第9章 自己創造としての人生
1 このように、万物は一体であり、全体的な働きにおいて存在しているのですが、一つ理解しておかなければならない大切なことがあります。
2 それは、私たちはその大きな働きの単なる操り人形ではないということです。
3 私たちは確かに様々な要素・条件が大きな働きにおいて出会うことで生起した現われに過ぎません。ですから、私たちは完全に自由であり、常に主体的であるとは言えません。
4 その証拠に、例えば私たちはいつどこでどのように生まれるか、そして、死ぬかを決められません。
5 また、自分のものだと思っている身体や心であっても完全にコントロールすることもできません。
6 例えば、私たちは思わず持っていたものを落としてしまったり、怒りや悲しみがどうしようもなく沸き起こるのを感じたりします。この場合、私たちはものを落とすことを選んだわけでも、怒りや悲しみといった感情を抱くことを選んだわけでもありません。
7 しかし、その一方で、そのように無力であるように思われる私たちの思いや言葉、行いがまた要素・条件となって別の何かを現わします。
8 それがいつどこで、どのようにかは知りえない場合もありますが、何らかの条件となって何かを現わすのです。それは順当な結果である場合もあるでしょうし、全く思いもよらない結果である場合もあります。
9 どちらにせよ、私たちは過去を引き継ぎつつ、未来に新しい与件を増し加えて、世界を新たに創造しつつあるのです。
10 ですから、私たちは全能ではありませんが、自己を超越することにおいて無能でもありません。
11 私たちもまた大きな働きの一部として絶えざる創造に参与しているのです。
12 人生とは、その大いなる創造において、自己を超越し創造していく営みにほかなりません。これがそのまま世界を創造していく営みでもあるのです。
13 私たちの人生はこの意味においても決して無価値ではありません。どのような人生であってもそれは創造であり、宇宙的意味を有しているのです。
14 いわば、宇宙が私たちとなって創造し、私たちが再び宇宙となるのです。私たちを離れて宇宙は存在できず、私たちもまた宇宙を離れて存在できません。
15 その意味において、夜空に瞬く星も私たちも等しく宇宙においてかけがえのない存在であるのです。
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