第7話 推理研究会 Duel

「彩ちゃんお邪魔しまーす」

「これお土産の大福だ、ご飯を食べ終わったら食べよう」

「あとコンビニでお菓子とジュース買ってきた!」

「ああ、ありがとう気を使ってくれて」

「自分の家だと思って寛いでいいよ!」

「ここはあたしの家だ、まあゆっくりしてけ、マ……おふくろは仕事だ」

「彩、上京した一人息子みたいになっているぞ」



「炬燵を囲んで、お鍋……日本人でよかった~」

「火鍋か、ハイカラだな」

「そろそろ頃合いだな」

「奏ちゃん大丈夫? フーフーしてあげようか」

「いや大丈夫だ……あちゅっ」

「あーいわんこっちゃねえ」

「おいひい」

「感想は言いからお茶飲め、碧もほらついでやる」

「ありがとー彩ちゃん」



「ごちそうさまでした、ありがとう彩」

「お粗末様でした、前は奏が作ってくれたしお相子だな」

「じゃあ次は私――」

「セルフ闇鍋するから、おめーはだめだ」

「ひどい!」

「む、買ってきたジュースがなくなってしまったな、買ってくる」

「一人で大丈夫か」

「すぐそこだからな、じゃあ行ってくる」

「「いってらっしゃい」」

「……炬燵ってすごいよねえ、人類の英知の結晶だよ」

「あー珍しく異論がねえ」

「それプラスみかんなんて、考えた人は多分世界征服とかしているよ」

「そこまでかー」

「いつものツッコミのキレがないね」

「あたしは炬燵と融合した」

「骨抜きだねー」

「……ん」

「……あれ」

――みかんがなくなった

(そういえば玄関にみかん箱があったね)

(とりにいかねーとだが、せっかくあったまった体を冷風に晒したくねえ)

(廊下冷たいんだよねえ)

(だからあたしは――)

(だから私は――)

(気づかないふりをして碧に取りに行ってもらう!)

(気づかないふりをして彩ちゃんに取りに行ってもらう!)

(この国は炬燵から最初に出た人間はこき使われる風習があるからな)

(だから立たないのは勿論のこと、相手に立ちたくなるように誘導する!)

「ねー彩ちゃん見てみて」

「ん」

「紙飛行機」

「それうちのチラシで作ったのか、うめえもんだな」

「ほい」

「あーどこ飛ばしてんだよ」

「ごめん、とって~」

「しゃーねーな、よいしょ」

(上半身だけ伸ばして、取っちゃった。飛距離が足りなったね、でも次の一手だよ!)

(やかんの音⁉ 馬鹿なやかんなんてかけてなかったはず――危ねえ)

(――気が付いたんだね、彩ちゃん)

(もう少しで立つところだった、スマホからやかんの音を流すとはな)

(渾身の手だったけど、やっぱり察しがいいな彩ちゃん、次の手を考えないと)

(とか考えてるだろうが――碧、次はないぜ)

(ッ――これは――トイレ行きたい)

(お前のお茶がなくなるたびに注いでいたからな、そろそろトイレに行きくなるころだろ)

(く、これは我慢できない……ッ、だけど立ったら)

(さあ、時間の問題だぜ。トイレに行くために立ち上がれ、碧)

(こ、ここまでなの……?)

「ただいま、ジュース買ってきたぞ。あとそろそろなくなるころだろうからみかんも持ってきた」

「……」

「っ!」

「……どうしたんだ碧は、あんなに慌てて」

「……龍虎相搏つか」

「どうした彩、全てを終えた歴戦の戦士のような顔をしているぞ」

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