第6話
「さぁ着いたわよ。」
吸血鬼の彼女は着地すると抱きかかえていた俺を降ろした。もちろん帰った先は十数時間前に出た吸血鬼の彼女の家の前だ。
「はい、お帰りなさいね。」
「いやお帰りっていうか…一日弱前にここから出たばっかりなんだけどな…とりあえずお邪魔しますねー。」
部屋の中は彼が以前部屋を出た時とは変わらなかったが、寝室にはベッドが一つ増えていた。
「あなたが会社に行っている間に家具屋に行って買ってきたのよ。組み立てるのがとても面倒だったわ。」
そのベッドは彼が普段使っている折り畳みベッドに比べ数段格上のもので彼が使っているものの数倍の値段がするものだった。
「こんな高級なベッドどうやって買ったんだ?ま、まさか…家具屋の店員を吸血して貧血にしてその隙に盗んできたとか…」
吸血鬼の彼女は馬鹿にするようにフッと笑った。
「あなた馬鹿ね。そんなことする訳ないじゃない。ちゃんと人間の社会のルールに従って代価にお金を払ってきたわよ。」
「お金を払った?仕事もしてないように見えるし、どうやって収入を得ているの?家がお金持ちで仕送りをしてもらっているとか?」
ガン!
突然大きな音がなった。音のした方向に目をやると吸血鬼の彼女が強く握りしめた拳を机の上にのせていてかなり怒ったような表情をしている。どうやら吸血鬼の彼女が机をたたいたようだ。
「感情的になってしまってごめんなさい。悪いけどこれからは絶対に私の家の話をしないようにしてくれないかしら?」
吸血鬼の彼女は有無を言わさぬような強い口調で言った。
「あぁ…?ごめん…」
吸血鬼の彼女の怒った姿を初めて見たので彼は驚いた。
「あなたは何も知らないのに怒って悪かったわね。お詫びにあなたに吸血鬼のお金の儲け方を教えてあげるわ。」
吸血鬼の彼女の様子がもとに戻ったので安心した。
「それはね、人間の富裕層としていることはあまり変わらないわ。土地に投資したり、株や債券に投資したり、なんかね。」
「へぇー、それは意外だな。てっきり人間には使えない魔法かなんかで錬金術でも使ってるのかとおもってた。」
「さすがの吸血鬼でもそんなのは使えないわ。まあでも吸血鬼は人間よりも知能が高いから損することはまずないわね。私も損したことないし。」
「それは実質錬金術みたいなものだな。」
「まぁそうも考えることができるわね。」
吸血鬼の彼女がクスッと笑った。
「だからね、あなたと違ってあんなにきつい労働をして小銭を稼がなくてもパソコンん前に一時間くらい座ってるだけであなたの数日分くらいは儲けることができるのよ。だからあなたが必要なものとかほしいものとかがあったらいいってくれたら用意するわ。あと私は食費は必要なかったけど、人間のあなたには食事が必要だと思うからお金を渡しておくわね。」
吸血鬼の彼女は机の中から通帳を取り出して彼に差し出した。開いてみると俺の年収よりも多い金額が書かれていた。
「こ、こんなにたくさんも!?」
「そんなに驚くような事ではないわ。それは私の財産の一部に過ぎないわ。」
吸血鬼の彼女はさも当然といったような様子で言った。
「それはいいとして、今日はもう疲れたでしょう?」
彼は当然とても疲れていた。深夜まで働かされるわ、深夜の夜を吸血鬼の彼女と夜の街を飛行していたし。
「シャワーでも浴びて寝たら?あなた、着替えは持ってないと思うし脱衣所にあるのを適当に使ってくれてかまわないわ。」
「えっ?君の物を使うのか?それはさすがにきつくないか?いろいろと…」
「はぁ?そんなわけがあるわけないでしょ!あなた本当に馬鹿ね!」
吸血鬼の彼女は少し頬を赤らめているようにも見えた。
「あなたをここに連れてくる予定だっかたらあなたの日用品の一式買ってきてそろえたのよ。」
確かに脱衣所に行ってみると普段着やパジャマ、下着や靴下など一式が用意されて積まれていた。
その後彼は吸血鬼の彼女の言う通りシャワーを浴びて寝た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます