は分からないことへの不安を生み出します。
8 つまり、世界からの分離は世界を無条件に受け入れることのできない、また無条件に受け容れてくれない、よそよそしいものへと変貌させ、世界への恐れを生み出したのです。
9 なぜ恐れるのかといえば、大きなつながりの中の一つの現われに過ぎない自分を独立した「実体」として捉え、特別な存在であると考えるからです。
10 そして、自我が芽ばえる前の安らぎを覚えているからであり、特別な存在でありたいという願いに反して、ささやかな存在にすぎないからです。
11 世界は私たちの勘違いや願望を、いとも容易く打ち砕きます。それゆえに、私たちは恐れるのです。
12 その恐れが行き過ぎれば、自分を中心にして物事を見るようになり、好き嫌いや損得といった自分の都合で考えるようになって、他者を軽んじ、自己実現の手段にしようとすることになります。
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