魔王城にて
かくして魔王城に足を踏み入れた俺は、悪魔に先導されて廊下を歩いていた。
内装も白を基調とした意匠だった。床は黒と白の菱形を敷き詰めた模様をしており、廊下の両端には様々な
――魔王城においてある鎧のことだ、動き出したりさまよったりするのではないか?と疑っていたがどうやらただの甲冑のようだった。
またも俺の心を読んだのか、悪魔に笑われる。
「ただの鎧が動いたりさまよったりするはずないじゃん。変なの」
「魔王城といったらそういうところだろう?」
と反論するも
「それはただのイメージでしょ?魔界に来てイメージ通りの物はあった?」
その問いには反論できなかった。イメージしていた魔界や魔王城とは正反対で、『人間界でした』と言われても納得できるほど二つの世界は似ている。
「そこらへんは後で説明するよ。それより今は魔王様にごあいさつしないと」
彼女はそう言うと歩く速度を少しだけ早めた。
そこから先は会話も無く、気付けば魔王が待つと思われる大広間への扉の前に立っていた。直前になって緊張で口の中が乾く。扉の向こうから伝わる魔力のせいだろう。その緊張度合いは、一週間前にフェレール王国王城で勇者一行へ任命されたとき以上だった。
――魔王とはいったいどんな外見をしているのか。どのような思想を持ちどれほどの力量を持つのか。万が一後継者に認められなかった場合、俺には無残な結末が待っているのだろうか……
悪い方向ばかりに想像が膨らんでいく。深呼吸を繰り返し、何とか平静を取り戻す。
そして、俺は軽く震える手に力を込めて大広間への扉を押し開けるのだった。
――――
大広間に入ると、まず目を引いたのは王座だった。だが、そこには誰もいない。しかしそこから魔力をヒシヒシと感じる。おそらく透明化の魔法を発動させているのだろう。
そんなことを考えていると横の悪魔が跪き、はっきりと通る声で伝えた。
「魔王様。人間界で魔力の一番高い者をお連れしました」
先ほどまでの抜けた話し方とは別人である。
姿は見えずとも、声である程度の外見はわかる。最低でも男女の区別はつくはずだ。そう考え、俺は魔王の返事を待っていた。
「ご苦労。下がってよいぞ」
その声色を聴いて俺は面食らった。何故なら、魔法を解き、偉そうに王座に座る姿を見せた魔王は、
銀の頭髪に同じ色の冠を乗せた、小柄な少女だったからだ。
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