040 夜番の日記Ⅺー別れー

――


 処刑日が1週間後近づき、彼女をはじめとする死刑囚たちはギャローグリーンに近い別の監獄へと移送されました。移送日すら知らされていなかった私は、彼女に別れすら言えませんでした。まるで心にぽっかりと穴が開いてしまったような空虚感だけが私を支配し、ただひたすらに彼女の姿をアスキンの中で探し続けています。彼女は私に別れを言えず、悲しんでくれているでしょうか。彼女は今、どんな表情を浮かべているのでしょうか。


 今回、有罪となったのは9人。告発された残りの24人は無罪となりました。どうして彼女は有罪になってしまったのでしょうか。なぜ神は24人の無罪放免となった人々の中に彼女を入れて下さらなかったのでしょうか。


 そして明後日が私の計画の実行日です。


 この計画を知っているのは、私の家族と彼女のみ。私は彼女にもこの町にも私が家族と築き上げてきた生活にも、全てに別れを告げなければいけません。


 さよなら、グライフ。

 さよなら、私自身よ。

 さよなら、心から愛する人。

 ああ、神のご加護を賜らんことを。

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