第8話
「お姉ちゃんってどういうこと?この少女は誰なんだ?」
彼は吸血鬼の彼女に驚きながら尋ねた。
「ちょ、ちょっと逆月、なんでここが分かったの?誰にも分からないようにしてたのに。まさかとは思うけどあなたが教えたりしたのかしら?」
吸血鬼の彼女が怖い顔でにらみつけてきた。
「いやいや、俺は何も知らないです。この少女とは今日ここで初めて会いました。」
彼はすっかり委縮してしまった。
「てかなんでお姉ちゃんが人間と一緒にいるのかな?昔はあんなにも人間嫌いだったのにね。」
「えっそうなの?」
彼にはとても意外に思えた。今はそのような様子はなく、むしろ彼のことを気遣って行動している。
「そうよ。お姉ちゃんは一緒に暮らしていた時はずっとそうだったんだよ。人間君。」
「ねぇお姉ちゃん、この人間はお姉ちゃんの奴隷?それとも食糧?食糧なら血を吸っちゃってもいい?おなかすいちゃってさぁ。」
「ダメよ!絶対に吸血したらダメよ!その人間の血は死ぬほど不味いから飲んだらダメよ。あとその人間は奴隷でもないわ。社畜になってて可哀そうだったから助けてあげたのよ。つまり居候みたいなものね。」
「お姉ちゃんが人間に情けをかける!?よりにもよってお姉ちゃんが!?」
「悪いかしら?私は以前の私じゃないのよ。変わったのよ。」
吸血鬼の彼女がムッとしながら言った。
「それとあなたに紹介しておくわ。この娘は逆月よ、逆月・K《カタルシス》ツェペシュよ。私の妹ね。」
「そうよ。さっき紹介された通り逆月っていうの。よろしくね。」
逆月はにこっと笑ってあいさつした。
「なんか流れにつられてしちゃったけどなんで私が人間なんかにあいさつしないといけないのよ。はぁ~最悪。」
そういわれて彼は少し不快感を感じた。
「ねえ~お姉ちゃん、私おなかすいたんだけど、この人間吸血してもいい?もう不味くてもいいや。」
逆月が瞳を紅くして近づいてきた。
「ちょ、ちょっと逆月さん、俺の血はまずいらしいから…っいぇ三日月さん何とかしてくれ。」
三日月が急いで近づいてきた。
「ちょっと待ちなさい!これあげるからその男から手を離しなさい。」
三日月の手には病院でよく見る輸血パックがあった。そしてその輸血パックを俺に噛みつこうとしている逆月の顔に押し付けた。
「んー?なにこれ?人間の血が入ってる。ゴクゴク…あんまりおいしくないわね。まあ空腹が満たせたからいいや。」
「ていうか三日月さん、輸血パックなんてどこから持ってきたんですか?まさか病院からパクって来たりしませんよね?」
「まったくその通りよ。よくわかったわね。」
三日月は少しも悪びれる様子もなく言った。
「どうやったの?」
「献血車からとったり、あとは病院から調達したりしたわね。病院に勤めている吸血鬼に都合をつけてもらってたりもしたわ。」
「へぇー、そうなんだー。」
「あなたが想像している以上に私たち吸血鬼は人間社会に適応しているのよ。」
「ちょっとー!二人だけで盛り上がらないでくれる?」
逆月がムッとした感じで言った。
「もういいや。私は長旅で疲れたから寝るとするよ~。この人間のベッド、使わせてもらうよ。」
「いやそれはちょっと俺が困るんだが…」
「そうよ。それは彼のベッドよ。あなたはソファーで寝なさい。明日には寝具を調達してきてあげるから。」
「はいはい、分かったよ。」
逆月は不満げな表情をした。
「いやちょっと待ちなさい、逆月も来てしまったから彼に私たちのことについてを離そうと思うの。だからあなたは彼のベッドで寝てくれるかしら?私たちはここで少しお話をするから。」
「え?いいの?ラッキー!」
先程の表情とは打って変わり、嬉しそうに彼の寝室に入っていった。
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