第11章 創造と記憶

1 そして、私たちは創造の働きにおいて、宇宙とともに生き続けます。なぜならば、様々な過程の与件として働き続けるからです。

2 そのようにして私たちが生き続ける世界こそ分別を超越した真実在の世界であり、ここにすべてが与件として記憶され、ここからすべてが生み出される世界、いわば、私たちの存在の故郷です。

3 すべてが世界の記憶となるのです。そして、真実在の世界とは記憶の世界であると言っても過言ではありません。

4 私たちは絶えず世界の記憶となり、そして、その中から生起するのです。

5 私たちが世界の記憶になるということは、私たちが世界を創造しているということです。つまり、私たちは世界を常に新しくし、常に記憶を増し加えているのです。

6 記憶は世界の材料(material)です。存在は記憶を材料として常に生起し転変する過程であり、私たちが対象として知覚する物質(material)とはすでに生起した過程の記憶です。

7 そして、私たちは記憶として世界と共に生き続けます。自らが記憶するのではなく、世界が記憶し、その記憶から私たちが生起します。

8 私たちが記憶を保持するのではありません。記憶が私たちを生起し、保持するのです。

9 私たちを「実体」とし、記憶をその「実体」の所有であるとするのは、顚倒した認識です。

10 この認識の誤りは、記憶の有無に関係なく、私たちが存在するという点、そして、私たちの存在が記憶に先行するという点にあります。

11 実際には、私たちの存在は一瞬一瞬の生起であり、それは記憶が私たちとして現われた姿なのです。

12 ですから、永生の主体は私たちではなく記憶です。そして、その記憶を私たちもまた創造しているのですから、私たちも記憶と共に生き続けるのです。

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