第14章 人間の歴史

1 このような生命の多様化の過程で、約700万年前に類人猿のなかから猿人が分かれ、約180万年前に原人が出現し、およそ20万年前に私たち新人(ホモ・サピエンス・サピエンス)、いわゆる人間が誕生したのです。

2 人間は一万年前頃から農耕を始めるようになりました。いわゆる、農耕革命です。これによって、人間は自然物を狩猟・採取するだけでなく、作物を生産するようになりました。すなわち、ただ与えられる存在ではなく、自ら作り出す存在になったのです。

3 そして、人間は自然から独り立ちするようになりました。山を崩し、川の流れを変え、森を切りひらきました。こうして、人間はその領域を拡大していったのです。

4 人間は定住し都市を形成するとともに、社会には階層や格差が生まれました。また、集団の統制が必要であることから階級と国家が生まれたのです。

5 そして、人間は文字や様々な技術を生み出すだけでなく、宗教、国家、階層、法律、貨幣といった物語を生み出しました。やがて、国家は帝国へと拡大していきました。

6 さらに、400年前に科学革命が起こると自然科学が急速に進歩し、自然に対する知識が深まりました。すなわち、自然の普遍的な法則が次々と明らかにされたのです。それは、人間がより自然を支配することへと繋がりました。

7 また、産業革命からの200年で機械制工業が発展しました。機械化によって、生産力が自然の制約から解放され、科学の発展と相俟って技術は日を追うごとに進んでいます。

8 同時に、生産の元手となる資本が重要になり、やがて、資本の蓄積と増殖のために生産と消費が行われるようになりました。いわゆる、資本主義です。

9 現代の資本主義において、生産や投資だけではなく、あらゆることが経済活動の対象とされつつあります。すべてが損得・利害の価値観に飲まれつつあるのです。

10 このような歴史を経て来て、今や人間は地球の外に飛び出し、瞬時に世界中とコミュニケーションでき、経験を共有できるようになりました。

11 それと同時に、生存を危うくするほどの環境破壊を招き、また、人類をたちどころに絶滅させられるだけの核兵器のような凶悪な兵器を生み出したことも忘れてはなりません。

12 このようにして、人間はそのコントロールできる範囲を広げ、現在では地球上の支配者であるかのように振る舞っています。

13 しかし、私たちはこのような歴史を振り返る時に、138億年の一切がこの一瞬の生命に凝縮されていることに驚き、遥か彼方の星たちとも質料を同じくする同胞であることの不可思議を讃嘆して、存在の実相に触れるとともに、人間の傲慢が末通らぬものであることを自覚しなければなりません。

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