魔法使いが魔王になるまで

旅立ち

 3年後―――フェレール王国王城にて


 大広間に俺たち四人は立っていた。

 目の前には現国王、アキレウス・フェレールが王座に鎮座している。


『勇者一行、前へ!』

 国王の隣に立っている大臣が俺たちを呼ぶ。

 その声に応え、一歩前に踏み出して跪く。


『勇者 ヒスト・ヴェルデール!!』「はい!!」

 大臣が俺たちの名前を呼んでいく。それに跪きながら答えるのが古くからの習わしらしい。


『剣士 ロズ・エンド!!』「はい」

 彼女は腕試しの旅をしていた所、勇者が目覚めたと知って挑み、結果的にこの一行に推薦された。一見すると戦闘狂のようだが、礼節はわきまえているらしい。


『僧侶 アリシア・クロウス!!』「はい!!」

 アリシアが呼ばれる。


『魔法使い カテラ・フェンドル!!』

 ついに俺が呼ばれた。深く深呼吸し、全力を持って答えた。

『はい!!』


 ―――――――


 こうして勇者一行への任命式を終え、旅立った俺たちは次の町へ続く道を歩く。道すがら、それぞれの自己紹介をしていた。


「ヒストだ。得意なのは剣と回復魔法だ。あと少々格闘の心得もある。みんなこれからよろしくな。」

 勇者は珍しい緑色の髪をしていた。瞳は黄緑でどこか不思議な雰囲気を醸し出している。


「おいおい、剣と回復魔法が得意ならオレと僧侶の嬢ちゃんはいらねーじゃねーか。今すぐ引き返すか?」

 剣士ロズはアリシアと勇者を交互に見ながらそう言った。その言葉を受けてアリシアは狼狽える。

「冗談だよ冗談。得意って言ってもオレの剣や嬢ちゃんの魔法にはかなわないだろう。」

 ロズははにかみながらそう言うと続けて自己紹介をした。

「オレはロズ、得意な物は剣だ。切ることしかできないがよろしくな!」

 彼女は長い黒髪に褐色の肌、そしてうっすらと筋肉が浮かぶ引き締まった肉体をしていた。次はアリシアの番だ。


「アリシア・クロウスと申します。回復魔法と支援魔法が得意です。これからよろしくお願いしますね。」

 緊張していたのか言い切った後に彼女は胸をなでおろしていた。そんな彼女を見ていると目が合った。すかさず俺が最後の自己紹介を行う。


「カテラ・フェンドルだ。得意な物は――――」


 こうして俺たちの旅は始まった。

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